Lotus Emira First Edition
Porsche 718 Boxster Style Edition
Alpine A110 GTS

いまだ一級品のステアフィールを披露する718ボクスター

ダイレクトなステアフィールが魅力のロータス・エミーラに対し、ポルシェ718ボクスターは路面に吸い付くような濃厚なステアフィールを魅せる。
ダイレクトなステアフィールが魅力のロータス・エミーラに対し、ポルシェ718ボクスターは路面に吸い付くような濃厚なステアフィールを魅せる。

アストンやジャガー、ベントレーなどの骨太スーパースポーツの一方で、英国にはMGやオースチンヒーレー、トライアンフなど、小型軽量スポーツカーの伝統もある。そうしたクルマを裏庭のような小さなスペースから世に出したバックヤードビルダーや、税金の安い半完成キットカーも英国クルマ文化を象徴する。バックヤードビルダーから身を興して、キットカーのセブンなどで名を成したロータスは“英国的なるもの”をほぼ完ぺきに兼ね備えた存在といえるかもしれない。そんなロータスの最新作にして、最後のエンジンを搭載したロータスになる予定なのが「エミーラ」である。

エミーラは1966年の初代「ヨーロッパ」からの系譜に連なるミッドシップスポーツである。以前のロータスには、「エリーゼ」「エキシージ」という超軽量スパルタンスポーツと、上質なミドルクラスの「エヴォーラ」の2系統があり、エミーラはそれらの統合後継機種ではあるが、どちらかというとエヴォーラの系統に近い。内装にはほぼ全面にレザーがあしらわれて、エアコンに電動シート、パワステ、最新のインフォテインメントシステムも備える。エヴォーラ同様のV6エンジンも用意されるが、本命は軽量かつパワフルなAMG製2.0リッター4気筒ターボで、今回のエミーラもそのAMGエンジン車だった。

ランニングシャシーにガラス繊維強化樹脂=FRPの上屋を被せるボディ構造は、今も昔もロータスの代名詞だ。「エスプリ」や初代エリーゼまで自家製ハンドプライFRPだったボディ外板は、ガラス繊維を含浸させた金型成形パネルがサプライヤーから供給されるようになった。

軽快感で勝るアルピーヌ A110 GTS

オールアルミボディのアルピーヌA110はボクスターより接地感は薄いものの、とにかく軽快である。
オールアルミボディのアルピーヌA110はボクスターより接地感は薄いものの、とにかく軽快である。

そのエミーラが想定する世界のミドルスポーツ市場で君臨してきたのが、ポルシェの「718ボクスター/ケイマン」だ。同車は販売台数も圧倒的で、例えばエリーゼ/エキシージ、エヴォーラ時代のロータスの生産台数が合計で年間1500台程度、今回連れ出したもう1台の「アルピーヌA110」のそれが年間平均3500台ほどなのに対して、ボクスターとケイマンは、年間2万台以上がコンスタントに生産されてきたのだ。

ミッドシップであることはもちろん、ボディサイズや価格、動力性能にいたるまで、エミーラのあらゆるスペックが、不動の横綱である718ボクスター/ケイマンを強く意識しているのは明白である。どちらも2.0リッター4気筒ターボを搭載するのもそうだし、エミーラとしては標準的な今回のファーストエディションで0-100km/h加速は4.4秒。これはスポーツクロノパッケージを備えた素の718より0.3秒速い。

ドライビングに集中できるエミーラのコクピット

エミーラは走りもまさにロータスそのものにして、ミッドシップのお手本でもある。四輪ダブルウィッシュボーンサスペンションに可変デバイスの類は皆無だが、少なくともドライ路面なら、AMGエンジンを遠慮なく解放してもリヤはほぼ揺るがない。ステアリングはアシストがついているはずも、据え切りでは重く、速度が増すほど軽くなるところは、あのエリーゼやエキシージと同様のノンパワーと錯覚しそうになる。とにかくリヤの安定性が盤石なので、タイトでダイレクトなステアリングで振り回しても怖さがない。430Nmという怪力を余裕で受け止めるアナログシャシーのポテンシャルは、さすがロータスというほかない。

今回のポルシェは素の718ボクスターなので、同じ2.0リッターターボでもエミーラほどパワフルではないが、水平対向エンジンならではの金属的なサウンドにまずはグッとくる。ただ、それ以上に、ステアリングフィールの意外なほどの違いに驚く。エミーラにダイレクト感では譲るかわりに、路面に吸いつくような接地感があからさま濃厚になるからだ。

質感の高い718ボクスターのインテリア

718ボクスター/ケイマンには可変ダンパーの用意もあるが、今回の「スタイルエディション」は、エミーラ同様の固定減衰ダンパーである。それもあって、足自体の滑らかさはロータスとポルシェで拮抗している。ただ、クローズドクーペとオープンロードスターというボディ形式の違いを差し引いても、クルマ全体にしなやかさを感じるのはボクスターだ。これはおそらく、ポルシェのボディが随所にアルミを使いつつも、体幹部分には伝統的なスチールを使っているからだろう。スチールはアルミより量産性が高いだけでなく減衰性も高い。だからアルミよりスチールのボディの方が、クルマの動きにしっとりした感覚を加わる。

