後席の広さは互角! 子育て特化のタントと万能なスペーシア




タントは今回の改良で予防安全機能“スマートアシスト”の機能が向上した。横断する自転車の検知に加え、交差点での右折時に対向車線を走る車両や、右左折時に横断する歩行者も検知できるようになったほか、歩行者を対象とした作動上限速度も60km/hから80km/hへと引き上げられている。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)も先行車の検知距離と精度が高められたことで挙動が滑らかになり、ユーザーから指摘の声が上がっていたレーンキープコントロール作動時のふらつきも抑えられた。
基本外観に一切変更はないが、ドアミラーやドアハンドル、ホイールがブラック塗装で仕上げられた特別仕様車“デイリーツール”を新設定。その他の変更点は、装備品の細かな設定変更が行なわれた程度だ。改良の規模としては非常に小さいが、タントの基本価格の上昇はわずか1万1000円に抑えられた。
新型タントは車内寸法や機能も変わっておらず、居住性や積載性はスペーシアとほぼ互角であり、どちらも成人男性でも十分にくつろげる広い後席空間が備わる。
タントのもっとも大きな特徴は“ミラクルオープンドア”と言えるだろう。助手席側に邪魔なセンターピラーが存在しないため、ベビーカーとチャイルドシートの間で子どもを乗せ替える作業が格段に楽になる。後席に手が届くほど大きくスライドする運転席も、子育てファミリーには嬉しい装備だ。
一方のスペーシアは、3役をこなせる“マルチユースフラップ”が特徴だ。フラップは前後4段階、角度2段階で調整可能となっており、前へ引き出せば後席乗員の膝裏をしっかり支えてくれるレッグサポートとして機能し、最大限に引き出せば安楽な姿勢が取れるオットマンシートにもなる。さらにフラップを上へ向ければ、後席に載せた荷物の落下を防ぐ荷物ストッパーとして日常の細かな不便を解消してくれる。
さらにスペーシアは、タントに備わらない後席アームレストと、車内の空気循環を助ける天井のサーキュレーターが標準装備となる。背もたれを水平位置まで前倒しできる助手席も日常的なシーンや車中泊などで役立つ場面が多い機能だ。
両車ともに高い使い勝手を備えた軽スーパーハイトワゴンであることは間違いない。強いて区別するならタントは子育てファミリー向けの特化型ワゴンであり、スペーシアは高い後席快適性と幅広い用途に対応する機能性を備えた汎用型ワゴンと言ってよいだろう。
ダイハツ タント X
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1755mm
ホイールベース=2460mm
車両重量=910kg
タイヤサイズ=155/65R14(前後)
スズキ スペーシア HYBRID X
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1785mm
ホイールベース=2460mm
車両重量=880kg
タイヤサイズ=155/65R14(前後)
燃費はスペーシアに軍配! パワートレインの選択幅ではタント


タントのエンジンは、引き続き自然吸気とターボの2種が用意され、スペックにも変更はない。対するスペーシアは、全グレードが自然吸気エンジン+マイルドハイブリッドの設定だ。
両車のWLTCモード平均燃費はタントの22.6km/L(Xグレード)に対して、スペーシア(ハイブリッドXグレード)は23.9km/Lとなる。最大トルク50Nmのモーターアシストが最大限に活きる市街地燃費はスペーシアの22.4km/Lに対して、タントは20.5km/Lだ。絶対的な燃費性能こそスペーシアが優れるが差はそれほど大きくない。
タントの高い燃費性能は、優れたエンジン燃焼技術と特殊構造の高効率CVTによってもたらされている。タントはターボモデルのWLTCモード平均燃費も20.9km/L(Xターボグレード)と非常に優れた数値だ。
燃費性能に加え発進加速性能で比較するならスペーシアが優位となる。しかし、余計な付加物を用いないことでコストを抑えながら高い燃費性能を備えているタントは、コストパフォーマンスの点で今でも十分な競争力を持っている。また、高速道路を多用するならターボが選べるタントの方がストレスを感じにくいはずだ。
ただし、乗り心地や静粛性など細かな点ではライバルに見劣りする点は否めない。2019年に登場した現行タントは8年目に突入した。それに対し、スペーシアがフルモデルチェンジしたのは2023年末だ。タントのDNGAシャシーのポテンシャルも燃費性能も、まだ新型車と十分に戦えるレベルにあるが、ホンダ N-BOXを仮想敵にすえる現行型スペーシアの静粛性や乗り心地の改善は著しい。
その一方で、スペーシアをはじめとするライバルの車両価格はどんどん上がっている。高いコスパはこれまでもタントの大きな武器だった。最小限の手入れで価格上昇を限りなく抑えた新型タントからは、手堅いコスパ戦略でライバルと戦っていく姿勢が窺える。
ダイハツ タント X
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン
排気量=658cc
最高出力=52ps/6900rpm
最大トルク=60Nm/3600rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=2WD(FF)
スズキ スペーシア HYBRID X
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=657cc
最高出力=49ps/6500rpm
最大トルク=58Nm/5000rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=2WD(FF)
タントの高いコスパは今でも魅力的! しかしリセールバリューも加味すると…




今回の改良でタントは自然吸気モデルが一律1万1000円の値上げとなった。ACCが標準装備となったターボモデルは、オプションの“スマートクルーズパック(5万5000円)”が追加されて6万500円の値上げとなる。
それにより改良型タントの新車価格は、自然吸気モデルの“X”が162万8000円、“Xターボ”が179万3000円。それに対してスペーシアの“ハイブリッドX”の新車価格は170万5000円だ。
選択するオプション装備次第では、さらに価格差が開く。カーナビゲーションシステムは両車が全グレードでオプション設定となるが、タントはディスプレイオーディオが8万8000円で装着できるのに対し、スペーシアに用意される“全方位モニター付メモリーナビゲーション”の価格は19万5800円と高額だ。
スペーシアのオプションナビはスタンドアローンでも使えるため、タントのディスプレイオーディオよりも高機能ではあるが割高感は拭えない。また、スペーシアにACCを追加するには“セーフティパッケージ(6万6000円)”オプションを選ぶ必要がある。
パワートレインの選択肢や装備選択の自由度はタントの方が高い。タントとスペーシアを同等の装備に整えた場合、タントの方が10万円前後安くなるうえ、ACCの装着を前提とすれば、タントのターボを選んだとしてもスペーシアとの価格差は3万円程度まで小さくなる。
加えて、改良で追加されたタントの特別仕様車は販売ターゲット拡大の狙いもあるはずだ。ブラック装飾で男性的なイメージを追加した特別仕様車“デイリーツール”は、女性的な印象にまとめられたスペーシアに対して大きなアドバンテージとなるだろう。
特別仕様車“デイリーツール”の価格は、ベースグレードである“X”および“Xターボ”に3万3000円をプラスするだけで選べる。自然吸気モデルなら、差額で外観を充実させても価格はスペーシアより安い。
ただし、リセールバリューまでを含めるとコスパの面では人気のスペーシアがやや優位な結果となりそうだ。これから新車購入する場合は、クルマを使う目的や使用期間などをしっかりと考慮して決めるとよいだろう。
車両本体価格
ダイハツ タント X:162万8000円
スズキ スペーシア HYBRID X:170万5000円
