Audi A6
まるでBEVのように、しなやかな加速

試乗会場のホテルから少し走り出しただけで思わず破顔した。9代目となる新型「アウディ A6」の、まるでBEVのように静かでスムーズな発進と極上のステアフィールに、長年激しい戦いを繰り広げてきたドイツ製Eセグメントカーの矜持を垣間見たからだ。「メルセデス・ベンツ Eクラス」「BMW 5シリーズ」、強敵だらけの本セグメントにおいて、新型A6は明らかに異彩を放っている。
それはスリークなエクステリアデザインを見ても明らかだ。フォーマルで上品なデザインながら、クーペのようなウインドウ上部からリヤエンドのエッジまで流れるラインがモダンな雰囲気を醸し出している。ボディタイプは定石通り、セダンとステーションワゴンのアバントの2タイプが設定される。
大型ディスプレイを採用した洗練のインフォテイメントシステム


リヤエンドを眺めても薄くシャープなリヤライトとその下に広がる一体型ライトストリップがセダン、アバントともにその存在感を控えめながらもしっかり主張している。一度新型A6を目の前で見てしまうと、同じ4ドアセダンの「A5」ですらやや古いデザインに感じてしまう。2026年現在、上品なアンダーステイトメントの極地といえるのが「A6セダン/アバント」だろう。
もちろんアウディらしく、このデザインは“機能から導かれた造形”である。その証左として、新型A6のCd値はセダンが0.23(アバント0.25)というアウディのICEモデル史上最も優れた数値を実現している。フロントに設けられたエアカーテンやリヤエンドのエッジが驚異的なエアロダイナミクスの源になっている。
パワートレインは最高出力204PSの2.0リッターTDIと272PSの2.0リッターTFSIが用意され、最新の48Vマイルドハイブリッドシステム「MHEVプラス」が組み合わされる。これはトランスミッションのアウトプットシャフトに配置されたモーターが最大24PSのアシストと230Nmの追加トルクを提供し、発進時や追い越し時の加速をアシストする。もちろん全車AWDのクワトロのみのラインナップである。
快適な後席のクリアランス


今回の試乗車は2.0リッターガソリンエンジンを積むセダンだったが、MHEVプラスの効果は実際の試乗でも存分に感じられた。冒頭触れたようなまるでBEVのようなしなやかで自然な発進。そしてここ一発の加速が欲しいときには、ドライバーの意を汲んだかのようにトルクを上乗せする。決して出しゃばらず、常にドライバーに寄り添う、そんな理想的な制御に唸らされた。
ワインディングロードに足を踏み入れるとA6の意外な俊敏性に驚いた。車重が1980kgと重量級セダンであるにも関わらず、その重さをドライバーは一切感じない。正確無比なハンドリングと400Nmのトルキーなエンジンにより、まるでスポーツカーを操っているかのように俊敏にコーナーを駆け抜けていく。エアロダイナミクスも寄与しているのだろうが、A6のスポーティなハンドリングはシャシー剛性の高さを含めた足まわりの完成度ゆえだろう。
2種類のパワートレインを設定


オプション設定されるアダプティブエアサスペンションが試乗車には装着されていた。走行モードはベースド、ダイナミックなど5つから選択できるが、基本はベースドで十分だ。一般道、高速道路、ワインディング問わず常にフラットな姿勢を保ってくれる。ちなみにダイナミックモードは車高が10mm下がり、よりクイックなステアフィールとエンジンレスポンスを味わえる。積極的に走りたい気分の日はこちらをチョイスしたらいいだろう。
新型A6のインフォテインメントシステムは実に洒落ている。11.9インチのバーチャルコクピットと14.5インチのタッチディスプレイから構成されるカーブ型の一体型ディスプレイは視認性も高く、高級感が非常に高い。個人的には物理スイッチが極力排除されているのが少し残念だった。運転しながらエアコン等を操作するにはやはり物理スイッチに分がある。
実は今回の試乗で最も感銘を受けたのがその静粛性だった。試乗車はオプション設定されるアコースティックガラスが採用されていたが、走行中の車内は常に静謐に包まれていた。少しトバしても心地よいエンジン音が耳に入ってくるだけで、車内は驚異的な静けさを保っている。アウディがプレミアムモデルに求める矜持をここに見た瞬間であった。
REPORT/石川亮平(Ryohei ISHIKAWA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2026年10月号
SPECIFICATIONS
アウディA6 TFSIクワトロ 200kW
ボディサイズ:全長5000 全幅1875 全高1465mm
ホイールベース:2925mm
車両重量:1980kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1984cc
最高出力:200kW(272PS)/5000-6500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1600-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/55R18
車両本体価格:885万円
【問い合わせ】
アウディ コミュニケーションセンター
TEL 0120-598-106
https://www.audi.co.jp/

