フォルシア:ヘラーを買収、世界第7位の自動車部品メーカーが誕生

フォルシアは、8月23日、ヘラー(HELLA)および同社創業家との間で合意に達したことを発表した。

 統合後のグループは、自動車業界のメガトレンドに対応した以下の4つの成長分野に重点的に取り組む。

• エレクトリック・モビリティ(水素ソリューションを含む)
• 先進運転支援システム(ADAS)および自動運転
• コックピット・オブ・ザ・フューチャー
• ライフサイクル・バリュー・マネジメント

 統合後は、エレクトロニクスおよびソフトウェアの合計売上高37億ユーロ、ソフトウェア・エンジニア約3,000人を擁する同分野の主要プレイヤーとなる。クリティカルな規模に達し、あらゆる活動分野において主導的地位を確立する。世界7位の自動車部品メーカー(ヨーロッパではトップ5、米国・アジアではトップ10以内)となり、事業内容や顧客リーチの面でも大幅に強化される。

フォルシア最高経営責任者(CEO)、パトリック・コラー氏のコメント
「今回の統合は、自動車技術分野のグローバルリーダーとなるまたとない機会です。フォルシアとヘラーは、共通のビジョン、価値観、文化を有しているため、抜群の組み合わせだと確信しています。才能あふれる両社のチームは2018年末より効率的な協力関係を築いており、力を合わせればどれだけの能力を発揮できるかは、すでに実証されています。両社を統合すれば、自動車業界の変革を促進している戦略的要因を味方につけて、極めて重要な優位性を得ることができます。両社の製品ポートフォリオとマーケットリーチを合わせることで、エレクトロニクスやソフトウエアのコンテンツが増え、実行の質が高まるとともに、イノベーションを通じて収益性の高い成長が加速されます。財務面は引き続き堅実な見通しであり、持続的なキャッシュ創出とレバレッジ解消に留意します。今回の統合は、フォルシアとヘラー相方の顧客、従業員、株主にとって、持続的な価値を生み出すものであると自信を持っています」

創業家チェアマン(Chairman of the Family pool)、ユルゲン・ベーレント博士(Dr.Jürgen Behrend)のコメント
「創業家株主として、私たちは、ヘラーという企業を早い段階で、創業家による株保有協定が満了する前に新たな所有者に引き継ぐことで、ヘラーに対する企業および企業家としての責任を果たしています。今回の統合は、当社の戦略的位置付けを一層強化し、ヘラーとその36,000人の従業員の利益に資するものとなるでしょう。と同時に、創業家はこのヨーロッパ有数の企業の発展に、フォルシアの株主として引き続き関与してまいります。フォルシアが新たな主要株主となることにより、ヘラーは、その強みをさらに効果的に発揮していくことができるでしょう。両社は、互いを完璧に補完する能力をそれぞれ有しています。ヘラーの各拠点に関する長期のコミットメントや今後の事業分野への投資に関しても、確約を得ています。こうしたことから、ヘラーには、長期にわたって成功し続ける理想的な前提条件がそろっていると言えます」

ヘラー最高経営責任者(CEO)、ロルフ・ブライデンバッハ博士(Dr.RolfBreidenbach)のコメント
「フォルシアとヘラーは、まさに相性がぴったりです。製品ラインナップや市場カバレッジについては特に当てはまります。加えて、どちらのパートナーも、統合の結果として生まれる顧客志向、オペレーショナルエクセレンス、技術リーダーシップに高い価値を置いています。従って両社が力を合わせ、モビリティの未来をともに推進するのは当然の成り行きです。フォルシアとともに進むことで、ヘラーはこれまで以上に未来を拓く多くの機会が得られるでしょう」

 買収のための借入は、Tier(ティア)1銀行からのブリッジ・ファシリティによって全て確保されている。また、フォルシアの現在の信用格付は、格付機関3社全てによって、まもなく確定される予定。フォルシアは、統合1日目から大々的なコストシナジーおよび最適化計画の実施に着手できるような買収取引構造になっている。計画の実施により、2億ユーロを上回る金利・税金・償却前利益(EBITDA)のランレートを生み出すともに、2024年には80%の損益インパクトを達成できる。

