「グラチャン族と呼ばれた男たち」愛車の改造に賭ける情熱は今の若者以上だった!?

社会問題にまで発展したグランチャン族の実像

全盛期を彩ったストリートファイター達

チューニング系のSNSを覗くと、最近、日本のみならず海外でもかつての“グラチャン仕様”っぽいスタイルがよく目につく。絶滅危惧種かと思いきや、一部では全く廃れていない世界ということなのだろうか。

ちなみにグラチャン族とは、70年代から80年代にかけて大ブレイクした“富士グランチャンピオン・レース”に由来する。星野一義氏をはじめとする当時のトップレーサー達が駆るレースマシンをリスペクトし、派手なオバフェンやレースパーツ等で愛車を改造した街道レーサーだ。グラチャンの際に富士スピードウェイに集結するのがお決まりだったが、暴走行為や集会がヒートアップしすぎて社会問題にまで発展したという経緯がある。

OPTION誌1982年11月臨時増刊号では、そんな彼らの愛車を徹底フィーチャー(後のホットマシンコーナー)している。早速、全盛期を彩ったストリートファイター達をプレイバックしていこう。

ホットだぜ! 俺の燃えるアメリカンZ

フェアレディZ/千葉県・A.Mクン

なんて派手なZなんだ! バーフェンからサイドスカートへかけての流れるようなライン。チンスポからリヤまで一貫して丸みを出した手法は、もちろんパテ埋め。リヤエンドも丸くまとめられ、ケンメリのワンテールを流用している。リヤゲートもRX-7用のものを加工して取り付け、それらしい雰囲気。

ググッと惹きつけるファンシータッチは、全てこの塗装が原因だ。アストロフレーク・アメリカン塗装と呼ばれるこの手法は、細かい金属の粒をペイントに混ぜ、表面がザラつくことなくギラギラ輝くもの。アメリカのチョッパーやホットロッドに昔から使われているものらしいが、オールペンだけで35万円! 注目度も抜群だ。

ノーズの先端には星条旗が描かれ、そのストライプが後方へと向かうにつれて炎に変わるといった、凝ったペイントにはただ脱帽。中身も3.0Lフルチューンにコニ・ショック、ダンロップレーシングタイヤを履く。内外ともに充実したマシンだ。

オバフェン付けたらこうなった!

クレスタ・ターボ/埼玉県・M.Sクン

グレーにシルバーメタリック。57年式クレスタ・4ドアハードトップが、バーフェン装着で2ドア化。本来はアダルトなサルーンカーなのだが、自作のチンスポやリヤウイング、さらにRX-3用ワークス・バーフェンを組み込んだらこうなったらしい。足回りには、スピードスターホイールのスターフォーミュラ(F10J R11J)とヨコハマのアドバンレーシングをセットする。

しかし、このクルマは2プラス2ならぬ5マイナス3シーターになって、少しばかりもったいない気もするが、それが改造というものだ。リヤシートがラゲッジスペース化したついでに、フロントシートはバケットへ。ウッドのステアリングホイールはMOMOのインディ。マフラーは自家製のサイド出しだ。

オバフェン処理の美しい元4ドア

セドリックターボ・ブロアム/千葉県・M.Sクン 

55年式のセドリックが大変身。RX-3用のワークスを流用したバーフェンと、430用のフロントスポイラーはどちらも綺麗にパテ埋めで対処。スカイラインRS用のリヤスポイラーに純正430の2800ブロアム用バンパーを前後装着、サイドにもプロテクションモールが回る。ライトマスクも430用純正だ。

エンジンも凄まじい。2.6Lにボアアップされ、68度のハイカムにレーシングピストン、そして上手くマッチングした燃料インジェクションにターボ用のエアクリーナー。全てがコンピューターチューン。プラグコードもアクセルのイエローコードを使用。

出力アップに合わせて、ショックもチューニング。前後ともにカヤバの強化サスでスプリングも強化。ホイールはスターフォーミュラ製のメッシュ(F10J R11J)。これにブリヂストンレインを組み合わせる。

マリンブルーのストライプが好印象!

RX-7・GT/茨城県・Y.Kクン

綺麗に仕上げられたRX-7の登場だ。55年式のサバンナをベースに、チンスポ&リヤスポを加え、バーフェンはフェアレディZ用を流用。白に鮮やかなマリンブルーのストライプが斬新だ。フェンダーアーチもタイヤ&ホイールとマッチしていて、横から見てもバランスが良い。

サスペンションはフロントにコニ・ショック、リヤにカヤバ8段調整レース用ショックという構成。室内は、4点式のロールバーにTRD純正バケットが入る。ここに座ってスリッパを履き、ヒール&トゥをするそうだ。

本格的にターボチューン!

