日本発売は6月頃、2.5L HEVの「350h」、フロント1モーターBEVの「350e」、前後2モーターの「500e」を導入

世界に冠たるプレミアムブランドを目指し、1989年に北米市場に打って出た、そのレクサスの歴史を当初から支え続けてきたのがアッパーミドルセダンのESだ。圧倒的完成度をもって初代から強力な存在感を示すこととなったフラッグシップのLSに対して、ESはサイズも価格もひと回り馴染みやすく、数的な面でもブランドの動力源として黎明期を支えた。

その後、レクサスはRXで他銘柄に先んじて金脈を掘り当て、プレミアムSUVという現在の中軸たるカテゴリーのパイオニアとなったわけだが、そんな時期もコツコツとESはレクサスらしい移動の時を多くのユーザーに届け続けている。

2025年5月、上海モーターショーの場で世界初公開された新型レクサスES。1989年に初代が登場し、今回は8代目となる。日本での発売は6月頃が予定されている。写真はBEVの「500e」。

そして現在、お察しの通りセダンのマーケットは世界的にドン冷えの状況だ。主軸は完全にSUVにとって代わられ、セダンをラインナップすること自体がなんかズレてるようにさえ感じられなくもない。なにより最大市場である北米のローカルブランドが擁するセダンは思い浮かべるのも難しいほどだ。そんな状況ゆえ、レクサスの販売構成もRXが絶対的エースとなって久しい。一方でLSの名は6輪ミニバンのコンセプトカーに与えられるなど、あり方の模索は形態そのものに及んでいるかのようだ。

そんな折にESを継続するという判断は、ルーティンというよりもレクサスの意思とみるべきなのかもしれない。静的にはともあれ動的にみればセダンはクルマの基本という作り手の見識もあるのだろう。かといって、変革をひたすら拒む姿勢では時流に取り残されてしまう。8代目となる新型ESは、そんなこんなの攻守の思惑がかつてなく表れた1台といえるだろう。

ボディサイズは全長5140mm(先代比+165mm)×全幅1920mm(同+55m)×全高1555〜1560mm(同+10〜15mm)、ホイールベース2950mm(同+80mm)。サイズが大幅に拡大されたのは、床下にバッテリーを搭載する都合上、ボディが背高にならざるを得ず、それを感じさせないようなプロポーションを実現するためでもある。

新しいESの最大の変化は、ラインナップにBEVを組み込んだ上で、パワートレインの完全電動化を果たしたことだ。バリエーションは2.0L HEVの300h、2.5L HEVの350h、フロント1モーターBEVの350e、前後2モーターの500eの4つとなる。このうち、日本仕様は350h、350e、500eの3つが導入予定だ。先進国のみならず、世界80カ国以上で販売されるレクサスにとっての基幹車種だとみれば、その決断はなかなか重たいものを感じる。

とはいえ、多くの人にとって、もっとも変化を感じるのは内外装のデザインだろう。グリルではなく塊そのものでスピンドルを表現しようというコンセプトは現行RX辺りから示されてきたが、ESでは顔周りだけではなく前後セクションの絞り込みや特色あるプレスなども用いながらメリハリのあるシェイプを形作っている。

電動化が進む中、グリル=冷却開口部の造形に頼るのではなく、塊でブランドの個性を表現する。そうした新世代のスピンドルボディを体現したモデルが新型ESだ。撮影車両が纏うのは新色の「SOU(蒼)」。ブルーエフェクトがハイライトに現れるソリッドライクカラー。

どうも写真映りが悪いみたいで…と開発陣は苦笑するが、現物を目にするとボンネットのテクスチャーやBピラーを芯としたウエストマークなど、確かに平面では現れにくいところにアクセントがあることがみてとれる。BEV兼用の構造ということで床板が高くなるぶんキャビンも厚くなり…というのは、今や世の自動車デザイナーに共通する悩みだろう。薄くみせる対策として側面下方をブラックアウトするのは常套だが、新しいESは前後ドアに跨る大胆なグラフィックで、個性を表現しながら同様の視覚効果を狙うという新しい手法にも挑戦しているようだ。

車高を低く見せるため、ボディサイドにモールを配置。モールが後端に向かって下がる動きと、リヤウインドウが最後に跳ね上がる動きとを組み合わせることで、クルマ全体がひとつの動的な塊として感じられるようにしている。

対して、内装は至極シンプルにまとめられている。基本造形は水平と垂直にかっちりと区切られてシンメトリカルに纏められながら、その水平線にあたるオーナメント下部には、空調等の頻用するスイッチを隠すように配置、押し込みのストロークを物理的に採ることで操作実感をしっかり伝えるものになっている。オーナメント部には広範に間接光のイルミネーションが配されるが、その配光や光量、動きなどはレクサスらしい落ち着きに配慮されたものだった。

すっきりとした水平基調のインストゥルメントパネル。中央のディスプレイは14インチの大型サイズ。
ドライバー前には12.3インチの異形液晶メーターを配置。
ドアトリムには透過技術を採り入れた面発光加飾をあしらい、室内を艶やかに彩る。
空調などの操作は「レスポンシブヒドゥンスイッチ」で行なう。手をかざすとアイコンが点灯するすっきりした見た目だが、物理スイッチならではのしっかりとした押し応えもある。