 収益のシナジーは、2025年には売上高で3億から4億ユーロに達する見込み。またキャッシュフローの最適化は、2022年から2025年までの平均で年間約2億ユーロになると予想されている。

戦略的意義

1)ヘラーの強力なアイデンティティ、事業、従業員のフォルシアへの統合
 フォルシアは、ヘラーの事業活動の高い技術力を高く評価しており、一層の強化、グローバル化を図りたいと考えている。フォルシアは、複数の柱からなるヘラーの事業戦略をさらに加速させ、自動車向けOEM製品(ライティングおよびエレクトロニクス)に加えて、他の市場セグメント(アフターマーケット、サービス、特殊アプリケーション)にも力を注いでいく予定。
 リップシュタット(ヘラーの本社所在地)は、引き続き重要な役割を果たし、統合後のグループの3つのビジネスグループ(エレクトロニクス、ライティング、ライフサイクル・バリュー・マネジメント)の本部となる。これら3つのビジネスグループの経営陣およびビジネスCEOは、リップシュタットを拠点とする。
 フォルシアは、ヘラーの人材を活用する方針。統合によって収益性の高い成長を実現する上でヘラーの人材が不可欠だからである。また、グループの合併・統合を成功に導く上で重要な鍵となるのはヘラー経営陣の安定性と関与で、そのため、ヘラーの幹部には経営陣上層部に加わってもらう。さらに、両企業からの同数の経営幹部で構成する統合委員会を設置し、統合プロジェクトを監督する。各役職には、適材適所の原則に則って最高の能力を持つ人材を配置する。
 フォルシアは、ヘラーの全従業員と建設的な対話を続けるとともに、現在の労使協議会ならびに労働協約を保持する所存。

2)急成長する自動車技術分野に焦点を合わせて世界7位の自動車部品メーカーを創出、各分野で主
導的地位を確立するとともに、パワートレインのタイプを問わず適用できる製品・サービスの収益比を大
幅に高める

▶︎エレクトリック・モビリティ(BEV+FCEV)に的を絞った強力な製品・サービスの開発
 統合後のグループでは、ヘラーのBEV関連のエネルギー管理ポートフォリオ、センサー、アクチュエーターとフォルシアの水素システムソリューション(FCEV)、ハイブリッドシステムを活かして、電気自動車(ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、バッテリー式電気自動車(BEV)、燃料電池車(FCEV))向けの包括的な製品・サービスを開発。統合後は、ヘラーのバッテリーマネージメントシステム、DC/DCコンバーター、車載充電システムに、フォルシアのバッテリーパックシステム、水素貯蔵システム、スタックシステムも加わり、互いの技術を持ち寄って各種製品を提供する。
 これら両社のソリューションのポートフォリオを活かすことにより、ゼロエミッションへ向けたモビリティ市場の移行を味方につけて、独自のポジションを確立する。

▶︎内燃機関(ICE)関連の売上比率は、2020年の25%から、買収取引完了時には20%未満、2025年には約10%に低下
▶︎エレクトロニクスおよびソフトウェア分野の主要プレイヤーとなり、ADASおよび自動運転を加速
 ADASおよび自動運転分野では、フォルシアクラリオン・エレクトロニクスとヘラーのエレクトロニクスおよびソフトウェアとを組み合わせれば、次世代の高速および低速ADASのコンバージェンスを支える強力なグローバルプレイヤーが誕生する。統合後は、レーダー、電動パワーステアリング(フェイルオペレーショナルを含む)、電子ミラー、全方位ビュー、自動駐車ソリューションをはじめとする各種製品・システムを提供する。
 新グループは、エレクトロニクスおよびソフトウェア分野の合計売上高が37億ユーロに達する。今後24カ所の生産拠点と21カ所の研究開発(R&D)センターを運営し、2025年には売上高を約70億ユーロへと成長させることをめざし、既に多くの発注を受けている。

