「メタモルフォージ」構造により、ミニバンとピックアップトラックを1台で両立
マルチプレイは、全長4.45mのボディに、ミニバンの室内空間、SUVの力強さ、ピックアップの使い勝手を組み合わせたコンセプトカーだ。特定の市販モデルを予告するものではなく、フィアットはこのクルマを、今後の技術やアイデアを試す「アイデアのラボラトリー」と呼んでいる。
テーマにしたのは、仕事、学校、スポーツ、アウトドアと、1日のうちでも必要な空間や荷室の大きさが変わる家族の移動だ。1台のクルマでそれに応えるにはどうすればよいか、という問いから開発が始まった。

フィアット、アバルト、ランチアのCEOを務めるアルノー・ベローニ氏はこう話す。
「マルチプレイは、クルマを日々の暮らしで役立つものにするという、これからのフィアットにもちこみたい価値を表しています。家族のニーズは変わり続けています。このコンセプトで、それに合わせて形を変えられる解決策を探りました」

その解決策の中心となるのは、「Cピラー・メタモルフォージ」と呼ぶ構造だ。Cピラーを含むリヤのモジュールが専用のガイドに沿って前後にスライドし、ルーフのあるファミリー向けのミニバン仕様から、荷台をもつピックアップ仕様に変身する。

ミニバン仕様では、6つのシートに、多用途に使える「ペッセンジャーシート」を加えた6+1人乗りとなる。一方のピックアップスタイルでは4人乗りになり、自転車やスポーツ用品、アウトドアギアなど大きな荷物を荷台に積むことが可能となる。荷室は、必要なときだけ広げて使う機能という考え方だ。
リヤスポイラーもユニークだ。回転させるとバイクラックになり、ピックアップ仕様では自転車を2台まで積める。ひとつの部品に空力と実用の役割をもたせることで、外付けのアクセサリーを不要にしたというわけだ。
2代のムルティプラから続く「小さなボディに多くの席」の考え方を発展
マルチプレイは、外寸と室内空間の関係を見直した、フィアットの2台のモデルの流れをくんでいる。1956年の600ムルティプラは、全長約3.5mで6人が乗れた。1998年のムルティプラは、全長4m未満のボディに、2列で6つのシートを並べた。マルチプレイは、使い方に応じて変化する構造で、この空間づくりを発展させている。
3列目シートについては、現代の多人数乗りのクルマで使いにくくなりがちな点を見直した。効率のよいパッケージングによって、3列目には子どもなら2人、必要なときは大人1人が座れる。子どもたちが自分の空間をもちながら、親の目と手が届く範囲にいられる「家族のゾーン」をつくっている。
ペット用のスペースにもなる「ペッセンジャーシート」と、後ろ向きの寝椅子になる「サンシート」
ペットとパッセンジャー(乗員)を組み合わせた「ペッセンジャーシート」は、使い方を変えられるモジュール式のユニットだ。チャイルドシートの取り付け場所、ペット用のスペース、小さなテーブル、収納として使える。
また、ペッセンジャーシートのクッションの外側の部分は取り外してリードとして使え、ドアの収納には折りたたみ式のボウルが入る。そのほか、収納ポケットやゴムバンドなどが用意され、室内を整理するのに活躍してくれる。

助手席は、駐車中に「サンシート」に変えられる。シートを後ろ向きにし、ダッシュボードを背もたれにして、パノラミックルーフの下で寝椅子として使う。読書をしたり、休んだり、景色を楽しんだりするための空間だ。大きなガラス面とサイドウインドウ、パノラミックルーフにより、車内は明るく開放的な雰囲気となっている。

外装はスイカの皮、室内は果肉。イタリアの夏をモチーフにしたカラー
インテリアのカラーは、イタリアの夏と、みんなで過ごす時間をイメージしている。モチーフはスイカだ。鮮やかなグリーンのボディ色はスイカの皮を、室内の赤やピンクは果肉を表した。フロアは柔らかいピンクで、ペッセンジャーシートから子ども用のエリアにかけては、ターコイズを含むピクセル状のグラデーションを入れている。

ダッシュボードの水平な帯は、空と海が溶け合って見える地中海の水平線をモチーフにした。ボディ色を室内にも使うフィアットの伝統的な手法を再解釈し、ディスプレイも室内の構成に溶け込ませている。そのディスプレイはダッシュボードに組み込まれていて、クルマの電源を切ると存在が見えなくなる。

素材選びは、シンプルさと機能性を優先したもの。柔らかい部品の多くには単一素材の織物を使い、縫い目のない3Dニットでつくることで、廃棄物を減らしているという。また、子ども用とペット用のエリアには、同じく単一素材の防水仕上げが施された。