プラットフォームはトヨタでDセグメント以上を主に担うGA−Kを大幅に改変し、BEV化への要求も担えるものとなっている。搭載バッテリー容量は74.7kWhとなり、航続距離は1モーターの350eで650km、2モーターの500eで600kmとされるが、日本のWLTCモード値ではもうひと伸び狙えるのではないかということだった。BEV版ESのハードウェアや性能数値は先出のRZにほぼ準拠しているが、何せ車格が限りなくLS級に近いところになったこともあって、重量は150kg程度重い。そのぶん、0.25程度に抑えたCd値など空力性能なども積み重ねて航続距離を伸ばしている。

BEV ではFWD モデルのES350eと、AWD モデルのES500eを設定。フロントフード下は、ご覧のとおり、全面がカバーで覆われている。

HEV版の方は前型と同じく2.5L 4気筒のA25A-FXS型を軸としたいわゆるTHSだが、PCUにSiC素子を用いて根本的な損失低減を図るなどシステム側でも省電力化を果たした最新世代(トヨタ曰く第6世代)のTHSをHEVとしては日本初採用、バッテリーも出し入れ性能の高いリチウムイオンとすることでモーターの稼働域を広げている。加えてエンジン側もウイークポイントだった音振の対策を講じるなどアップデートを果たし、同等のパワートレインを用いるアルヴェルやRAV4などに先んじて商品陸も向上させた。

こちらはハイブリッドの350h。フロントバンパー上部に設けられたエアインテークがBEVと見分けるポイント。
第6世代ハイブリッドシステムは、従来別体だった走行用と発電用のふたつのモーターとインバーター、トランスアクスル、PCUをひとつのユニットに統合。これにより出力を12%向上しつつ、高さを15%、重量を18%低減した。

後席の居心地は最良レベル。LSからの代替えでも満足できるはず

かようなパワートレインで構成される新型ESの走りは、意思をもってサルーンの王道を突き進んでいる印象を受けた。その最たるところは曲がって云々以前の、走ると止まるの域に、欲をかいた着色的な要素がまったく感じられないところにある。

HEVにせよBEVにせよ、特性的に電動化の恩恵というのは初手からトルクがドンと立ち上がるその剛腕ぶりをユーザーにわかりやすく体感させることにあるわけだが、新型ESはそういった安易な策に走っていない。2モーターの500eであってもその躾は至ってジェントルで、アクセル操作にまったく気遣うことなく、そして乗員の身体を揺することなくじんわりと速度を足し引きできる。

BEVの350eはフロントに最高出力167kWのモーターを搭載。500eはそれに加えて、リヤに同88kWのモーターも積んだAWDとなる。

まったく遅いわけではない。その踏み加減ひとつで即座に思い描いた速度域にもっていく余力はどのグレードでも備えている。でも、それを必要以上にひけらかさない。そういうところがESというクルマの趣旨ときっちりシンクロしている。

運動性能的な面も神経を逆撫でられるようなところはまったくない。操舵を即座に旋回化するほどの敏感さがおそらくあえて丸められているのは、セダンならではの重心の優位も巧く利用しているからだろう。大きな入力もドスッと一撃で収束させながらスラスラとコーナーをクリアしていくサマはスポーツセダンとまではいわずとも、充分にスポーティだという絶妙の落としどころを狙ったように感じられる。

サスペンション形式はフロントがストラット式、リヤがマルチリンク式(先代はダブルウイッシュボーン式)。後輪が車速に応じて前輪と逆相/同相に転舵するDRSも採用する。
アルミホイールはグレードに応じて、19インチと21インチを用意。写真は500eにオプション設定の21インチ+エアロカバー付き。

全高がしっかり採られていることもあって、後席にいても天地に窮屈な印象はない。足先は前席下にギリギリ入るか否かという感じだが、足元スペースそのものが広大なこともあって、乗せられての心地よさは最良の部類といえるだろう。加えてリアコンフォートに寄せたパッケージを選べば、エアチャンバーによるマッサージ機能を加えたオットマン付きリクライニングシートを選ぶことも出来る。仮にLSからの代替という話になっても、その任は任せられるだろう。

新開発のフロントシートは肩甲骨を支える構造を採用し、ステアリング操作時の筋負担を軽減する。助手席にはオットマンが備わるなど、おもてなし装備にも抜かりなし。内装色は写真のブラックのほか4色が揃う。
ホイールベース延長の恩恵は後席の居住性にも現れている。リヤシートにはマッサージ機能、リクライニング、オットマンが備わり、さらには助手席を前倒しして広がり感のある視界を提供することも可能だ。

同門に数多あるミニバンへの対抗意識というよりも、セダンだから出来ることをしっかり伸ばしてきた。そういう、数字には表れない実直な性能を突き詰めているところが新型ESの最大の美点といえるそうだ。

車種レクサス ES500e(AWD) ※海外仕様
全長5140mm
全幅1920mm
全高1560mm
ホイールベース2950mm
車両重量2205〜2285kg
駆動方式AWD(DIRECT4)
Fモーター種類交流同期電動機(永久磁石式)
Fモーター最高出力167kW(227PS)
Fモーター最大トルク268Nm
Rモーター種類交流同期電動機(永久磁石式)
Rモーター最高出力88kW(120PS)
Rモーター最大トルク170Nm
システム最高出力252kW(342.6PS)
加速(0-100km/h)5.9秒
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー総電圧391V
バッテリー総電力量74.7kWh
航続距離(CLTCモード)約610km
急速充電(150kW、10〜80%)約30分(外気温25度)
サスペンション前:マクファーソンストラット式 後:マルチリンク式
タイヤサイズ235/55R19(235/45R21も設定あり)
Cd値0.25
価格未発表(6月頃日本発売予定)