ガラパゴスと言われてあまり好まれていない様子のCVTというトランスミッション。その理由のひとつが「ラバーバンドフィール」と言われる変速制御である。
こちらのエントリにも示されているとおり、日本においてCVTの比率は非常に高く、わが国の自動車の特質のひとつとして挙げられる。無段変速機と日本語で称するCVTは、エンジンにいちばん効率がいい運転領域で運転させたまま、自身の変速比を連続可変することで、結果として発揮出力を自在にコントロールできる。

(FIGURE:NISSAN)
日産が2006年に発表した上のグラフで、CVTのメリットが端的に示されている。そもそも変速機という装置自体が、本来は「エンジンに一番効率がいい運転領域で運転させたまま」にすることを目的としているものである。遊星歯車を用いるステップATの多段化は、下のグラフで示す「のこぎりの歯」の幅を狭くしてなるべくエンジン高効率エリアから回転数が外れないようにするためのもの。言ってみればCVTは究極の変速機と考えられる。 ただし、ドライバーにとっては究極ではなかった。顕著だったのは巡行から急加速するようなシーン。アクセルペダルを踏み増すとエンジン回転だけが上昇するも加速がついてこず、時間をおいてから速度がのってくるという現象が起きる。これが北米市場で「ラバーバンドフィール」と呼ばれた。

(FIGURE:NISSAN)
このとき、何が起きているか。 低回転低負荷低出力状態で巡行 → フル加速する ▶︎ ペダルを踏む:現状の回転数と変速比では加速トルクが得られないので—— ▷ まず、エンジンが最高出力を発揮する回転数に達するように、CVTの変速比をロー側に変速する ▷ エンジンの回転数は最高出力発揮点に保持したまま、変速比を徐々にハイ側に変速していく この、「エンジン回転数だけが上がるのに速度が高まらない、しばらくしたら加速する」というのが嫌われる。翻って、同じシーンでATやMTを眺めてみると、 低回転低負荷低出力状態で巡行 → フル加速する ▶︎ ペダルを踏む:現状の回転数と変速比では加速トルクが得られないので—— ▷ まず、変速比をロー側に変速し、エンジンが最高出力を発揮する回転数に達するように高めていく ▷ エンジンが回転上限に達したら次の段数にシフトする という具合に、「まずエンジン」なのか「まず変速機」なのかに違いがある。CVTの場合でも、これが低回転から大トルクを発揮できるエンジンだとすると、変速比はそのまま(あるいは少し落とした程度)、エンジン回転を上げていき加速フェーズに入ることができるのはご想像のとおりだ。

(PHOTO:NISSAN)
エンジンを燃費最適点あるいは最高出力発揮回転の定点で動かし——という言い回しで、何か想起されないだろうか。ハイブリッドパワートレインの運転方法である。とくに日産のe-POWERに代表されるシリーズ式ではエンジンは発電機としてのみ使い、駆動には用いないため、その傾向が顕著だ。e-POWER車を運転したときに「エンジンの回転数変動と加速感が不一致で気持ち悪い」という感想はメジャーではないのは、加速要求に対してモーターが瞬時に出力を発揮してくれる特性が七難隠すという状態にあるためと思われる。 モーターファン・イラストレーテッド173号では、そんなCVTについて、ラバーバンドフィールの是非やそれを目立たせないための制御や設計、識者による最新ユニット搭載車のインプレッションと構造解説、さらには連続可変変速という美点のみを際立たせるための次世代提案など、CVTの新しいステージに向けた各種考察を試みた。

モーターファン・イラストレーテッドvol.173 巻頭特集:CVTの逆襲 Introduction:「CVTプラス電気モーター」は「あり」か? 現状分析:CVTはガラパゴスなのか? BASIC:よくわかるCVT 構造と各部の役割 APPLICATION:最新CVT詳細 注目のユニットを変速機のエキスパートが試乗、分析 FUTURE TECH:電動技術との組み合わせがもたらす新たな可能性
