連載

メルセデスAMG列伝

SLR McLaren

1999年の「ビジョンSLRコンセプト」を礎に

ビジョンSLRコンセプト
ビジョンSLRコンセプト

ザウバーとタッグを組みグループCに参戦を続けていたメルセデス・ベンツは、1990年代に入るとF1へのワークス参戦を否定する代わりに、ザウバーへの資金面、技術面への支援を実施。1993年からF1への出場を開始した。

初年度の1993年こそ「Concept by Mercedes-Benz」と記したイルモアV10エンジンを搭載していたが、翌1994年からは同エンジンの名称をメルセデス・ベンツV10へと変更。そしてシーズン終了と共に両社は袂を分ち、メルセデスは1995年シーズンからマクラーレンのエンジンサプライヤーとして活動することとなる。

それを機に両社の関係は親密となり、市販車部門のマクラーレン・カーズと共同でスーパースポーツカーの開発をスタート。こうしてクライスラーと合併後の1999年にデトロイト・ショーの会場で発表されたのが、1950年代を席巻した傑作レーシングマシン「300SLR」をモチーフとした「ビジョンSLRコンセプト」だ。

300SLRのようなエアブレーキを装備

ビジョンSLRコンセプト
ビジョンSLRコンセプト

発表されるや否や世界中で大きな反響を巻き起こしたのを受け、メルセデスはマクラーレン・グループの株式の40%を取得し、関係をより強固としたうえで市販バージョンの開発を正式にスタートする。

ここでメルセデスはパワートレインの開発と、「300SL」を彷彿とさせる跳ね上げ式のウイングドアをもつボディのスタイリングを担当。そのほかの車体の設計、開発、テスト、製造などはすべてマクラーレン・カーズが担当することとなった。

ホイールベース2700mmのシャシーは軽量、高剛性のCFRP製のモノコックとアルミのフロントサブフレームを組み合わせたもので、前後にダブルウイッシュボーンサスペンションを装着。ブレーキはフロント8ピストン、リヤ4ピストンのベンチレーテッドディスクで、ブレーキバイワイヤの一種といえるセンソトロニックブレーキを採用。さらにブレーキング時にリヤパネル一体型のスポイラーを跳ね上げることで制動力をサポートする、300SLRのようなエアブレーキを装着しているのも特徴であった。

5.4リッターV8スーパーチャージャーを搭載

5.4リッターV8DOHCスーパーチャージャーM155SLR型ユニット
5.4リッターV8DOHCスーパーチャージャーM155SLR型ユニット

フロントにミッドシップマウントされる5.4リッターV8DOHCスーパーチャージャーM155SLR型ユニットは、M113エンジンをベースにAMGが専用に開発したもので、すべてハンドメイドで製造。ドライサンプシステムと2つのインタークーラーを備え、最高出力626PS、最大トルク780Nmを発生した。またトランスミッションはハイパワー&トルクに対応するために強化された、パドルシフト付き5速ATのAMGスピードシが採用されている。

こうして誕生した「SLRマクラーレン」は、2003年のフランクフルト・ショーにて正式発表。そのボディは全長4656mm、全幅1908mm、全高1261mmと比較的大柄ではあったが、モノコックのみならずボディパネルなどにもCFRPを使用することで車両重量は1750kgにまとめられ、その0-100km/h加速は3.8秒、最高速度は335km/hとアナウンスされた。

ロードスターやレース用も

SLRマクラーレン・ロードスター
SLRマクラーレン・ロードスター

そんなSLRマクラーレンの特徴といえるのが、この手のスーパースポーツとしては異例の多彩なバリエーション展開が行われたことだ。まず2006年のパリ・ショーでは、1955年のミッレミリアで優勝したスターリング・モスの300SLRをモチーフとしたハイパフォーマンスバージョンの「SLRマクラーレン 722エディション」が150台限定で登場。専用のエアロパーツや、スポーツサスペンションが奢られたシャシーに、650PSへとチューンされた5.4リッターV8を搭載することで、0-100km/加速3.6秒、最高速度337km/hというパフォーマンスを発揮した。

続く2007年にはSLRマクラーレンをベースに10秒で開閉可能な電動ソフトトップを備えた「SLRマクラーレン・ロードスター」がデビュー。さらに同年、イギリスのRML(レイ・マロック・リミテッド)がメルセデスの許可を得て722エディションをベースに690PSのV8エンジン、1300kg台に軽量化したシャシーをもつワンメイクレース用の「722GT」を21台限定で製造、販売している。

2009年までに2000台あまり製造

SLRスターリング・モス
SLRスターリング・モス

そして2009年には、722エディションのオープン版というべき「722S ロードスター」が150台限定で登場したほか、デトロイト・ショーでお披露目された、300SLRをモダナイズしたバルケッタ・ボディをもつスペシャル・モデル「SLRスターリング・モス」が6月に75台限定で発売された。

結局、SLRマクラーレンは2009年までに合計2000台あまりが製造されたが、2011年にマクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)が既存のSLRマクラーレン(スターリング・モスを除く)を対象したモディファイプログラムを発表。その結果、25台の「SLRマクラーレン・エディション」が送り出されている。

CLK63 AMG ブラックシリーズ

DTMで活躍したスタイリッシュクーペC209型「CLK」が辿った過激化への道【メルセデスAMG列伝】

モータースポーツから誕生し、公道へと解き放たれた究極のハイパフォーマンス──それがAMGの本質だ。いまやメルセデス・ベンツの中核を担う存在へと進化したブランドは、どこから来てどこへ向かうのか? その系譜を時代ごとにひもとき、速さと情熱の真実に迫る。今回はモータースポーツイメージの強い「CLK55」「CLK63」そして「CLK DTM」を紹介する。

連載 メルセデスAMG列伝

SLRマクラーレン
by ゲンロクWeb
名鑑 2時間前

大柄なボディに大排気量V8を積んだ異形の「SLRマクラーレン」の意外な足跡【メルセデスAMG列伝】

CLK63 AMG ブラックシリーズ
by ゲンロクWeb
歴史 2026.07.25

DTMで活躍したスタイリッシュクーペC209型「CLK」が辿った過激化への道【メルセデスAMG列伝】

C55 AMG
by ゲンロクWeb
歴史 2026.07.18

コンパクトサルーンに大排気量エンジンを詰め込んだ「C32 AMG」「C55 AMG」【メルセデスAMG列伝】