Ferrari Amalfi vs Roma Spider

クーペとオープンを分離したローマ

フェラーリの最新FR、アマルフィ。名機と呼ばれるF154をフロントに搭載した優雅なスーパースポーツは、先代モデルのローマからどのように変わったのか。フェラーリV8FRの変遷と進化を、じっくりと味わってみることにしよう。
フェラーリV8 FRの流れを受け継ぐローマとアマルフィ。

2+2シーターのFRレイアウトにV8を組み合わせたクーペ。そんなフェラーリの歴史は2008年に発表されたカリフォルニアに端を発している。以降、「カリフォルニアT」〜「ポルトフィーノ」と続いたモデル群は、当時のトレンドでもあったリトラクタブルハードトップを採用。気密性と開放感を両取りできるキャビンを特徴としていた。

そのコンセプトを引き継ぎながら、クーペとオープンを独立したバリエーションとしたのが2019年に登場した「ローマ」だ。当時の開発担当者はスパイダーを分離独立した事情として、幌屋根の進化によって音・振動や気密性が十分に確保されたこと、情緒的なデザインなどを挙げていた。いずれも納得できる理由である。

そんなローマの意思を踏襲したのが「アマルフィ」というわけだ。ひと目見てわかる通り、内外装は完全に刷新された一方で、ディメンション関係はローマと変わらずと、平面的なデータからみれば、ビッグマイナーチェンジ的なもののようにみえる。が、中身はきっちり刷新と熟成を重ねていますよというのが、毎度のフェラーリ的なやり方だ。アマルフィも乗ればすぐにその進化がわかる、そういうものになっているという。

F154エンジンは20PSアップ

フェラーリの最新FR、アマルフィ。名機と呼ばれるF154をフロントに搭載した優雅なスーパースポーツは、先代モデルのローマからどのように変わったのか。フェラーリV8FRの変遷と進化を、じっくりと味わってみることにしよう。
フロントに搭載されるのはF154B系エンジン。アマルフィはローマより20PS出力がアップしている。

アマルフィに搭載されるエンジンはF154型の90度V8直噴ツインターボだ。その初出はカリフォルニアTで、当時はフェラーリが手掛けたターボユニットは「F40」以来ということで注目を集めた。以来、F154型はストロークアップと高回転化を果たしたC系、ボアアップと高トルク化を果たしたF系とファミリーを増やし、C系は「488」〜「F8」に、F系は「SF90」〜「849テスタロッサ」に搭載されている。ちなみにアマルフィのそれはカリフォルニアTから続くB系で、形式名称的にはローマがF154BH型、アマルフィがF154BN型となる。

F154BN型は主にターボチャージャーの制御や吸排気系のリファインを施し、そのアウトプットは640PS/760Nmと、ローマに対して20‌PS向上、動力性能的には最高速は320km/hと同じだが、0-100km/h加速が0.1秒短縮され3.3秒となっている。ミッションはいずれも8速DCTで、トランスアクスルレイアウトながら273Lのトランク容量を確保している。

アマルフィの内外装はローマの有機的な造型に対して、直近のフェラーリが志向するミニマル化を織り込み、直線的なモチーフが多く採り入れられている。リヤ周りは「12チリンドリ」で採り入れたデルタウイングシェイプが反復的に用いられており、トランクフードの割線が変わったほか、アクティブリヤスポイラーも後端に移されその横幅も広げられるなど空力性能的な改善も加えられた。

まるで古さを感じないローマ

ローマはセンターコンソールがブリッジ形状となって運転席と助手席を分けるようなデザインで、他のモデルとは明らかに違う雰囲気を生み出している。
ローマはセンターコンソールがブリッジ形状となって運転席と助手席を分けるようなデザインで、他のモデルとは明らかに違う雰囲気を生み出している。

いってみればモデル末期ということになるが、アマルフィと見比べてもローマスパイダーのディテールに旧さを感じるところは殆どない。厳密にみればインフォテインメントの機能やグラフィックの洗練度くらいだろうか。ステアリングもレトロフィットにより物理スイッチを備えた最新型へとアップデートされており、よりストレスなく扱える。

内外装のデザイン的にも、より深い情念が感じられるのはローマの側かと、個人的にはそうみえる。が、その情念が世代によっては重く感じられるのかもしれない。そういう前提で見比べれば、アマルフィのフラットなアピアランスは理解できる。

