M8（F92）
久々の8シリーズをベースとして
「6シリーズ」の後継として、久々に「8シリーズ」を名乗るG15型「8シリーズ クーペ」が発表されたのは、ル・マン24時間の決勝を翌日に控えた2018年6月15日のこと。そのベースとなったのは、2017年のヴィラデステ・コンコルソ・デレガンツァでお披露目された「コンセプト8シリーズ クーペ」だった。
シャシーは、スチール、アルミニウム、カーボンファイバーで構成されたFR/AWD用モジュラープラットフォームCLAR LGで、G32型「6シリーズ」のCLAR LKプラットフォームの流れを汲むものだ。サスペンションはフロントダブルウイッシュボーン、リヤマルチリンクで、ダンパーと電子制御アクティブスタビライザーを備えたアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルが組み合わされる。
市販車の発表前に、レーシングバージョンの「M8 GTE」が2018年シーズンのIMSAとル・マン24時間に出場するという変則的なスケジュールであったが、8シリーズをベースとした「M8」がデビューするのは、それからさらに1年が過ぎた2019年6月になってからだ。
強力な4.4リッターV8ツインターボを搭載
ボディタイプはクーペ（F92型）、コンバーチブル（F91型）の2種類。パワートレインは基本的にF90型「M5」と同じで、最高出力600PS/6000rpm、最大トルク750Nm/1800〜5600rpmを発生する4.4リッターV8DOHCツインターボ“S63型”ユニットと、ZF製8速トルコンAT 8HP76型“Mステップトロニック”を搭載。駆動方式は後輪駆動をメインとしながらも、トルクを無段階かつ可変的に配分する4WD“M xDrive”が採用されている。
またエンジン、ステアリング、サスペンションなどレスポンス、特性をドライバーが変更できるほか、非バキューム式のブレーキブースターによって2kgの軽量化と、あらゆる状況下で高い制動力、コントロール性を発揮するM専用インテグレーテッドブレーキシステムを搭載しているのも特徴である。
また4.4リッターV8の最高出力を625PSにアップし、ブラックアウトしたキドニーグリル、エンブレム、ドアミラー、リヤスポイラーなどを装備した「M8コンペティション」もクーペ、コンバーチブルに用意。0-100km/h加速はM8クーペ、M8クーペ・コンペティションともに3.2秒だが、0-200km/h加速に関しては、M8クーペの10.8秒に対し、M8クーペ・コンペティションは10.6秒を記録。また通常は紳士協定により最高速度250km/hでリミッターが当たるようになっているが、オプションのMドライバーズパッケージを装着すると、305km/hにまで引き上げられるようになっている。
4ドアバージョンも登場
そして2019年10月には4ドアバージョンとなるF93型「M8グランクーペ」を追加している。その内容は600PS／750Nmの4.4リッターV8ツインターボ、8速Mステップトロニック（AT）、4WDシステムの“M xDrive”など、基本的にクーペ、コンバーチブルと同じで、625PSのコンペティションが用意されるのも同様である。しかしながら全長5150mm、全幅1945mm、全高1420mm、車重2000kgという体躯にもかかわらず、0-100km/h加速は3.2秒とクーペと同じパフォーマンスを誇る。
2022年に8シリーズ クーペ、カブリオレ、グランクーペのマイナーチェンジが施されると同時に、M8も照明付きのキドニーグリル、アダプティブLEDヘッドライト、新デザインのフロントバンパー、そしてインフォテイメント・システムを刷新した新型へマイナーチェンジした。その後、2024年6月に8シリーズが生産を終了したのを受け、M8の生産も終了している。
