世界初の量産ハイブリッド車として誕生したプリウス

初代プリウスの開発では、「21世紀のクルマをつくる」「トヨタのクルマづくりを変える」という2つのミッションが掲げられ、当時の自動車社会が抱えていた「環境」と「資源」の問題に向き合うことから開発がスタートした。

1997年10月に発表された初代には、「21世紀に間にあいました。」というキャッチコピーが使われた。

搭載されたのは、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせる「トヨタハイブリッドシステム(THS)」。ガソリン車と同等の走行性能を確保しながら、当時としては高い燃費性能を実現し、量産ハイブリッド乗用車という新しいカテゴリーを切り開いた。

「Prius」という車名は、ラテン語で「~に先立って」を意味する言葉に由来する。トヨタは「地球の未来を築いていくクルマを」という思いを込めて名付けたとしており、その後も新しいハイブリッド技術を投入するモデルとして進化を続けている。

プリウスの変遷

プリウスは1997年の初代登場から、現在まで5世代にわたって展開されてきた。

ここでは、各世代で採用された技術やボディスタイル、走行性能の変化に注目しながら初代から現行の5代目までの進化を振り返っていく。

初代プリウス(1997〜2003年)|世界初の量産ハイブリッド乗用車

初代プリウス

初代プリウスは1997年に登場した。

ボディは4ドアのセミノッチバックセダン。1.5Lガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた「トヨタハイブリッドシステム(THS)」を搭載し、10・15モード燃費28.0km/Lを実現した。

当時はハイブリッド車が現在ほど一般的ではなく、エンジンとモーターを使い分けながら走行する仕組みそのものが大きな特徴だった。

一方、燃費性能に加え、必要十分なサイズの車体、人に配慮したパッケージ、先進的な内外装デザインなども盛り込まれた。「21世紀に向けたクルマ」を形にすることが、開発の大きなテーマだった。

2000年にはマイナーチェンジを実施。同年7月から北米、9月から欧州でも販売が始まり、プリウスは日本国内から海外市場へと展開を広げていく。2000年11月までの世界累計販売台数は5万247台だった。

その後も販売を伸ばし、初代の世界販売台数は約12万3,000台に達している。

2代目プリウス(2003〜2009年)|プリウスらしいスタイルを確立

2代目プリウス

2003年9月、プリウスは初のフルモデルチェンジを迎えた。

大きく変わったのがボディスタイルである。初代の4ドアセダンから5ドアハッチバックへ移行し、ホイールベースを150mm延長。室内空間も拡大された。

デザインには、運転席付近を頂点に前後へ緩やかに下降する「トライアングルシルエット」を採用した。

空気抵抗の低減に加え、ひと目でプリウスと分かる外観を形成する要素となり、その後の世代にも受け継がれていく。

ハイブリッドシステムも進化した。

初代のTHSから、新世代の「THS II」へ変更。モーター出力を高めるなどシステム全体を強化し、10・15モード燃費は35.5km/Lまで向上した。燃費だけでなく、走行性能の向上も図られている。

さらに、駐車時のステアリング操作を支援するインテリジェントパーキングアシストなど、当時の先進技術も積極的に採用された。

販売面でも初代から大きく規模を拡大している。

トヨタによると、2代目の世界販売台数は約119万2,000台。なお、日本では2009年に3代目が登場したあとも「プリウスEX」として併売され、2011年12月まで生産が続けられた。

初代で誕生したハイブリッドカーとしてのプリウスが、デザインや使い勝手を含めてひとつの完成形へ近づいた世代といえる。

3代目プリウス(2009〜2015年)|1.8L化で燃費と走行性能を両立

3代目プリウス

2009年5月には3代目が発売された。

2代目で確立したトライアングルシルエットを継承しながら、ボディサイズをひとまわり拡大。空気抵抗係数はCd値0.25まで低減された。

パワートレーンにも大きな変更が加えられている。

エンジン排気量は、それまでの1.5Lから1.8Lへ拡大。システム全体の90%以上を新開発した「リダクション機構付THS II」を採用し、10・15モード燃費38.0km/Lを達成した。

排気量を拡大した背景には、高速走行時の燃費や走行性能の向上がある。トヨタは発売当時、38.0km/Lの燃費性能と2.4L車並みの動力性能を両立したとしていた。

また、3代目の時代にはプリウスの展開そのものも広がっていく。

2011年には、2列5人乗りと3列7人乗りを設定した「プリウスα」が登場。翌2012年には、家庭用電源などから充電できる「プリウスPHV」の市販モデルも発売された。

