レクサスGSに擬態した16アリスト!
中身はT88タービン武装の本格サーキットスペック
19系レクサスGSのフロントフェイスを纏い、ひと目では正体を判別できない16アリスト。迫力あるルックスとは裏腹に、マニュアルミッション化をはじめ、エンジンや足回りにも徹底したチューニングが施され、スポーツ走行を存分に楽しめる仕様へと仕上げられている。

そんなマシンを軽快なドリフトで操るのは、オーナーのアンディさん。福島県のエビスサーキット内で『パワービークルス』を営む、ドリフトを知り尽くしたスペシャリストだ。

そもそも16アリストは、高級FRセダンでありながら、チューニングベースとして絶大な人気を誇る2JZエンジンを搭載する希少な存在。車重の重さやATしか設定されていないことに目をつぶれば、遊びグルマとしてのポテンシャルはピカイチだ。この車両もアンディさんの元へ渡る以前から、歴代オーナーによってサーキットスペックへと磨き上げられてきた経歴を持つ。

前オーナーの五島さんによると、このアリストは茨城県でGT-Rチューニングを得意とするショップ『アウトバーン』で製作された車両だったという。五島さん自身もBNR32オーナーとして同ショップと付き合いがあり、街乗りを楽しみながら筑波サーキットでタイムアタックもこなすという理想を追い求めていた。
しかし、年々高騰するGT-Rは盗難やクラッシュのリスクも大きく、維持していくことに負担を感じるようになったことから、愛車のBNR32を手放す決断を下したそうだ。

そこで、一度はサーキットから距離を置こうとフォード・マスタング(S197)へ乗り換えたものの、やはり走りたいという情熱が再燃。そんな時、アウトバーンの片隅で長らく保管されていたこのアリストが目に留まった。
19系GS顔へのスワップに加え、T88ターボを搭載し、マニュアルミッション化まで施された仕様に惹かれ、購入を決意したという。

当時はエアコンを含む快適装備や内装の大半が撤去され、シートも運転席のみという完全なサーキット仕様だった。それでも、街乗りで味わえる直6エンジンへの愛着や、サーキットを走るうえでもGT-Rほど費用面でのリスクが大きくないことから、このクルマを気に入ったという。
そして、放置状態が続いていた前々オーナーとの交渉の末、五島さんの手に渡ることとなったのだ。

その後、五島さんの元で街乗りも快適に楽しめるよう、新品のエアコンを装着するなど、内装や快適装備を復活。スピリットの車高調を投入し、F-CON Vプロのリセッティングも実施した。
約2年間の所有期間で筑波サーキットへも精力的に通い、プロドライバーの同乗走行では1分3秒台、自身のドライブでも1分6秒台をマークするまでに至った。
あとは外装をさらに自分好みにモディファイしようというタイミングだったが、結婚を機にライフスタイルが変化したことから、売却を決断。こうしてバトンはアンディさんへと受け継がれた。ちなみに、五島さんはその後、14アリストに乗り換えたそうだ。


細部をチェックしていく。エンジンは、JZA80スープラ後期の2JZ-GTEをスワップ。タービンはT88-34Dで、約550psを発揮する。カムはHKS製を使用し、LINKフルコンで制御することでVVT-iも機能させ、低速域からトルクフルな特性に仕上げている。

ラジエターはサード、オイルクーラーはトラストで冷却系を強化。前々オーナー時代にはなかった街乗り用の快適装備も復活しており、エアコンコンデンサーの姿も確認できる。

トランスミッションはJZX100に搭載されるR154型5速MTを採用。コストパフォーマンスに優れる定番スワップで、500ps台のパワーであれば十分に対応できるキャパシティを持つ。


足回りのチューニングも妥協なし。フロントでは、ロワアーム、テンションロッド、アッパーアームに調整式のイケヤフォーミュラ製フルピロアームを投入。五島さんがBNR32時代にも街乗り&サーキットで好感触を得ていたスピリット製車高調をチョイスしている。
リヤもマルチリンクの各アームにイケヤフォーミュラ製の調整式ピロアームを投入し、サスペンションの動きを徹底的に追求している。



室内は完全に競技スペックだ。もともとは運転席にメーカー不明のフルバケットシートが1脚だけ装着されていたが、五島さんがレカロのフルバケ2脚へと変更。ドアの内張りも後から追加している。ステアリングはレーシーなMOMOのモッド88をセット。
そして、サーキット走行に必要なボディ剛性を確保するためのワンオフロールケージは、前々オーナー時代から受け継がれているもの。メインフープの下部からトランクスルー部分へバーが伸びるなど、リヤシートレスを前提としたレイアウトとなっている。



ホイールは、前後に汎用オーバーフェンダーを埋め込んだ上で、ボルクレーシングTE37SLの11J×18+18をマッチング。組み合わせるタイヤはシバタイヤR23の295/30R18サイズだ。ブレーキはフロントにブレンボ製6ポットキャリパーを装備し、リヤはスープラ純正キャリパーで強化済み。

独創的なエクステリアは、ヴェルテックスのキットを用いて19系レクサスGSの後期フェイスをスワップ。筑波サーキットの本コースで走行会に参加する際の注目度は、かなりのものだったという。
ボンネット、フェンダー、フロントバンパー以外はGS純正部品を使用しているが、レクサスのエンブレムはあえて撤去。グリルもブラックアウトすることで、さらに車種不明感を高めている。

スワップキットのボンネットをベースに、サーキット走行時の冷却効率を高めるため、大型のボンネットダクトも追加している。

そして、このアリストの新たな舞台となったのがドリフトだ。重量級セダンとは思えない軽快な身のこなしで、大パワーを活かしながら白煙を巻き上げ、豪快にスライドしていく姿は圧巻のひと言。
街乗りからタイムアタック、そしてドリフトまで…。あらゆるフィールドで実力を発揮できる16アリストの懐の深さと、その高いポテンシャルを改めて実感させてくれた。
PHOTO&REPORT:Miro HASEGAWA (長谷川実路)

