「バッテリー様」を気持ちよくさせろ!——電気自動車はお熱いのがお嫌い? —

(PHOTO:Nissan)

上の記事でも綴ったように、駆動用バッテリーとして主流のリチウムイオン電池は温度管理がシビアである。高温側としては概して大電流を流すシチュエーションで発熱が大きく、たとえばフル加速や長時間の最高出力発揮(放電時)、そして大入力による急速充電(充電時)などがあげられる。高熱を帯びると電解液が負極の表面に皮膜を厚く形成してしまい、そこにリチウムイオンが捕獲されてしまうことから充放電性能が低下してしまう。こうなってしまうと温度を下げても元には戻らない。

また、駆動用バッテリーはひとつの電池セルで作ることは(現在のところ)不可能で、セルを組み合わせたモジュール、そのモジュールを組み合わせたパックという構造としているのが大半。パックの中には相当な量のセルが収められているわけで、当然ながら冷えやすいセル/熱を帯びやすいセルということになる。先述のようにセル→モジュール→パックとしている理由は、BEVを動かすための高電圧/大電力量が欲しいためで、するとセルは直列接続として3.6V@セル×個数——で電圧値を高めていくこととなる。直列で、高熱により劣化したセルがその中に含まれてしまうとどうなるかといえば「モジュール内のすべてのセルはその劣化したセルに合わせる」ということになってしまい、期待した性能からは程遠いことになってしまう。

そのような劣化や性能低下を生じさせないために、駆動用バッテリーにはBMS:バッテリーマネージメントシステムが必ず備わっている。もちろん、温度のみならず充放電時の電圧/電流を含め、バッテリーパックを制御している。

日産・リーフのバッテリーパック。2011年から販売を続けるBEVのパイオニアは、パックの冷却を空冷式でまかなう。(PHOTO:Nissan)
同じく日産の軽自動車型BEV・サクラのバッテリーパック。じつは「リーフの半分」という構造で信頼性とコストを両立させた意欲作。ただし冷却方式は冷媒式として積極的にパック内を冷やす思想。(PHOTO:Nissan)
そして同じく日産・アリア。バッテリーパックはいよいよ水冷式、急速充電時の「あと20%」という状況でも温度上昇をうまく抑え、充電速度を落とさないという性能を誇る。

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