プリウスを中心に、異なる使い方に対応するモデルが増えていった時期でもある。

販売規模も大きく拡大した。トヨタの集計では、3代目単体で2013年5月末までに約168万8,000台を販売している。

ただし、この数字は3代目の販売終了までを集計した最終的な販売台数ではなく、2013年5月時点の途中経過となる。

4代目プリウス(2015〜2023年)|TNGA採用で走りを大きく進化

4代目プリウス

4代目プリウスは2015年12月に発売された。

この世代を特徴づけるのが、「TNGA(Toyota New Global Architecture)」の思想に基づいたクルマづくりである。

低重心パッケージを採用するとともに、ボディねじり剛性を従来比で約60%向上。リヤサスペンションにはダブルウィッシュボーン式を採用するなど、シャシーを含めて大幅な見直しが行われた。

ハイブリッドシステムも小型・軽量・高効率化が進み、エンジンの最大熱効率は40%を達成した。

「E」グレードではJC08モード40.8km/Lを実現し、歴代プリウスが重視してきた燃費性能をさらに高めている。

一方で、4代目では燃費以外の部分にも重点が置かれた。

低重心化や高剛性ボディによる走行性能の向上に加え、プリウスとして初めて電気式4WDの「E-Four」を設定。Toyota Safety Sense Pなどの予防安全技術も採用された。

プリウスの価値を「燃費の良いハイブリッドカー」から、走りや安全性能まで含めたクルマへ広げていった世代といえる。

市場からの反応も大きく、2015年12月の発売から約1カ月後には受注台数が約10万台に到達。月販目標1万2,000台に対して、約8倍の受注を集めた。

2018年にはマイナーチェンジを実施し、フロントやリヤのデザインを変更するとともに、Toyota Safety Senseを全車に標準装備するなど改良を重ねている。

5代目プリウス(2023年〜)|「Hybrid Reborn」で役割を再構築

5代目プリウス

現行の5代目プリウスは、2022年11月に世界初公開され、HEVが2023年1月10日に発売された。

開発コンセプトは「Hybrid Reborn」。

背景にあったのは、プリウス自身が広げてきたハイブリッド技術の普及である。

初代登場時にはプリウスそのものがハイブリッド車の象徴だったが、その後はトヨタのさまざまな車種へハイブリッドシステムが拡大した。コンパクトカーやSUV、ミニバンにもHEVが設定されるようになり、プリウスが担ってきたハイブリッド車普及の牽引役という役割は、ひとつの節目を迎えた。

そこで5代目では、従来からの環境性能に加え、「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」を重視した。

従来のモノフォルムシルエットを受け継ぎながら、ワイド&ローのスタンスへ変更。第2世代TNGAプラットフォームを採用し、19インチの大径タイヤも設定するなど、歴代モデルの中でもスポーティなプロポーションへと変化している。

パワートレーンには第5世代ハイブリッドシステムを採用。

HEVには1.8Lと2.0Lを設定し、2.0Lモデルでは従来型を大きく上回る動力性能を実現した。環境性能と走行性能を両立させる方向性が、より明確になっている。

2023年3月にはPHEVも発売。2.0Lエンジンと高出力モーター、大容量バッテリーを組み合わせ、「ハイパフォーマンスモデル」という位置づけが与えられた。

その後も改良が続けられており、2026年7月にはZグレードにアダプティブハイビームシステムを標準装備したほか、E-FourにSNOW EXTRAモードを追加。さらに全車に車速感応式オートパワードアロックを採用するなど、商品力が高められている。

プリウスPHV/PHEVの登場と進化

プリウスの歴史を振り返るうえで、もうひとつ重要なのがプラグインハイブリッドの存在だ。

通常のHEVは、エンジンや回生ブレーキなどを使って駆動用バッテリーに電気を蓄える。一方、PHV/PHEVでは外部電源からも充電できるため、バッテリーに蓄えた電気を使ってEV走行できる距離を確保できる。

なお、「PHV」と「PHEV」は呼び方が異なるものの、いずれもプラグインハイブリッド車を指す。トヨタの現行モデルでは「PHEV」の名称が使われている。

2012年|市販プリウスPHVが登場

2012年発売:プリウスPHV

プリウスPHVの市販モデルは、3代目プリウスをベースに2012年1月30日に発売された。

高容量・高出力のリチウムイオン電池を搭載し、EV走行換算距離は26.4km。

近距離では電気を中心に走り、充電した電力を使い切った後は通常のハイブリッド車として走行できる仕組みを採用した。

電気自動車とハイブリッド車、それぞれの特徴を組み合わせたモデルとして、プリウスの電動化をもう一段進めた存在だった。

2017年|EV走行距離を68.2kmへ拡大

2017年発売:プリウスPHV

2017年2月15日、プリウスPHVがフルモデルチェンジした。

駆動用バッテリーの容量拡大などにより、EV走行距離は68.2kmへ伸長。従来型の2倍を超える距離となった。

さらに、普通充電に加えて急速充電に対応したほか、ルーフに搭載した太陽電池で発電するソーラー充電システムも設定された。

外部充電によるEV走行をさらに活用できるモデルへと進化した世代だ。

2023年|現行PHEVはハイパフォーマンスモデルへ

2023年発売:プリウスPHEV

5代目では、名称表記がPHEVとなった。

2023年3月15日に発売された現行プリウスPHEVは、2.0Lエンジン、高出力モーター、大容量の駆動用バッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを搭載する。

