12日間放置された完全水没車!

SR20DET搭載D21、復活への挑戦

数時間にわたって線状降水帯が停滞し、わずか1時間で約1カ月分の雨量を記録したという「千葉豪雨」。特に大きな被害を受けたのが、掘り込み式の機械式駐車場だ。排水ポンプの処理能力を超える大量の雨水が一気に流れ込んだことで、クルマを避難させる間もなく、短時間で完全に冠水してしまったケースも少なくない。

そんな被害に遭った1台が、OPTION系ライター“NABE”の愛車である日産・ダットサントラックD21。機械式駐車場の2段目に駐車していたところ、なんと天井まで完全に水没してしまった。

本人は当時ちょうど外出していたため、現場の状況は後から聞いた話になるが、わずか5分ほどで3段式駐車場が満水になったという。仮にその場にいたとしても、クルマを移動させる時間はなかっただろう。

さらに厄介だったのが、機械式駐車場そのものも被災したことだ。パレットを動かすモーターや制御基板まで冠水したため、約10日間の乾燥期間を経たうえで、業者立ち会いのもとでなければ設備を動かすことができなかった。

つまり、その間は愛車がどんな状態になっているのかを確認することすらできない。どうすることもできず、ただ待つしかない状況が続いたのだ。

とはいえ、このD21には簡単に諦められない理由がある。SR20DETへ換装してフル公認を取得し、そこから10年以上にわたって少しずつ手を加えてきた愛車なのだ。最近では新品ミッションへの載せ替えやオールペンまで行ったばかり。

同じ仕様をイチから作り直すとなれば、当時以上の時間とコストが必要になる。廃車という選択肢が現実味を帯びる一方で、「何とかして復活させたい」という気持ちも消えない。

要するに、長年連れ添った愛車を簡単には諦められないのである。

そして豪雨から12日。ようやく機械式駐車場が復旧し、愛車との再会を果たすことができた。

ある程度の覚悟はしていたものの、目の前に現れたD21の姿は想像以上に無残だった。ボディ全体は泥に覆われ、どこからか流れ込んだ石なども付着。水没時に車体が浮き上がり、上段のパレットへ激突したことでルーフには大きな凹みが生じている。

さらに、着地時の衝撃によってホイールも変形。ヘッドライト内部には大量の水が残り、完全水没の凄まじさを物語っていた。

特に目を引くのがルーフのダメージだ。単なるベコベコの凹みではなく、プレスラインの角そのものが潰れている。車体がどれほどの勢いで浮き上がり、パレットへ衝突したのかを想像させる状態だ。

続いて車内を確認すると、こちらも悲惨な状態だった。

シートやフロアカーペットは汚水をたっぷりと吸い込んでおり、車内には下水のような強烈なニオイが充満。バケットシートやセンターコンソール、灰皿などにも汚水が残っている。

水の浮力によってシートのクッションが外れ、車内に散乱している様子からも、このD21が完全に水没したことが改めて分かる。

オールペンに合わせて張り替えたばかりだったステアリングにも悲劇が待っていた。夏場の高温多湿な環境で12日間放置されたことで、表面には綿状の白カビが発生。

オーナーが好みに合わせてオーダーしたお気に入りのステアリングだけに、今回の水没被害の中でも精神的なダメージはかなり大きい。

もちろんエンジンも冠水している。ボディと同じくエンジンルーム全体が薄く泥に覆われ、パワステタンクには水の混入も確認できた。

一方、ブレーキマスターやクラッチマスターには水の混入が見られない。これはフルードで満たされていることに加え、キャップなどの状態による違いと考えられる。

エンジン内部については、現時点でフィラーキャップから確認した限りでは水の混入は見られない。ただし、内部まで詳細にチェックしたわけではないため、無事とは断言できない。

当然、厳しい状態であることは間違いない。それでも、現段階では「致命傷」と言い切れる箇所が見つかっていないだけに、エンジンが生きている可能性にわずかな期待を抱いてしまう。もしエンジンに大きなダメージがなければ、D21復活への道が開けるかもしれない。

そして、完全に心が折れかけたところで、さらなる問題が発覚した。それが、機械式駐車場からの搬出だ。

12日間も水没状態で放置されていたことで、サイドブレーキが完全に固着。もともとは牽引して近くの駐車場まで移動させる予定だったが、人力で押してもビクともしない。

そこで、応援に駆けつけていたオプション編集部員が急遽連絡を取ったのが、ドリフト系チューニングショップ“ガレージミサイル”の宮本さん。息子のコーキ君とともに積載車で駆けつけ、搬出作業をサポートしてくれた。

ここで、復活に向けた一筋の光も見えてきた。

というのも、このD21は平成初期のアナログなクルマ。現代車のように複雑な電子制御や大量のセンサーが使われているわけではなく、ハーネス類も比較的シンプルだという。そのため、エンジン内部に致命的なダメージがなければ、復帰できる可能性は十分に残されているとのこと。

もちろん、現段階で「直る」と断言することはできない。それでも、完全にアウトではないのなら、修復に挑戦してみる価値はある。

一度は廃車も覚悟したD21だったが、ここにきて再び「復活」という選択肢が現実味を帯びてきた。

ただし、復活への道にはもうひとつ、大きな問題が立ちはだかっている。

それが「ニオイ」だ。

パワーウインドウが作動しないため、車両を移動させる際には窓を開けることもできない。汚水を吸い込んだカーペットやバケットシートをそのままにしておくわけにはいかず、まずはそれらを取り外して処理。フロアを鉄板剥き出しにして、純正シートへ交換したものの、強烈なニオイは簡単には消えてくれない。

もしかすると、このD21を復活させるうえで最大の敵になるのは、電装系でもエンジンでもなく、この「汚水臭」なのかもしれない。

まずはガレージミサイルで車両の状態を徹底的にチェック。エンジンや電装系に復旧の可能性が見えれば、本格的な修復へと動き出すことになる。

果たして、完全水没から12日間放置されたSR20DET搭載D21は復活できるのか。愛車を諦めない男の復活への挑戦は、ここから始まる。

PHOTO&REPORT:渡辺大輔 Daisuke WATANABE

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