アマルフィに感じる洗練

生産年次的にも熟成されているだろう、ローマスパイダーは走りの側も洗練されていた。幌屋根による剛性や重量の変化はほぼ気にならない。実際はクーペのアマルフィより80kg重いが、その増加分の大半が後軸側に掛かっていて重量配分はハイパワーFRとしてむしろ理想的な48対52。後輪にしっかり駆動力を掛けて長いノーズをグイグイとインに入れていく、古のGT系フェラーリとも繋がるノスタルジーも重ねながらのドライビングが楽しい。いくらフラットプレーンV8とはいえ12気筒の濃密さには敵わないが、そのぶんを最適化された車格や軽いノーズが十分に補ってくれている。

そう思いながらアマルフィに乗り換えて、最初に驚いたのはエンジンのフィーリングと車体の転がり感の滑らかさだった。本体の摺動感の低減もさることながら、効いているのは新騒音規制によって静かになったエキゾーストで、ワイルドかジェントルかという喩えは些か乱暴ながら、洗練というクルマのコンセプトとフィーリングとの親和性ではアマルフィに軍配が上がるだろう。

同様に低中速域での乗り味についてもアマルフィはローマを大きく凌ぐスムーズネスを手に入れている。足捌きのきめ細やかさもさることながら、ここでも間違いなく効いているのはエキゾーストで、その排圧によるキャビンの共振等が抑えられたぶんの印象差は小さくはない。

日常域での柔軟性や快適さはもはや911やSLとも肩を並べるのではないか。そのくらい扱いやすく洗練された一方で、マネッティーノをスポーツやレースにすれば、秘められた野生が目を覚ます。そのコントラストの強さもまたアマルフィの従来とは異なるところかもしれない。

いくらGT的なコンセプトとはいえそこはフェラーリ。低回転域からたっぷりのトルクで1200rpmも回せば十分にレスポンスしていたV8は、シングルプレーンらしい快音を伴ってスパッと8000rpm手前のレッドゾーンまで軽やかに吹け上がる。その域に至るまで、パワーの頭打ち感も無に等しい。12チリンドリも然りだが、HEV等の飛び道具を加えずとも環境規制対応にも巧く対応しているフェラーリのエンジンテクノロジーはさすがだと思う。

日常と非日常を繋ぐ存在

新デザインのホイールは鋭いエッジが特徴的。スポークは中空となっており、軽量化を図っている。
新デザインのホイールは鋭いエッジが特徴的。スポークは中空となっており、軽量化を図っている。
エレガントなボディラインに力強い形状のカーボン製ディフューザーと4本出しのマフラーが組み合わされる。
エレガントなボディラインに力強い形状のカーボン製ディフューザーと4本出しのマフラーが組み合わされる。

アマルフィの前後重量配分はクーペということもあってほぼ50対50、わずかに後輪側に重いくらいのところだが、前輪側の軽さが接地感に影響しているという印象はまったくない。全長やエンジンルーム長、荷室容量や着座位置との相関関係からみても、V8を軸とすることで得られるフレキシビリティをここでも思い知る。

日常と非日常をシームレスに繋ぎながら、クルマのある生活を彩ってくれる存在として、アマルフィの完成度は歴代のフェラーリでも最上といえるだろう。スピードの最前線を追い続けるのに疲れたら、少し肩の力が抜けた、こういうフェラーリの魅力がぐいぐいと目に映る。

 REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2026年10月号

SPECIFICATIONS

フェラーリ・アマルフィ


ボディサイズ:全長4660 全幅1974 全高1301mm
ホイールベース:2670mm
乾燥重量:1470kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3855cc
最高出力:471kW(640PS)/7500rpm
最大トルク:760Nm(77.5kgm)/3000-5750rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前245/35R20 後285/35R20
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:3.3秒
車両本体価格:3418万円

 

フェラーリ・ローマスパイダー


ボディサイズ:全長4656 全幅1974 全高1306mm
ホイールベース:2670mm
乾燥重量:1556kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3855cc
最高出力:456kW(620PS)/5750-7500rpm
最大トルク:760Nm(77.5kgm)/3000-5750rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前245/35R20 後285/35R20
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:3.4秒
車両本体価格:3460万円

 

【オフィシャルサイト】
フェラーリ・ジャパン
https://www.ferrari.com/ja_jp/

フェラーリ アマルフィ スパイダー

【最新フェラーリ】アマルフィスパイダーが早くも日本初披露「ワールドプレミアからわずか2週間」

フェラーリは2週間前にワールドプレミアされたばかりの新型2+スパイダー「アマルフィ スパイダー」を日本初披露した。クーペと変わらない走行性能を謳うスパイダーは、フェラーリ最新オープンGTである。