40台の中から選ばれた、オーナー秘蔵のノーマルDio

ディオは1988年に初代が登場し、1990年登場のスーパーディオまでが縦型2スト時代。1994年登場のライブディオでは横型エンジンへと移行し、2001年のスマートディオでは水冷4スト化によって環境性能を重視したモデルへと進化。その後も空冷4ストやFI化を経て、50ccモデルは2016年に終売。現在では110ccモデルのディオ110がDNAを受け継いでいる。

ディオの車名を受け継ぐ「ディオ110ベーシック」空冷4スト110ccエンジンを搭載し、ホイール径は歴代モデルの10インチに対して14インチと大径。そのぶん走破性も高くハンドリングも軽快だ。最高出力は8.7psを発揮し96kgのボディをグイグイと加速させる。※数値などのスペックは2026年6月現在

今回お邪魔したオーナーのペコさんが守り続けるディオたちは、単なる古いスクーターではない。通勤や通学、街乗りの足として多くの人に愛された時代の記憶そのものだ。だからこそ、ノーマルの姿で大切に残された1台1台には、数字やスペックだけでは語れない価値がある。
そして人気モデルだっただけにバリエーションは実に豊富。フロントディスクブレーキを採用したSRやZX、限定カラーや特別仕様車も用意されていた。

40台ものディオが並ぶ姿はもちろん圧巻だが、本当に驚かされるのは、部品取り車を除けばそのほとんどが実動車だということ。旧車を「飾る」のではなく、「いつでも走れる状態で残す」。その積み重ねこそが、ペコさんのコレクションを特別なものにしている。だからこのガレージは、単なる保管場所ではなく、80〜90年代のディオ文化を未来へつなぐ生きたミュージアムなのだ。これから登場する4台は、ディオの歴史を伝える貴重な存在である。

AF18|海外でも人気急上昇! アーバングリーンは今や争奪戦

鮮やかなアーバングリーンが目を引くAF18。国内でも希少なカラーだが、特にタイのディオマニアから高い人気を誇るという。
OWNER:ペコさん

大ヒットモデルとなった初代AF18の中でも、タイのディオマニアから圧倒的な人気を集めているというのが、このアーバングリーン仕様だ。当時から個性的なカラーだったが、30年以上が経った今ではさらに希少な存在に。国内だけでなく海外からの引き合いも強く、このカラーリングだけは異常な高値を呼ぶこともあるらしい。

AF18はメットインスクーターとしての使い勝手も優秀で、深さのある容量24Lのスペースにはフルフェイスヘルメットも収納可能。フロントにはテレスコピックサスペンションを装備し、89年式では最高出力が0.4psもアップしている(88年式:6.4ps・89年式:6.8ps)。派手なスポーツモデルではないが、実用性、デザイン、軽快な走りが高次元でまとまっていたからこそ、ディオは多くのユーザーに愛されたのである。

・フロントの足周りは、テレスコピックサスペンション+ドラムブレーキの組み合わせ。 ・シート下収納スペースは容量24L。深さもありフルフェイスヘルメットの収納も可能。日常の足として使いやすかったことも人気の理由だ。 ・89年式では最高出力も6.8psにアップし、走りの面でも進化していく。ちなみにマフラーは、楕円形状が88年式で89年式では丸型に。 

AF25 SR|ロスホワイトのスペシャルエディションは一番のお気に入り

OWNER:ペコさん

シリーズ初のスポーツバージョンとして登場したのが、型式AF18のディオSRだ。フロントにディスクブレーキを採用し、前後タイヤはチューブレス化。スタンダードなAF18に対して、よりスポーティな装備をまとったSRは、初代ディオの中でも特別な存在だった。
なかでもペコさん自身が「数ある所有車の中でも一番のお気に入り!」と語るのが、このロスホワイトのスペシャルエディション。30年以上が経過したとは思えないほど美しい外装を保っており、色褪せの少ないメーターパネルや、状態の良い各部パーツからも大切に保管されてきたことが伝わる。速さや希少性だけでなく、純正の美しさを味わう。これこそノーマルディオを集めるおもしろさなのだ。

