トヨタ、クルマの未来を変える新たな開発体制と今後の水素事業戦略を発表

6月13日にトヨタが発表したクルマの未来を変える新技術の数々は、非常に幅広い分野に及ぶものだった。先に公開したBEVに関する発表に次いで本稿では開発体制の刷新と、新設される水素ファクトリーの取り組み、水素事業戦略に関して紹介する。

トヨタの技術戦略とクルマづくりの方向性

トヨタが、今年4月の新体制方針説明で説明した「トヨタモビリティコンセプト」。その実現のカギを握る3つのアプローチが「電動化」、「知能化」、「多様化」だ。電動化では、各地域の事情に応じた最適なパワートレインの導入など、「マルチパスウェイ」の軸をぶらさず推進させていく。知能化は、クルマやサービスに加え、Woven Cityなど、社会とのつながりを広げる取り組みも進めていく。多様化は、すべての人に提供する移動の自由や多様なエネルギーの選択肢まで、「クルマ」から「社会」へと領域を広げた多様化が推進される。

この3テーマを推進すべく、技術の領域でも、カンパニー制発足当時の2016年以降、先行分野へのリソーセスシフトと未来志向での積極投資が進められてきた。2023年3月時点で、開発人員は半分以上をシフト、研究開発費は総額を増やしながら約半分を先行にシフトしてきた。この流れを、今後さらに加速させていく。

トヨタは今後、3つの軸でのクルマづくり推進の意向を示している。
1つ目が、妥協無く安全・安心を追求すること。トヨタセーフティセンスをさらに磨き、市場に安全・安心の技術を提供する。
2つ目は、未来はみんなでつくるものということ。CJPTでの商用分野での脱炭素への取り組みや、タイCPグループとの提携、またモータースポーツでの連携など世界中の仲間とつながり、未来づくりを進めていく。
3つ目は、地域化の加速。今後は地域ごとの顧客のニーズが一層異なってくるため、世界中にある研究・開発拠点において、「お客さまのもとでの開発」が進められていく。

水素事業戦略

キャプション入力欄
キャプション入力欄

2030年の水素市場は、欧州、中国、北米の規模が圧倒的に大きく、燃料電池市場は2030年に向けて急速に市場が広がり、年間で5兆円規模になると予測されている。トヨタはMIRAIの水素ユニットを使って、燃料電池の外販を進め、2030年に10万台の外販オファーを集めている。その大半は商用車だということだ。

急激なマーケットの変化に対応するために、7月から新たに水素ファクトリーという組織を設置し、営業、開発、生産まで、ワンリーダーの下で、一気通貫で即断即決できる体制が整えられる。この水素ファクトリーは、3つの軸で事業が推進される。

1つ目は、マーケットのある国で開発・生産。欧州・中国を中心に、現地に拠点を設け、取り組みを加速する。
2つ目は、有力パートナーとの連携強化。連携を通じて数をまとめることで、アフォーダブルな価格の燃料電池を市場に提供できるよう取組みを進める。
3つ目は競争力と技術。次世代セル技術やFCシステムといった「競争力のある次世代FC技術の革新的進化」に取り組んでいく。

これらの取り組みを進めながら、本格的な事業化に取り組んでいく。トヨタの次世代のシステムでは、技術進化、量産効果、現地化により、37%の原価低減を実現。更にパートナーとの連携により、仮に2030年に20万台のオファーを集めた場合、50%まで原価低減が可能になってくるという。多くの顧客や、各国政府の期待に応えながら、しっかりと利益を出す事ができる様になっている。トヨタはこの目標に向けて、開発、生産、販売一丸となって進めていく。また、水素の価格についてはまだまだ高額であるため、これを普及していくために、トヨタは、「つくる」「はこぶ」「つかう」の「つくる」という事にもパートナーと共に取り組み、引き続き貢献を続けていくことが報告された。

キーワードで検索する

著者プロフィール

Motor Fan illustrated編集部 近影

Motor Fan illustrated編集部