▶︎相補的なポートフォリオを活かして、フォルシアのコックピット・オブ・ザ・フューチャー戦略を推進
 フォルシアは自動車用シートおよびインテリア(SASを含む)で、ヘラーはインテリア・ライティングでそれぞれ主導的地位を確立している。さらにエレクトロニクスにおける両社の強みを組み合わせ、コックピット・オブ・ザ・フューチャー戦略を大幅に強化する。
 ヘラーのヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)インテリア・ソリューション技術、ボディエレクトロニクス(アクセス、コンフォート、シート)のポートフォリオ、センサー、アクチュエーターは、新たなカスタマー・エクスペリエンスを提供し、価値創造を支える。

▶︎ライフサイクル・バリュー・マネジメント活動を創出し、環境面の懸念や業界の変化に対応
 統合によって、アフターマーケット、サービス・修理、特殊アプリケーションなどを含む、本格的なライフサイクル・バリューの構築・提供が可能になる。フォルシアは、高い評価を持つヘラー・ブランドをさらに強化することが可能。エコデザイン製品、持続可能な素材、循環型経済といった分野におけるビジネスの可能性を活かすことができる。

3)強力なR&D能力によるイノベーションの加速
 新グループは、非常に優秀かつ意欲にあふれる18,500人のエンジニアおよび専門家(3,000人のソフトウェア・エンジニアを含む)を擁することになる。高度な技術に支えられ、市場化時間が短く、持続的に利益を生む、先進的なイノベーションプロジェクトの開発を推進する。

4)全ての地域にわたる相補的な顧客ポートフォリオとアジア(特に中国)におけるフォルシアの強みを活用
 統合により、相互補完的な市場地位と強みを持つ2つの企業が結び付く。中国および日本のOEMとの関係が強いフォルシアの強みを活用すれば、ヘラーには新たなビジネスチャンスがもたらされる。一方、フォルシアにとっては、ドイツにおけるヘラーの強固な地位を活かすことで、ドイツのプレミアムOEMとの結びつきを強めることができる。また米国を拠点とするOEMに関しては、両社がそれぞれに関係を築いているため、ここでも互いの関係先を活かすことができる。
 6つのビジネスグループのうち5つ(エレクトロニクス、ライティング、シーティング、インテリア、クリーンモビリティ)は、それぞれ売上高が30億ユーロを上回る。新たなビジネスグループであるライフサイクル・バリュー・マネジメントは、このセグメントで主導的地位を築き、セグメントの成長に貢献する。

5)大幅なシナジーにより収益性とキャッシュ創出を改善
 調達、販売費・一般管理費(SG&A)、その他の営業費用等のコストシナジーおよび最適化により、2億ユーロを上回るEBITDAのランレートが生じるとフォルシアは考えている。また、損益インパクトは徐々に増加し、2023年の40%から、2024年には80%、2025年には100%に達すると考えている。売上のシナジーについては、中国、日本、米州におけるフォルシアのカバレッジを利用してヘラー・ブランドを売り込むとともに、ドイツのOEMにおけるヘラーのエレクトロニクスの強力な地位を活かしてフォルシアの市場シェアを拡大すれば、2025年までに売上高で3億から4億ユーロを生み出せると見込んでいる。
 以上のシナジーに加え、主として運転資本および資本支出を通じ、2022年から2025年の平均で、年間約2億ユーロのキャッシュフローが生まれると考えている。

6)優先課題としてESGに取り組んできた共通の姿勢
 両社はともに、カーボンニュートラルに向けた野心的なロードマップを掲げ、業界をリードするESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを行うなど、強固な価値観を共有している。統合後のグループは、モビリティの脱炭素化・持続可能性をけん引する存在となる。

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Motor Fan illustrated編集部