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これは楽チン! 高級ツアラーに匹敵するウインドプロテクション。| キムコ ターセリーS 150

  • 2020/04/02
  • 大屋雄一
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都会の風景に違和感なく溶け込む上質なスタイリング。

1963年に創業した台湾の光陽工業が、1992年に立ち上げた自社ブランドがキムコ(KYMCO)である。同国で最も大きな二輪メーカーであり、現在は100か国以上で販売されているほか、BMWやカワサキにも製品を供給するなど、世界的にも高い技術力が認められている。今回試乗したのは、フロントに16インチタイヤを履くハイホイールスクーターのニューモデル、ターセリーSの150ccバージョンだ。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

キムコ・ターセリーS150……297,000円

 2006年から二輪車の駐車違反の取り締まりが強化されたこと、また2008年に発生したリーマンショックなどの影響により、瞬く間に終焉を迎えた平成のビッグスクーターブーム。2005年のピーク時には6万1000台も売れていたが、6年後の2011年には1万2000台にまで届出台数が落ち込んでしまった。
 ところが、最近になってこの軽二輪スクーターの人気が徐々に盛り返している。特に売れているのは、かつてのブームを牽引したフルサイズの250ccではなく、原付二種と車体を共有しているコンパクトな150ccモデルで、ホンダのPCX150、ヤマハのマジェスティSがこのジャンルのツートップとなっている。2018年度の届出台数は2万台にまで復活しており、さらに今年はホンダのシティアドベンチャースクーター、ADV150が加わったことで、その勢いは一層加速しているのだ。

試乗車は2020年の新色であるディープブルーメタリックで、6月15日に発売となる。
車体と同色のリヤボックスを標準装備する。利便性の高いワンキーシステムを採用。

 今回試乗したのは、2018年10月に日本でも販売が開始されたキムコのニューモデル、ターセリーSの150ccバージョンだ。フロントに16インチの大径タイヤを履くハイホイールスクーターで、石畳や荒れた路面が残るヨーロッパを中心に人気のカテゴリーである。ちなみに彼の地ではホンダのSHシリーズが大人気であり、2020年はフルモデルチェンジしてトラコン付きとなるなど独自の進化を遂げているが、日本での販売予定は立っていない。付け加えると、このSHシリーズは2013年にShモードという名前で125ccモデルが正規ラインナップに加わったことがあったが、間もなくディスコンに。大径ホイールゆえにシートはどうしても高くなりがちで、主に足着き性の悪さが日本で支持されなかった理由のようだ。
 なお、今回試乗したターセリーSは2020年6月から販売されるニューカラーのディープブルーメタリック。ブラウンのシート表皮が絶妙にマッチしており、イタリアのミラノでも様になりそうなたたずまいだ。

標準装備のリアボックスがありがたい。なお、このターセリーには最高出力11.3psの125ccバージョンもラインナップしている(275,000円)。
非常に背の高いウインドスクリーンも標準装備となる。
ライダー身長175cm:シート高は790mm。直接のライバルとなりそうなPCX150が764mmなのでその差は26mmだが、ターセリーSは座面がワイドなため足着き性は決していいとは言えない。だが、フロアボードがフラットなので圧倒的に乗り降りがしやすい。また、背筋がスッと伸びるポジションにより視点が高く、その分だけ周囲を広く見渡せるのも好印象だ。

効果抜群のウインドプロテクション

空冷でありながら耳に届くメカノイズは少なめで、エンジンは裏方に徹している。

 このターセリーS、ライダーを最初に戸惑わせるのは、足着き性よりも標準装着のトール&ワイドなウインドスクリーンの存在だ。身長175cmの私が立った状態で目の高さに上端が来るほどに大きく、しかもライダーとの距離が近いのでヘルメットのシールドを開けるとしばしば干渉するほどだ。押し引きのたびに頭や腕と接触するので、車体は軽いのに取り回しに苦労するという洗礼を誰もが受けるだろう。

 ところが、いざ発進すると印象が一変する。驚くレベルで走行風が当たらないだけでなく、不快な風切り音も一切ない。さらに高速道路でも試したが、背中を押されるような巻き込み風もなし。ナックルガードを含んでのウインドプロテクション能力は、BMWのRやKシリーズのスポーツツアラーに比肩するほどで、ヨーロッパでキムコが支持されている理由の一端を垣間見た気がした。

 エンジンは149.8ccの空冷SOHC4バルブ単気筒で、最高出力は14psを公称する。125ccクラスよりも発進時から力強く、不快なメカノイズや微振動はほとんどなし。最高速については、ウインドスクリーンによる空気抵抗が大きいためか、道路の勾配や風向きによってメーター読みで100km/hに届くかどうかという程度。水冷エンジンを搭載するPCX150やADV150がそこから前走車を追い越せるほど力強いことを考えると、わずかに物足りないと言えるかもしれない。とはいえ、90km/h付近であれば坦々と巡航できるし、先にも記したように防風効果が非常に優れているので、同じ距離を移動したときの疲れにくさでは圧勝だろう。

どこに駐めても絵になるスクーターというのはそうそうない。

 次にハンドリングについて。試乗日は強風注意報が出るほどの悪コンディションで、ウインドスクリーンによる影響を危惧したが、不思議とネガティブな要素は感じられなかった。おそらくステアリング軸とスクリーンとの距離が近いからではないだろうか。フロントに16インチ、リヤに14インチの大径ホイールを履くが、倒し込みからの舵角の付き方は意外にもクイックで、Uターンのような小回りも難なく行える。本領を発揮するのはやはり中~高速域で、安定成分を感じさせつつも旋回中のライン変更は自由自在。フレームはしなりを伴いながらも路面を捉え続け、大きなギャップを通過した際の収束も早い。

 ブレーキは前後にABSを採用する。このクラスは前後連動、もしくはフロントのみにABSを採用するモデル(PCX150など)が多いだけに、ターセリーSはこの部分にコストを掛けた稀有なスクーターと言えるだろう。実際、絶対制動力やコントロール性において不足はなく、ABSの作動性も良好。これ以上を望むとすればパーキングロックぐらいだろうか。

 装備については、USB電源を2個備えていたり、標準装備のリヤボックスと合わせてヘルメットが2個収納できるなど、トップクラスといっても過言ではない。メインキーでリヤボックスの施錠と解錠ができるのは純正品ならではであり、これが非常に便利だったことを記しておく。

 軽二輪のハイホイールスクーターとしては、2019年8月にプジョーが40台限定でツイート150 ABSスペシャルエディションを販売したが、通常のラインナップで日本で買えるのはこのターセリーS 150が唯一となる(2020年3月現在)。PCX150のABSモデルが40万5900円なのに対し、こちらはウインドスクリーンとリヤボックスまで付いて29万7000円と圧倒的に安く、しかも走りや利便性において引けを取らない。通勤通学だけでなくツーリングにも、というライダーにこそぜひ試してほしい1台だ。

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