Maserati GranCabrio /GranTurismo
マセラティとトリエステの深い縁

トリエステがイタリア王国によって併合されたのは第一次世界大戦後のこと。それ以前はオーストリアのハプスブルグ家が支配する港町であった。つまり、彼らにとっては重要な世界への玄関口。それゆえ、大いに繁栄したという。
トリエステがイタリアとなった同じ頃、ちょうど百年前からトライデントをロゴとして使いはじめたマセラティだったが、この地とは大いに縁があった。1911年から71年まで開催された伝説のヒルクライムレース「トリエステ=オピチーナ」において3度の優勝を飾っているのだ。マイナーチェンジされたブランドのフラッグシップモデル「グラントゥーリズモ」と「グランカブリオ」を試す場所として、ふさわしい場所であると言っていいだろう。
まずはフォーリセリエ(特別注文)で誂えたマットグリーンの「グランカブリオ・トロフェオ」に乗り込む。ソフトトップの全面にトライデントが描かれており、半分グレーで残りがグリーンという凝ったデザインだ。そう、今回からホロの色や柄まで特注できるようになった。


最新スーパーカーの「GT2ストラダーレ」や「MCプーラ」といったブランドアイコンと同様のマスクデザイン、シャークノーズにリファインされたグランカブリオ。見た目の印象はもちろん、空力性能も引き上げられている。パワートレインではトロフェオの最高出力が40PSアップし、590PSに。併せてスポーツエキゾーストシステムも採用されている。この辺りは顧客からの要望を素直に反映したものと言えそうだ。
シフトパドルで前後退が可能に



エクステリア以上にインテリアの進化も印象に残った。ステアリングホイールの形状がスクエアに近くなり、いっそうスポーティなイメージに。ダッシュボードセンターの時計は八角形のデジタルタイプとなり、時刻以外にもさまざまな情報を映し出す。さらにPRNDのギヤシフトセレクターボタンが立体的となり、扱いやすくなった。とはいえ何度も切り返しの必要な駐車時など、急いでDとRを切り替えたいときにスイッチ式は不便だ。そこでステアリングからいちいち手を離さずに切り替えができるよう、パドルシフトでの微速の前後進が可能となった。実際に使ってみたが、とても便利だった。
よりエンジンを楽しめるチューニングに

凝ったデザインのトップを畳んでしまうのはとても惜しいけれど、アドリア海の風を浴びようとオープンにして走り出した。今となってはとても貴重なフル4シーターのオープンGT。ゴージャスな見た目が街ゆく人々の視線を奪う。それに応えるかのように、狭い市街地にネットゥーノV6のサウンドを響かせた。
ライドフィールは“しなやか”だ。シャシーが引き締まっているにもかかわらず、乗り心地はまるで悪化しない。オートマチックの制御マッピングも変わっており、サウンドと共にエンジンフィールをより楽しめるようになっている。
丘を登り切り、カントリーロードに出た。前が空く。アクセルを踏み込んだ。弾けるように加速する。サウンドは以前より明らかにラウドだ。しかも高回転域ではキレイな高音を響かせる。40PSプラスの恩恵を実感することこそできなかったけれど、十分に強烈な加速フィールと伸びのあるエキゾーストノートがドライバーの気分をこれまで以上に盛り上げてくれたことは確か。
以前からよくできたGTであったし、優れたハンドリングをもつスポーツカーでもあった。そこはまるで変わらない。身のこなしはリズムカルで切れ味が良く、AWDを感じさせない。前後の重量バランスが良いからだ。常に、ドライバーの腰を中心に車体が動いている感覚がある。

夏の日差しを浴びながらアドリア海岸をクルーズした後、イタリア統一広場に戻ると、クーペで同じ色の「グラントゥーリズモ・トロフェオ」が用意されていた。わずかな時間だったが、試してみる。グランカブリオより乗り味は圧倒的にスパルタンだ。ルーフがあるぶん路面からの反応もダイレクトで硬い。もちろん、速度を上げていけばそれもだんだん和らぐだろう。スポーツカー的に楽しみたい向きにはクーペがお勧めだ。
REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/Maserati S.p.A.
MAGAZINE/GENROQ 2026年10月号
SPECIFICATIONS
マセラティ・グランカブリオ・トロフェオ
ボディサイズ:全長4976 全幅1957 全高1363mm
ホイールベース:2929mm
車両重量:1895kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:434kW(590PS)/6500rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/2500-5500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/35R20 後295/30R21
最高速度:316km/h
0-100km/h加速:3.6秒
車両本体価格:2870万円
【問い合わせ】
マセラティコールセンター
TEL 0120-965-120
https://www.maserati.co.jp/

