連載

あのコンセプトカー、どうなった?

“ロードスター後”に現れたホンダの回答

1995年の東京モーターショーで公開されたHonda SSM

1995年の第31回東京モーターショーでホンダが発表した一台のコンセプトカーが大きな反響を呼んだ。Honda SSMである。FRオープンスポーツカーのコンセプトで、のちに市販化されている。今回のテーマはこのHonda SSMである。

少し時計を巻き戻してみよう。

1989年登場のマツダMX-5(ユーノス・ロードスター)
ユーノス・ロードスター(1989年) 全長×全幅×全高:3970mm×1675mm×1235mm ホイールベース:2265mm 1.6L直4DOHC

1989年に一台のライトウェイト・スポーツカーがデビューした。もちろん、マツダMX-5 Miata(日本名:ユーノス・ロードスター)である。これが世界的な大ヒットとなり、世界中の自動車メーカーが後を追うことになる。

フォーマットはこうだ。コンパクトでスポーティなオープンカーに、“+α”を加える。+αの部分は、「FR」「ミッドシップ」「電動トップ」など付け加えられる格好だ。

フィアット・バルケッタ(1995年)MX-5のフォロワーだが、バルケッタはFFだった。
  • フィアット・バルケッタ(1995年)
  • MG-F(1995年)
  • BMW Z3(1996年)
  • メルセデス・ベンツSLK(1996年)
    といったMX-5のフォロワーが続々と登場していたのだ。

直列5気筒VTECを積む予定だった?

Honda SSM 長いフロントボンネットの下には2.0L直列5気筒エンジンを搭載する

そこで、1995年の東京モーターショーである。

ホンダが発表したのは、SSM。「SSM」とは、Sports Study Modelの頭文字から来ている。
SSMはどんな成り立ちのコンセプトカーだったか?

SSMのリヤビュー。オープンモデルだが、幌はなし。前後のダブルウィッシュボーンサスペンションもNSXから流用されたという。
この角度から見るとSSMがS2000のデザインの元になっているのがよくわかる。

アルミとCFRPのコンポジットフレームに200ps以上という2.0L直列5気筒DOHC VTECユニットを搭載。5速ATを介して後輪を駆動する。

エンジンは、1989年発表のアコード・インスパイア/ビガー用に開発された直列5気筒SOHCエンジンのG20A型をベースにDOHC VTEC化して200ps以上にするというのが想定していたスペックだろう。

アコード・インスパイア/ビガーが搭載したG20A型2.0L直列5気筒OHC。2.5LのG25A型もあった。
アコード・インスパイア/ビガーは直5エンジンをフロントに縦置きした。

そもそもアコード・インスパイア/ビガーはフロントに直5エンジンを縦置きし前輪を駆動するという、極めてユニークなパワートレーンを持っていた。この縦置きFWD用だったトランスアクスルをベースに、トランスミッションからプロペラシャフトを伸ばしてRWD化したと思われる。

1995年のカースタイリング誌のなかで、SSMのエグゼクティブ・チーフデザイナーの中野正人氏は「我々はNSXをつくったけれど、なかなか自分では買えない。今度は自分たち自身が買えるスポーツカーをつくりたいと考えた」と述べている。ちなみに、市販化したあかつきには、個人的な希望として「諸経費込みで250万円」にしたい、とも。

ドライバーの動作、視線の移動を最小限にとどめてドライビングに集中できるコックピット。シートは炭素繊維風の模様があった。

SSMのスペックは
全長×全幅×全高:3985mm×1695mm×1150mm
ホイールベース:2400mm
サスペンション:F&R ダブルウィッシュボーン式
エンジン:G20A型2.0L直列5気筒DOHC VTEC
トランスミッション:5速AT

SSMは、どこまでS2000になったのか

Honda S2000
Honda SSM

そして、1999年である。SSMはHonda S2000として量産化された。

当時のプレス資料には、こうある。

「エクステリアデザインは、’95年の東京モーターショーに出品した、SSM(スポーツ・スタディ・モデル)のスポーツカーの機能美として重要なプロポーション、スタンスを継承し、さらなるリアルスポーツカーへの昇華をめざしました。
エクステリアの開発にあたっては、デザインチームもテスターとして欧州の走行テストに参加。強い主張のある欧州各国の街並みを背景に実地検証を行いながら、存在感のあるS2000独自のデザインを追求しました。 また、視界や空力などの機能面も、走行テストに参加することで、より高度に追求。デザイン性と機能性の高レベルでの融合をめざしました」

S2000 全長×全幅×全高:4135mm×1750mm×1285mm ホイールベース:2400mm

S2000のスペックは
全長×全幅×全高:4135mm×1750mm×1285mm
ホイールベース:2400mm
トレッド:F1470mm/R1510mm
サスペンション:F&R ダブルウィッシュボーン式
エンジン:F20C型2.0L直列4気筒DOHC VTEC
トランスミッション:6MT

市販化されたS2000は幌を上げてもスタイリッシュだった。
オープン時はこうなる。
デタッチャブルハードトップの設定もあった。

エンジンはG20型直5エンジンから、F20C型2.0L直4DOHC VTECへ進化しており、パワースペックも最高出力250ps(最大トルク217.7Nm)とSSMで想定していた200psを楽々超えていた。その代わり、ボディサイズも大柄になっていて、ライトウェイトスポーツカーというより、本格FRスポーツとやや性格を変えていた。

SSMでは幌は存在しなかったが、市販版であるS2000ではソフトトップに加え、ハードトップも用意された。

S2000は、2009年まで生産され、累計11万台以上が販売された。S2000以降、ホンダからFRスポーツは登場していない。

S2000のパッケージング

1995年のSSM登場時に、「市販されるときは諸経費込みで250万円」というチーフデザイナー氏の想いだが、1999年に市販化された時の車両価格は338万円であった。ホンダが作るスポーツカーとなると、やはり(価格も性能も)軽くはつくれなかったということである。

Honda SSM

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