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マイナーチェンジ後も高いチューニング適性は健在!
500馬力オーバーの快速パッケージに迫る
3.0L・V6ツインターボエンジンを搭載したことで、チューニングベースとしての存在感を一気に開花させたRV37型スカイライン。そして、最高速テストへのトライを重ねて300km/hオーバーを達成し、このハイパフォーマンスセダンを鍛え上げてきたのが名門“フェニックスパワー”だ。
「フェアレディZと共に、スカイラインはやっぱり特別な存在です」とは、フェニックスパワー代表の横山さん。自らプライベートカーとして400Rを選ぶほどお気に入りで、同店では2023年、R35GT-RよりもRV37スカイラインの方が、ECU書き換え実績が多かったという。今、セダンで最も注目すべきベースマシンというわけだ。
元々、北米用の5.0L・V8エンジンを代替するために開発されたのが、このVR30DDTT。つまり、ダウンサイジングターボ・コンセプトに則っているわけだが、歴代の多くが6気筒のハイパフォーマンスエンジンを搭載してきたスカイラインにとって大きな武器となった。
直噴ツインターボに水冷インタークーラーといったトレンドと言える機構に加え、405psのハイスペック仕様となる400Rではタービンに回転センサーを装備することでパワーアップを実現している。このエンジンのポテンシャルを引き出す手段がECUの書き換えであり、フェニックスパワーは時間を掛けて研究・熟成させてきた。
「VR30DDTTがベースとして優れている最たる理由は、日産のECU設計が素直なことですね」とは横山さん。ほぼ同時期に開発されたトヨタ・GRスープラのボッシュ製ECUは、RV37の30倍近い項目のMAPがあり、書き換えたい項目を探すのも困難な構造なのに対して、RV37のECUは非常に親切な作りになっているのだという。
とはいえ、進化が目まぐるしい現代のECUを攻略するのは容易なことではない。点火タイミングやバルブタイミング、ブーストコントロールなど、1つの項目でも複数条件のMAPがあり、それぞれが複雑に絡み合って計算されている。これらの相互関係を理解して書き換えることで、チューニングパワーを引き出していくのだ。
一方、ハード面で攻略すべき筆頭は、水冷インタークーラーだ。水冷は空冷に比べてコンパクトなサイズでレイアウトできるのがメリットだが、パワーアップするに伴って純正では性能不足が露呈し、吸気温度が上昇してしまう。
そこで、水冷インタークーラー用のラジエターであるヒートエクスチェンジャーを大型化(厚みを純正の15mmから35mmへ変更)することで、500psオーバーに対応させている。
エキゾースト環境は、トラストのキャタライザーとアペックスのN1エクストリームマフラーの組み合わせ。キャタライザー導入の効果は非常に大きく、ピークで40ps近い出力向上を実現したというから恐れ入る。この仕様に独自のECUチューン(アプリケーションCPU)を合わせこむことで、約510psが狙えるのだ。
なお、RV37はブローオフバルブが標準装備されていないが、フェニックスパワーではスロットルレスポンスの改善&タービン保護のためにも必要と判断。ブリッツ製のブローオフバルブを装備可能なサクションパイプを開発してキット化している。
このパワーグラフは、400Rでスピードリミッターを解除したのみのノーマル状態(赤線)と、吸排気+ECUチューンによるブーストアップ仕様(灰線)を比較したものだが、パワーアップ率は強烈。406.8ps&62.7kgmから523.2ps&81.9kgmへと、約120ps&20kgmのエクストラパワーを獲得しているのである。しかも、燃料系ノーマルのままで、だ。
ここまでの高出力仕様となると、足回りのチューニングは必須。フェニックスパワーが推奨するのは、最高速シーンで鍛え上げたアラゴスタのタイプS車高調をベースにしたオリジナルスペック。スプリングレートはフロント24kg/mm、リヤ16kg/mmと若干ハイレートだが、「しっかりとした硬さがあるけど、しなやかさもあって路面追従性は抜群」と横山さん自慢の乗り味を実現している。
駆動系も手を入れたいポイント。というのも、RV37はオープンデフ仕様のため、そのままでは爆発的なパワーを生かしきれないからだ。フェニックスパワーのワークスカーは、ウェブトラック社のトルセンLSDを投入してトラクション性能を高めているが「直進安定性もめちゃくちゃ良くなるのでお勧めですよ」とのこと。
また、フェニックスパワーは400Rだけに留まらず、304psのGTグレードや、420ps仕様のニスモリミテッドもデモカーとして導入し、RV37チューニングの可能性を高めてきた。
「RV37に興味のある方から、チューニングベースとして選ぶなら、ベースはどれが良いのか…とよくご相談いただきます。タイプによってパドルシフトが無いなど装備の違いは有りますが、結論としてはGTグレードでも全く問題ありません」と横山さんは断言。
GTグレードにはタービンの回転センサーが装備されないため、想定される過回転の危険性もECUチューニングの精度が高まった現在では、十分なマージンを取った上で500psオーバーを実現可能だ。
ちなみに、今回撮影した黒い400Rは、年次改良でECUが第二世代となったことを受けて新たに導入したデモカー。その研究開発が終了し、当初はコンプリートカー販売を予定していたが、手放すのが惜しくなるほど気に入ってしまったため、現在は横山さんのマイカーになっていたりする。
「速さは抜群だし、乗り心地も良いし、移動がとにかく楽ちん。オールマイティに使えるし、本当に弱点がないクルマですよ、RV37は」と、横山さんはそのポテンシャルに太鼓判を押しているのだ。
●取材協力:フェニックスパワー 福井店:福井県坂井市丸岡町朝陽2-317 TEL:0776-67-2980/京都店:京都府久世郡久御山町佐古外屋敷37-2 TEL:0774-48-1157
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フェニックスパワー
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