エミーラや718ボクスターとこと比較すると、オールアルミボディのアルピーヌはボクスターより接地感は薄いが、とにかく軽快だ。A110のボディはひと回りコンパクトで、車重は圧倒的に軽い。車検証重量でいうと、今回のA110GTSはエミーラより340kg、718ボクスターより280kgも軽いのだ。唯一排気量が1.8リッターとなるエンジン性能もロータスやポルシェより少し落ちるが、それを補ってあまりある軽さのおかげで、パワーウエイトレシオとトルクウエイトレシオはアルピーヌがトップ。0-100km/h加速も4秒を切る3.9秒だ。

快適性と上質性を兼ね備えたA110 GTSのコクピット

さらに、アルピーヌは絶対的に軽いだけでなく、前後グリップバランスでも意外なほど尻軽なのが興味深い。スピンモード時は神経質になりやすいミッドシップは、エミーラのようにどっしりと根が生えたようなリヤグリップを最優先で確保するのが定石だが、アルピーヌのように絶対的に軽ければ、尻軽でも筆者のようなアマチュアもなんとか手に負えそうな気持ちになれる。実際、車検証によると「A110 GTS」の前後重量配分は43対57とミッドシップとしては良好だ(エミーラのそれは39対61)。ちなみに今回の718ボクスターの重量配分はさらに前後イーブンに近い45対55となるが、アルピーヌより車重が重く、よりハイパワーモデルの用意もあるからか、アルピーヌよりはリヤの安定感が強いが、それでもエミーラよりは軽快に曲がる。

乗り味の軽快さでいえば、ひとりクラス違い感もあるアルピーヌだが、オプションなども含めた今回の試乗個体では、3台の価格は1400万円台〜1600万円台に収まる。商品としてはガチンコに意識しあっているわけだ。そんな中でエミーラの、舗装のツブツブまでがドライバーの手やお尻に伝わってくるダイレクト感は、いかにも英国ライトウエイトなロータスの伝統というほかない。

純内燃ミッドシップを買うなら今!

すでに生産を終了した718ボクスター。6月に生産を終える予定のアルピーヌA110。ロータス最後の内燃機モデルとなるエミーラ。純内燃ミッドシップを買うなら今しかない。
すでに生産を終了した718ボクスター。6月に生産を終える予定のアルピーヌA110。ロータス最後の内燃機モデルとなるエミーラ。純内燃ミッドシップを買うなら今しかない。

ところで、エミーラが最後のエンジン搭載ロータスの予定であることは冒頭記したとおりだが、718ボクスター/ケイマンはすでに生産を終了、A110もこの6月に生産を終える予定だ。そして、718ボクスター/ケイマンもA110も、現時点ではロータス同様に次期モデル以降はBEVになると宣言している。

ただ、近年のBEV普及速度の鈍化を受けて、ポルシェやアルピーヌの次期ミドルスポーツカーが予定どおり完全BEV化されるか……は少し不透明になっている。ただ、ポルシェやアルピーヌがあらためてエンジンを積んだ新型ミッドシップを開発するにしても、それ相応の時間がかかるのは確実。少なくとも、その間このクラスはエミーラがひとり勝ち……という可能性もある。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2026年6月号

SPECIFICATIONS

ロータス エミーラ ファーストエディション

ボディサイズ:全長4413 全幅1895 全高1226mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1405kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1991cc
最高出力:269kW(365PS)/7200rpm
最大トルク:430Nm(43.8kgm)/3000-5500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 後295/30R20
車両本体価格:1661万円

アルピーヌ A110 GTS

ボディサイズ:全長4205 全幅1800 全高1250mm
ホイールベース:2420mm
車両重量:1120kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1798cc
最高出力:221kW(300PS)/6300rpm
最大トルク:340Nm(34.6kgm)/2400rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前215/40R18 後245/40R18
車両本体価格:1200万円

ポルシェ 718 ボクスター スタイルエディション

ボディサイズ:全長4379 全幅1801 全高1281mm
ホイールベース:2475mm
車両重量:1440kg
エンジンタイプ:水平対向4気筒ターボ
総排気量:1988cc
最高出力:220kW(300PS)/6500rpm
最大トルク:380Nm(39.8kgm)/2150-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前235/35ZR20 後265/35ZR20
車両本体価格:1029万円

【問い合わせ】
ロータスコール
TEL 0120-371-222
https://www.lotus-cars.jp

ALPINA CALL
TEL 0120-866-250
https://www.alpina.co.jp/

ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-91
https://www.porsche.com/japan/

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