・フロントディスクブレーキを装備し、制動フィールも向上。SRらしいスポーティな装備が魅力。 ・古さを感じさせないポップなデザインのメーターパネル。褪色も少なく、保管状態の良さが伝わってくる。 ・リヤショックもグレードアップ。スタンダードモデルとは違う、スポーツバージョンならではのこだわりが見える。

2ストディオのエンジンは“縦型”から“横型”へ進化した

ここで少し、ディオの歴史を整理しておこう。50ccのディオは1988年に初代が登場。初代AF18/AF25、そして1990年登場のスーパーディオAF27/AF28(二代目)までは、通称“縦型”と呼ばれる空冷2ストロークエンジンを搭載していた。シリンダーが直立したレイアウトで、この縦型エンジン時代のディオに強い思い入れを持つファンは今も多い。

1994年には三代目となるライブディオが登場し、エンジンは“横型”へと変更。ZXでは最高出力7.2psを誇り、50ccスクーターのハイパワー競争はこの頃にピークを迎える。その後、2001年登場のスマートディオでは水冷4スト化され、環境性能や燃費を重視したモデルへと進化。かつて街中で当たり前のように走っていたディオは、時代の要請に合わせて姿を変えながら、長く愛されるシリーズとなっていった。

第1〜第2世代のディオに搭載された“縦型”2ストエンジン。ペコさんが特に惹かれているのも、この時代のディオだ。※画像はオーナー所有のエンジン

第三世代ライブディオでは“横型”エンジンへ変更。ZXでは7.2psを誇り、50ccスクーターのハイパワー競争もピークを迎えた。※画像はオーナー所有のエンジン

AF27 特別仕様|派手なZXの影に隠れた、通好みのカラーリング

OWNER:ペコさん

派手なZXの影に隠れてしまった感もあるが、さりげなくナイスなカラーリングがAF27特別仕様のシルバーパープルメタリックだ。「Special」を謳った特別仕様で、ステッカーには「CITY MOVEMENT」の文字。意味は少し分かりにくいが、そういうところも含めて当時らしい味わいがある。ホイールリムもボディ同色でまとめられており、静かにオシャレ。目立ちすぎないのに、よく見ると手が込んでいるあたりが実に通好みである。
ディオといえばZXやSRのスポーティなイメージが強いが、こうした落ち着いた特別仕様にも独自の魅力がある。ペコさんが特別仕様車に惹かれる理由がよく分かる1台だ。

「Special」を謳う特別仕様。ステッカーに入る「CITY MOVEMENT」の意味不明さも、今見ると味わい深い。

AF28 ZX|7.0psを誇ったスーパーディオ最強スポーツモデル

OWNER:ペコさん

当時、ディオ史上最高出力となる7.0psを発揮する新エンジンを搭載したのが、AF28ことスーパーディオZXだ。外装をはじめ、リヤスポイラーなどスペシャルな装備が満載され、90年代スクーターのスポーツグレードを象徴する存在だった。

「ZX」という響きに反応してしまう人は、きっと少なくないはず。原付スクーターでありながら、見た目も走りも“速そう”だった時代。そんな空気をまとったAF28 ZXは、ディオシリーズの中でも特に濃いファンを持つモデルだ。ペコさんのコレクションにこの1台があることで、ディオの実用モデルとしての顔だけでなく、スポーツスクーターとしての魅力もしっかり伝わってくる。

・イエローレンズがZXの証。 ・グリス式ながらしっかりとした乗り味のZX。ディスクブレーキは当時の若者たちの憧れでもあった。

豆知識:2スト時代のDioミニヒストリー

AF18/AF25(1988~)

多くの派生モデルを生んだ大人気スクータ
ー・ディオの元祖が、第一世代のディオ
AF18/25。「18」がスタンダードモデル
で、「25」がスポーツバージョンのSRだ。

AF27/AF28(1990~)

「スーパーディオ」と呼称されたAF27/28
が第二世代のディオシリーズ。「27」がスタ
ンダードモデルで、「28」がスポーツ仕様の
SR、そして装備満載の新型ZXとなる。

AF34/AF35(1994~)

広末涼子のCMで有名な第三世代ディオ
(ライブディオ)がこちらAF34/35だ。エ
ンジンが縦型から横型に変更され、ZXのエ
ンジン出力も過去最高の7.2psを誇った。

※この記事は月刊モトチャンプ2020年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】