長野県企業局は、2021年4月にスマート化推進センターを創設し、発電施設の集中制御とスマート化を推進している。水力発電所では、気候変動の影響による水災害が激甚・頻発化することなどを背景に、ダムの正確な流入予測に基づく運転計画の作成が求められている。これまで、運転計画は熟練作業員の判断や経験に基づいて作成されていたが、気象予報の精度が向上したこととAIによる流入予測が実用レベルになりつつあることから、スマート保安推進の一環として、これらを活用した運転計画支援システム導入の可能性を検証するために本事業を実施している。
事業内容
① ダム流入量予測モデルの構築
これまでは現場作業員が気象予報や経験からダムの水位を調整していたが、ダム流入量予測モデルでは、過去の気象情報やダム流入量を学習し、気象予報からAIがダム流入量(現在時刻より72時間以上先まで)を高精度に予測する。AIによる学習のみで予測モデルを構築するため汎用性が高いのが特長。
② 発電所運転計画支援システムの構築
AIが予測した流入量に基づき最適な発電計画を作成する。ダムの発電特性、水位・水量変化の特性、発電機やダム運用の制約条件を考慮しながら、発電計画を自動立案するため、現場作業員の負担を軽減できる。また、これらの特性と制約条件を定式化することで、発電所の運用制約を満たしつつ発電電力量を最大化することができるため、従来の発電計画に比べて収益性の向上が期待できる。