特徴的なのは、PHEVの位置づけそのものだ。

トヨタは現行モデルを「プリウスのハイパフォーマンスモデル」として開発しており、環境性能に加えて力強い加速や走行性能も重視している。

初期のPHVではEVとして走行できる距離を広げることが大きなテーマだったが、現行型では電動化技術を走りの魅力にも生かす方向へと進化した。

プリウスそのものの「Hybrid Reborn」と同様に、PHEVにも新しい役割が与えられた形である。

プリウスの国内販売台数から見る普及の歩み

1997年に登場したプリウスは、その後どのように販売を伸ばしてきたのだろうか。

国内の年間販売台数を見ると、初代が販売されていた1998年は約1万7,700台。2代目が登場した翌2004年には約5万9,800台まで増加した。

大きく販売を伸ばしたのが、3代目が登場した2009年以降である。

ブランド通称名「プリウス」は2009年から2012年まで4年連続で登録車の年間販売台数トップとなった。年間の販売台数推移は以下のとおりだ。

プリウスの国内年間販売台数の推移(1997〜2025年)
年国内年間販売台数
1997年323台
1998年17,653台
1999年15,243台
2000年12,513台
2001年11,003台
2002年約6,700台
2003年約17,000台
2004年約59,800台
2005年約43,700台
2006年約48,600台
2007年約58,300台
2008年73,110台
2009年208,876台
2010年315,669台
2011年252,528台
2012年317,675台
2013年253,711台
2014年183,614台
2015年127,403台
2016年248,258台
2017年160,912台
2018年115,462台
2019年125,587台
2020年67,297台
2021年49,179台
2022年32,675台
2023年99,149台
2024年83,485台
2025年63,717台

なお、集計方法は年代によって異なり、2011年以降の一部数値にはプリウスαなど同一車名の派生モデルが含まれるため、すべてがプリウス単体を同一条件で比較した数字ではない。

販売台数が特に多かったのは2010年代前半だ。

2010年には31万5,669台を記録し、当時の年間販売記録を更新。さらに2012年には31万7,675台となり、ブランド通称名「プリウス」の年間販売台数として2010年を上回った。

その後は2013年の25万3,711台、2014年の18万3,614台、2015年の12万7,403台と減少する。

一方、4代目が発売された翌2016年には24万8,258台まで回復し、登録車の年間販売台数で再びトップとなった。

2017年以降は減少傾向となり、2022年には3万2,675台まで縮小している。この時期には、アクアやカローラ、SUVなどにもハイブリッド車の選択肢が広がり、トヨタの電動車ラインアップそのものが拡充していった。

5代目が本格的に販売された2023年には9万9,149台まで増加。2024年は8万3,485台、2025年は6万3,717台となっている。

約30年間の推移を見ると、プリウスは2009年以降に販売を大きく伸ばし、2010年代前半に高い販売実績を記録した。その後は減少傾向となったものの、5代目が発売された2023年には販売台数が再び増加している。

一方、プリウスの登場以降、トヨタのハイブリッド技術はコンパクトカーからSUV、ミニバン、商用車まで幅広いカテゴリーへ展開されてきた。

まとめ

1997年に登場した初代プリウスにとって、大きなテーマはハイブリッドという新しい仕組みを世の中に送り出すことだった。

2代目ではTHS IIとトライアングルシルエットを採用し、現在につながるプリウスのイメージを確立。3代目では1.8Lエンジンへ変更し、燃費性能と走行性能の両立をさらに進めた。

4代目になるとTNGAを採用し、低重心化やボディ剛性、サスペンションなど、クルマとしての基本性能にも重点が置かれるようになる。

そして現行の5代目では「Hybrid Reborn」を掲げ、環境性能を受け継ぎながら、デザインや走りといった新たな魅力を前面に打ち出している。

約30年の間に、ハイブリッドを取り巻く環境も大きく変化した。かつてはハイブリッドであること自体がプリウスの大きな特徴だったが、現在では幅広いカテゴリーでハイブリッド車を選べるようになっている。

だからこそ、現行プリウスでは「ハイブリッドカーであること」に加え、プリウスそのものを選ぶ理由が改めて問われるようになった。

車名の「Prius」には、「先駆け」という意味が込められている。

歴代モデルの変遷を振り返ると、プリウスはひとつの価値を守り続けてきたというより、その時代に求められるクルマの姿に合わせて役割を変えながら進化してきた。

ハイブリッドの普及を牽引してきたプリウスが、これからどのような「先駆け」を示していくのか。今後の進化にも注目したい。