グッドプロポーション

ボルボのEVフラッグシップSUVであるEX90は、全長は5,030mm、全幅1,965mm、全高1,745mm、W/B2,985mmという大きな数字ではあるが大径タイヤとホイールの組み合わせで、プロポーションバランスが良く重たさは感じない。サイドウィンドウガラスはフラッシュに仕上げられ、ドアハンドルもフラッシュに格納されており、車格の高さとEVらしい先進感も備えており、全体に軽いウェッジでの軸を持ったスポーティな姿をしている。
長いストロークのショルダーモチーフは流れの良い、テンションを感じさせるカーブで出来ている。このモチーフラインはプランビューにおいてもサイドビューでのラインの性格に合うように前後共に気持ちよく絞り込まれたカーブになっていて、そのラインのおかげでボディの「オーバーハング部」がギュッと閉じられる。
その気持ちよくカーブしたボディサイド面から張り出すように作られた前後のフェンダーが4輪を程よく踏ん張るように見せる。その効果は、クォータービューから車を見ると、FOH部もROH部もタイヤを超えた向こう側のボディを消えてゆくように見せて、タイヤが4隅に置かれ、踏ん張っているように見え、車体のスタンスの良さを感じさせる。

EX90が全長5,000mmを超得るサイズがあるにも関わらず、全体をコンパクトに感じるのはそのおかげである。これは悪いことではなく、安定感と走りの良さを感じさせることは、車両の出来栄えの良さ、上質さ、安心感を醸成させる。一般的に3列SUVとなるとどうしても見た目の大きさ、長さから取り回しの不安感や、手に負えなさを感じることが多いのだがこの車に関してはそれがない。
床下のバッテリーを抱え、その上に3列シートを置いているパッケージを持つEX90は長さ×幅×高さを包括する基本的な造形アーキテクチャーがしっかりとできている。

図1 :  EX90とXC90 比較図

Aピラーは前輪軸へ、前後のタイヤは、タイヤいくつ分か?

ここでボルボのハイブリッドラインナップのフラッグシップ車XC90とEX90を比較してみる。両車ともにAピラーの延長仮想線はほぼ前輪の車軸に向かう。また前輪と後輪の間はタイヤが約4つ分。ボルボはこれらのバランスの良いプロポーションとなるセオリーを守ろうとしていることが見て取れる。

また、両車ともにキャビンの重量を後輪が支えている点ではバランスが良い。ROHはほぼ変わらないのだが、バンパー突出量に差がありEX90の方がボディ後半がやや長く見える。バックドアの傾斜が違うこともそう見せている。

厚みを感じさせない造形構成

EX90は全高1700超だが厚みを感じさせない造形構成の工夫をしている。ドアセクションの中間近くで面を切り替え台形のライトキャッチを強く見せている。この効果でドアが上下に分断されてボディの厚みを感じさせず、前後の動きを感じさせるようになる。
またF・バンパー、サイドシル、R・バンパーと下回りにブラックパートを連続することでボディ厚みを極力感じさせないようにしている。さらに台形の下辺線も、F・バンパー、R・バンパーのモチーフまで連続させることで長さ方向に視線を誘いボディ厚みを感じさせない。
このおかげでEX90は走りのスポーティさを身につけており、さらにこの台形ライトキャッチの台形の左右の斜め辺をうまく利用して前後のフェンダーを大きく感じさせる視覚効果を得ておりほぼ3,000mmに近いW/Bがあるにも関わらず胴長感を抑え込み、タイヤとフェンダーの存在を強く見せ、この車が俊敏に動くクルマに見えるように設えている。

ルーフの流れの違い

実質的なボディ全高は両車ともに変わらないがEX90の方がルーフ後端での落ち込みが強い。(写真は両車ともに水平に置かれてはいないのでややわかりにくいが)これはやはりEV車の電費をより良い値にするための空力的な要求からきているのだろうと予測する。ただし3列目の乗員の頭上空間をほぼいじめずにそのカーブを達成している。一方でXC90は実質室内容積の広さを感じさせるようにDピラーも立てて、ルーフもあまり下げずに空間性を意識させる。
XC90と比べるとAピラー上部からルーフに繋がりルーフエンドに至るカーブの取り方の違いも見えて、それらは商品性の違いを表すカタチの違いとして興味深い。XC90は室内容積感を表現し、EX90はエアロダイナミクスのより良い流れを確保しているようである。

フード

フード先端の高さは両車ともにほぼ同じだが、Aピラーへ向かうカーブのベクトル向きが違っていて、それでクルマが持つ性格が違うのも面白い。

EX90はフェンダーエッジがAピラー付け根を抜けてベルトラインへ繋がる流れを感じさせる動きだが、XC90はフードエッジのキャラクターがAピラーからルーフへと連続する動き方をする。そのために両車のフード面のベクトルの方向が変わっており、車体の塊感の作り方が違う。EX90はボディの上にガラスキャビンが重なって載っているのだが、XC90はボディ+キャビンという縦方向の塊感を持っている。これがこの両車の目指す商品性の違いにつながっている。XC90は当時のフラッグシップとしての存在感と堂々とした車格感を厚みや高さで表現しようとしたが、EX90はEV車としての運動性の高さ、走りの良さを持つスポーティなフラッグシップSUVに見せたかったのだろう。

フロントエンド

ボルボである証のトールハンマーヘッドライトはLEDの小さなブロックで構成され、これまでよりもデジタル感を感じさせる。BEVだけにノーズ部はボルボのブランドロゴだけのクリアな顔。このブランドロゴの背後にレーダーとカメラが配置されている。
またこのヘッドライトにはギミックがあり、ランプ点灯時にはLEDシグネチャーの水平部分が上下に広がってその背部のヘッドライトが出現し点灯する。

リアエンド

これもボルボのBEVカーにおけるファミリー表現。もちろんそれぞれに仕上げ方は固有で、このEX90ではピラー位置にある縦型のランプ意匠が細くなり、バックドア下部に横たわるC型モチーフ部が主体となっているのだが、極めて近い表現となっている。

フロントとリアの作りは、ブランディング上はボルボを示すことができるが、ラインナップの上下がもう一つ分かりにくい。一般的な商品企画としては、価格に応じたそれなりの表現をすることでお客様の満足度・充足度を満たしているのだが、その観点から見るとその効果がやや弱い。ただ、ボルボを購入する顧客はそういうことを気にしないのかもしれない。

インテリアデザインとCMFデザインについては「VOLVO EX90のスタイリング/インテリア・CMF編」にて解説しているのでそちらをご覧いただきたい。