セドリックSGLE-F/千葉県・N.Kクン

52年式のセドリック。外観もさることながら、ボンネットの下はまるで羊の皮を被った狼という印象だ。L28に載せ換え、68度のハイカムに強化スプリングも投入。さらに、クランクシャフトやコンロッドにも手を入れているそうだ。

ターボチャージャーはHKS製で、ターボ用のピストンも投入。これだけの高回転仕様を着実に点火させるためには、やはりCDIが必要。また、ターボの発する熱を処理するために、オイルクーラーを付加しているのも賢明だ。

外観の変更点は、ケンメリ用のチンスポ、セリカ用のワークス・バーフェン、そしてなんとマツダポーターキャブ用のワンテールに、セリカLB用のエアダクト、RX-7用のリヤスポをパテ埋めして装着。ボディカラーは、ワーゲンシルバーにレインボーラメを少々。非常に完成度が高い1台だ。

オリジナルL28を3.0Lまでボアアップ!

セドリック330/千葉県・H.Aクン

ブラックとブルーメタリックのツートンカラーが眩しい52年式2ドア・セドリック。オリジナルのL28は3.0Lにボアアップ。強化バルブにハイカムが組み込まれ、ポートも研磨済み。キャブは44φのソレックス3連装、CDIとイエローコードにより点火される。

足回りはH130の強化スプリングを前後に入れ、モンローのコンプレッサー付きエアショックを装備。ホイールはスターフォーミュラメッシュ、タイヤはポテンザレーシングという構成だ。

外装はケンメリ用フロントチンスポ&リヤウイング、RX-3用のワークス仕様バーフェンはリベット留め、ボンネット上のエアダクトはアメ車用。オイルクーラーはバンパー固定で、イエローのオイルラインが存在感を主張する。

拍手パチパチ、精悍なマスクです

スカイラインGT/神奈川県・N.Sクン

改造ベースとしてはとてもポピュラーなハコスカ。チンスポにリヤスポ、フェンダーは手で叩き出し、サイドステップは光り輝くシルバーでペイント。

何と言ってもこのクルマのチャームポイントは、その精悍なマスクにある。ノーマルのグリルとバンパーは外され、オイルクーラーのコアが前面で威張り散らしているのだから。両端の4灯式ヘッドライトにはカバーがかけられ、銀の地に赤でスカイラインの文字が浮かび上がっている。

中身も強烈。2.6L直6エンジンにソレックスキャブを組み合わせたメカチューン仕様で、フライホイールも軽量化。あり余るパワーを確実に伝えるために、クラッチまで強化しているほどだ。

怪物ダブルズィを、さらにモンスター化

ジェミニZZ/R/茨城県・S.Oクン

この手のクルマの中では珍しい、ラリーベースカーの登場だ。外観の変更は、チンスポにリヤスポ、ドアミラーにエアインテークスクープくらい。エンジン関係は、タコ足に50φのストレートマフラーを組み込んでいる。ZZはノーマルでも足が固いのだが、KONIのラリーサスでさらに強化しているというから恐れ入る。

これだけ足回りを固めると、並のシートではホールド性がNG。そこで、ドライバー側にはオートルックのFRPシートを、ナビ側にはコルビューのGTAをそれぞれインストール。これらのシートに身体を縛り付けるのがシュロス製シートベルト。ロールバーもガッチガチだ。

ハイオーナーカーのグロリアが・・・!

グロリア280E/千葉県・S.Iクン

56年式のグロリアを、物々しくドレスアップ。チンスポにリヤスポ、そしてオーバーフェンダーはワークスセリカからの流用だ。これらを全てブラックアウトし、シルバーのボディにアクセントを付けている。

足回りには、加工ホイールが10Jと12J、これにダンロップレーシングを履く。もちろんサスも強化済みだ。グリルからバンパー下のオイルクーラーまで引っ張っているオイルラインが迫力。

これぞハコスカ、ブッチギリ!

スカイライン2000GT/茨城県・Y.Aクン

ラメ入りのオールシルバーで全体的にまとまっているハコスカ。オーバーフェンダーにチンスポイラー、リヤスポイラーを加えた外観は美しいの一言。ホイールは13インチのスピードスターマークII(F9.5 R12.5×13)で、タイヤにはアドバンレーシングの205と245を履く。

エンジンは2.6Lのフルチューン仕様で、サイドアウトマフラーは自作とのこと。改造費は全部で80万円!

ケバケバファンダーがニクイ!

グロリアSGL-E/千葉県・F.Aクン

51年式のグロリアに、さらにシブさが加わった感じか。サバンナワークス用のオーバーフェンダーをサイドに張り出させ、ブラックのボディカラーにゴールド色を目立たせている。

エンジンは3.0Lのフルチューンで、HKSのターボチャージャーも装着。足回りはフロントに強化スプリングを入れて1巻カット。ショックはフロントがカヤバで、リヤがガブリエルだ。その他、日産純正のコンペティション用ステアリング、パイオニアのカーコンポーネントが室内を飾る。

終わりに

改めて当時のリアルなグラチャン仕様を見ると、意外と真面目なチューンドが多い!? 何より、アイディア溢れる自由な発想と愛車に賭ける情熱には、素直に感服するばかりだ。

[OPTION誌1982年11月臨時増刊号より]

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