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今日は何の日?■走破性に優れ、燃費の良いアクティ4WD


1983(昭和58)年3月9日、ホンダは初の4輪車「T360」の流れを汲む人気の軽商用車「アクティ」の4WDモデル「アクティ4WD」を追加することを発表した(発売は3月14日)。簡単なスイッチレバーで切り替えが可能で、軽4WD車ではトップの低燃費をアピールした。
アクティの前身は、ホンダ初の4輪車T360

2輪車で成功を収めたホンダが、満を持して初めて市場に送り込んだ4輪車は、スポーツカーではなく軽トラックの「T360」で、1963年8月にデビューした。

軽トラT360のエンジンは、国産車初のDOHCエンジンを採用。排気量は当時の軽自動車規格の360ccで、水冷4ストローク直列4気筒を搭載。空冷や2ストロークが多かった時代に、ホンダらしい斬新でハイスペックなエンジン仕様だった。2輪で培った技術をベースにした高回転・高性能エンジンは、最高出力30ps/8500rpm、最大トルク2.7kgm/6500rpmを発揮する、まるでスポーツカーのような心臓を持っていたのだ。

トランスミッションも当時の軽自動車には珍しい4速MT、最高速度は100km/hに達した。駆動システムは、エンジンを前車輪の後方に搭載したMR(ミッドシップ)。エンジンは、高さを抑えるためにほぼ水平に倒して搭載し、ちょうどドライバーズシートの下に配置された。MRにすることで、広い荷室と運転に有利な前後重量配分を実現することができたのだ。
ハイスペックだけにT360の車両価格は、34.9万円とやや高額だった。ちなみに、当時のダイハツ「ハイゼット」は30万円だった。
T360の進化を経てアクティ誕生
T360は1967年に「TN360」、1970年には派生車「バモス」へと進化を続け、1977年7月に後継の「TN-アクティ」が軽自動車の排気量規格が550ccになったことに合わせてデビューした。

TN-アクティは、2ドア(2人乗り)トラックであり、荷台は一方開きと三方開きが設定され、一般的な軽トラがラダーフレーム構造だったのに対し、アクティは荷台まで一体化したモノコック構造を採用して軽量、高剛性を実現した。
他社がキャブオーバータイプのRR(リアエンジン・リアドライブ)を採用していたのに対して、アクティはMRレイアウトに、トランスミッションとデファレンシャルギヤが一体型のトランスアクスルを採用。この構造はスポーツカーに多く採用されており、軽トラは2シーター(2人乗り)であったことから“農道のフェラーリ”と呼ばれることがあった。ライバルのスバル「サンバー」が、RRレイアウトで“農道のポルシェ”と呼ばれたことに対抗したのかもしれない。
パワートレインは、最高出力28ps/最大トルク4.2kgmを発揮する新設計の550cc 直2 SOHCエンジンと、5速/4速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式はFRだった。
車両価格は、一方開きで53.3万円(標準)/55.8万円(スーパーデラックス)に設定。三方開きは、1万円高である。
アクティに軽トラ初の4WDモデル追加
1983年3月のこの日、アクティに4WDモデル「アクティ4WD」が追加された。
設定された4WDシステムはパートタイム方式だが、走行中でもワンアクションで2WDと4WDの切り換えができる“スイッチレバー式”を採用。農道や雪道など路面状態に応じたすばやい切り換えができることにより、扱いやすくスムーズな運転感覚と快適な走り、さらに優れた静粛性が実現された。
パワートレインは、最高出力29ps/最大トルク4.5kgmを発揮する改良型の550cc 直2 SOHCエンジンの力強いトルクとともに、低速域から高速域まできわめて幅広い領域をカバーするワイドな5速MTの組み合わせ。これにより、軽4WD車トップの低燃費24.5km/L(60km/h走行時)が達成された。


さらにアクティの特徴であるMRレイアウトによる理想的な前後重量バランスと4WDとの相乗効果によって、悪路での卓越した走破性を発揮。またMRによって室内の足元空間が広く、特にバンの後席足元が広く、商用車ながら余裕の走行ができたのだ。

車両価格は、トラックが73.6万円(三方開きトラック)/82.6万~95.8万円(バン)に設定。当時の大卒初任給は、13万円程度(約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で価格は約130万円/146万~169万円に相当する。
アクティはホンダらしい斬新な設計の軽トラ/バンとして人気を獲得していたが、2021年4月に生産を終えた。

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アクティは斬新なMRレイアウトや専用フレームを採用していたため、排ガス規制や自動ブレーキ義務化に対応するための設計変更が大規模になり、コストがかかってしまう。アクティの生産終了は、例え規制対応で開発費を投入しても収益が見込められない、コスト競争に勝てないと判断したからだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。






