「国産初の直列、V型、水平対向6気筒エンジン」それぞれの登場年とメーカーを考察する!

80年以上も前に存在してた直列6気筒、V型と水平対向6気筒は1980年代に登場

国産直6はA型エンジンに始まった!

国産直6エンジンの歴史は古く、トヨタ(当時は豊田自動織機製作所自動車部)初の量産型乗用車であるトヨダAA型に搭載されたA型エンジンにまでさかのぼる。

トヨダAA型のボディ設計にあたってモデルに採用されたのが1934年型クライスラー・デソートセダン。「時代を先取りしたそのデザインは数年後にトヨダAA型が発売された時にも古臭く見えないだろう」という理由から選ばれた。ボディは今で言う3ナンバーサイズ。1.7m超の全高もあって堂々としたスタンスを見せる。

1935年に完成したA1型試作乗用車を経て、AA型乗用車が発売されたのは翌1936年だったが、A型エンジンはその2年前に完成。モチーフになったのは1933年型シボレーセダンのエンジンで、内製されたのはシリンダーヘッド、シリンダーブロック、ピストンなどの鋳物パーツに限られ、クランクシャフトやカムシャフト、バルブなどにはシボレー製が使われた。

ところが、ようやく完成した試作エンジンをテストしたところ、シボレー製エンジンの60psに対して8割くらいの性能しか出ていないことが判明。問題が燃焼室形状にあることを突き止め、新たに設計したシリンダーヘッドに交換することで65psまで向上した。

また、AA型乗用車と同時に発表されたGA型トラックやDA型バスに搭載されたのも、同じくA型エンジンだった。

■ENGINE SPEC
型式:A
形式:直6OHV
ボア×ストローク:φ84.0×101.6mm
排気量:3389cc
圧縮比:5.4:1
最高出力:65ps/3000rpm
最大トルク:19.4kgm/1300-2000rpm

縦置きも横置きも可能な自由度の高さ

初のV6は幅広く展開した日産VG型だ!

国産初の量産型V6エンジンは日産のVG型。排気量は当初から2.0Lと3.0L、遅れて3.3Lが用意され、1983年にY30セドリック/グロリアに搭載されて登場した。

セドリックとしては6代目となるY30型。写真は4ドアハードトップで、1983年デビュー当時の最上級グレードだったV30EブロアムVIP。翌1984年にはVG30ETを搭載するV30ターボブロアムVIPが発売された。

こちらはY30グロリア“ジャック・ニクラスバージョン”。先代430に続き、当時ゴルフ界の“帝王”として君臨してたプロゴルファーの名を冠した特別仕様車だ。専用の内外装を持ち、装備の充実化も図られたモデル。

VG型のシリンダーブロックは鋳鉄製でバンク角60度。80年代前半から00年あたりまで約20年に渡って日産の主力エンジンだっただけに、まずVG20系はシングルカムのE、同ターボのET、ツインカムのDE、同ターボのDETとバリエーションを拡大。画像はVG20ETだ。

■ENGINE SPEC
型式:VG20ET
形式:V6SOHC+ターボ
ボア×ストローク:φ78.0×69.7mm
排気量:1998cc
圧縮比:8.0:1
最高出力:170ps/6000rpm
最大トルク:22.0kgm/4000rpm

さらにVG30系では上記に加えてツインカムツインターボ仕様のDETTもラインナップされ、Z32フェアレディZに搭載。シングルターボ仕様のDETはF31レパード、Y30~32セドリック/グロリア、Y31/32シーマなど幅広い車種に搭載された。画像はVG30Eだ。

■ENGINE SPEC
型式:VG30E
形式:V6SOHC
ボア×ストローク:φ87.0×83.0mm
排気量:2960cc
圧縮比:9.0:1
最高出力:180ps/5200rpm
最大トルク:26.5kgm/4000rpm

ちなみに、VG30Eには派生エンジンが存在する。それはFF車用に設計されたツインカムヘッドを持つVE30DE(VG30DEはFR車専用)だ。ところが、実際にはJ30マキシマに搭載されただけ。販売期間わずか3年という短命に終わったエンジンだったのである。

既存の4気筒エンジンに2気筒を追加!

スバルER27型フラット6は孤高の存在!!

1966年から水平対向エンジンを作り続けているスバル。同社初にしてもちろん日本初でもあるフラット6は1987年に市販化された。それが、AX9アルシオーネ2.7VXに搭載されたER27型エンジンだ。

考え方としては、レオーネに載る1.8Lフラット4のEA82型に2気筒を加えたもので、それはボア×ストロークがφ92.0×67.0mmと共通なことからも明らか。しかし、クランクケースやクランクシャフトは当然専用品となり、O2センサーを使った空燃比フィードバック制御やクランク角&ノックセンサーによる点火時期制御など当時のスバルの最新技術が投入されていて、一言でEA82型からの発展とは言えないほどの仕上がりを見せる。

■ENGINE SPEC
型式:ER27
形式:フラット6SOHC
ボア×ストローク:φ92.0×67.0mm
排気量:2672cc
圧縮比:9.5:1
最高出力:150ps/5200rpm
最大トルク:21.5kgm/4000rpm

電子制御アクティブトルクスプリット4WDやABS、E-PS(電子制御ニューマチックサスペンション)、電動油圧パワステなど、アルシオーネ2.7VXには当時のスバルの最新技術が投入されていた。

結局、ER27型を搭載したのはアルシオーネだけで1991年には生産終了。その後、フラット6はアルシオーネSVXのEG33型、BE系レガシィランカスター6やBL/BP系レガシィ3.0RのEZ30型、海外仕様のBN/BS系レガシィのEZ36型へと展開した。

TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

キーワードで検索する

著者プロフィール

weboption 近影

weboption