国内SUVラインアップに存在していた「空白」を埋める役割も担う

かつて日本市場から一度撤退し、2024年に燃料電池車「CR-V e:FCEV」として部分的な復活を遂げていたホンダのフラッグシップSUV『CR-V』。ホンダは主力パワートレインである2モーターハイブリッドを搭載した「CR-V e:HEV」を、2026年2月に日本市場へ正式投入した。

ホンダ CR-V e:HEV

北米など海外市場で先行していた6代目モデルが、なぜこのタイミングで国内へ本格投入されたのか。その背景には、グローバルで進む「EVシフトの現実的な修正」と、ホンダにおける国内SUVラインアップ再構築という戦略がある。

世界市場における電気自動車(EV)の需要拡大ペースが鈍化するなか、大手自動車メーカー各社は完全電動化へ向けたタイムラインを柔軟化している。

ホンダ CR-V e:HEV

ホンダも2021年、2040年までに四輪車の100%をEV/FCEVにするという長期目標を掲げていた。しかし2026年5月の「2026ビジネスアップデート」でこの目標を撤回し、現実的かつ収益性の高いハイブリッド車(HEV)の役割を重視する姿勢へと舵を切った。

市場がただちに完全EVへ移行しないなか、充電インフラへの不安がなく、実用性と電動車らしい走りを両立できるHEVの重要性は高まっている。CR-V e:HEVの投入は、この過渡期における収益基盤とブランドプレゼンスを維持するための重要な一手といえる。

もうひとつの理由が、国内SUVラインアップに存在していた「空白」である。

これまで日本市場におけるホンダのSUV陣営は、全長4330mm×全幅1790mmのコンパクトな『ヴェゼル』と、全長4570mm×全幅1840mmの『ZR-V』が中核を担ってきた。

しかし、トヨタ『RAV4』『ハリアー』や日産『エクストレイル』などが競うミドル~上級SUVクラスでは、ホンダの選択肢は手薄だった。

そこへ投入されたCR-V e:HEVは、全長4700mm×全幅1865mmという堂々としたボディを持つ。広い室内とラゲッジスペースを備え、ホンダSUVの上級モデルを求めるユーザーをカバーする存在となった。 

技術面でも、CR-V e:HEVの投入には大きな意味がある。

モーター走行を基本としながら高速巡航時などにはエンジン直結を行うホンダ独自の「e:HEV」だが、CR-Vにはローとハイの2段直結ギアを備えた新世代システムが採用された。

これにより、市街地の緩やかな登坂や低中速域の加速から高速クルーズまで、従来以上に幅広い領域で効率的なエンジン直結走行が可能となった。

大柄で重量のあるCR-Vだからこそ、この新技術による静粛性、加速性能、燃費性能の進化を示す格好のモデルでもある。

CR-V e:HEVの国内投入によって、ホンダのSUVラインアップも役割分担が明確になってきた。

取り回しの良さとデザイン性で幅広いユーザーをカバーするヴェゼル、スポーティな走りとサイズのバランスを特徴とするZR-V、その上で広い室内と最新の電動化技術を武器にするCR-V e:HEV。そして燃料電池技術を搭載するCR-V e:FCEVという構成だ。

EV一辺倒の急速なシフトから、市場の実情に合わせてHEVを重視する戦略へと軌道修正を進めるホンダ。

CR-V e:HEVの日本投入は、単に海外で販売していたSUVを国内へ復活させたという話ではない。完全電動化までの移行期をHEVでどう戦うのか。そのホンダの現在地を象徴する一台なのである。