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【原付チューン】Q.キャブレター車の2ストスクーターをFI化ってできるの? A. ヤマハBW'S100で試してみました。

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チューンド2ストは乗りづらい。世の中にはそう感じている人が大勢いると思う。とはいえ、KN-YOKOHAMAが製作したFI仕様のBW’S100改121ccは、ノーマルに匹敵するほど、イージーにしてフレンドリーだった。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
問い合わせ●KN-YOKOHAMA TEL045-593-9402 http://www.kn926.com/knyokohama
KN企画 TEL078-224-5230 https://www.kn926.net/

■現代の技術で運動性能に磨きをかける

外装類はKN-YOKOHAMAのイメージカラーでペイントしているものの、パターンはヤマハ純正を踏襲。ただし、車名の横にはFiの文字を追加し、車名下の文字はALTIMATE OFFROAD MACINEから、SCOOTERTUNING is NOT a CLIME!に変更。

 多種多様なスクーター用パーツを販売する一方で、JOG用シリンダー+削り出しクランクケースの140cc Vツインや、405cc並列3気筒のBW’Sなど、これまでに独創的なカスタムマシンを手がけて来たKN-YOKOHAMA。そんな同社の最新作が、2ストロークエンジンと電子制御式燃料噴射=FIを組み合わせた、BW’S100改121ccだ。

 サクッと書いてしまったが、2ストロークエンジン+FIという構成は、おそらく、日本のカスタム界では初の試みである。前述した2台と比較すると、見た目のインパクトは大きくないものの、内容を考えるなら、このBW’Sは相当に画期的な存在なのだ。ではどうして、KN-YOKOHAMAは2スト+FIにトライしたのだろうか。その理由を含めたマシン造りのコンセプトを、店長の佐々木孝志さんに聞いてみたい。

左がKN-YOKOHAMAの佐々木さんで、右がライター中村。2人とも大の2スト&レース好きで、チューニングに関する話題で大いに盛り上がった。

「きっかけは、スイスのスッター:Sutter Racing Technologyが製作した、2ストV4+FIのMMX500です。2018年のマン島TTに参戦したあのバイクの詳細を知って、そうか、その手があったかと。古くから培ってきた2ストチューンと、ここ数年で蓄積したFIチューンのノウハウが、ウチにはありますからね。2つを融合することで、新しい世界が開けると考えたわけです。ただしそれ以前の話として、私が大の2スト好きという事情もあります(笑)。スクーターの世界では進化が止まった感がある2ストですが、現代の技術を投入すれば、まだまだ改善できる余地はあるはずですから」

 現代の技術を投入して進化という視点で見るなら、内壁がニカジルメッキ仕上げのアルミシリンダー、KN企画が独自に開発したスポーツチャンバーや駆動系、海外の部品を用いて一新した足まわり、LED化が図られた灯火類などにも、同様のことが言えそうだ。

排気量を101→121ccに拡大するPORT9 BIGボアキットは3万470円。シリンダーは内壁がニカジルメッキ仕上げのアルミ製で、大径排気ポートは中央にリブを設置。ハイトをSTD+4mmとすることで、ロングストローククランクにも対応する。

「このマシンのコンセプトは、ズバリ”2020年型BW’S100”です。2ストのBW’Sは10年ほど前に販売が終了していますが、ヤマハが継続生産していたら、こうなっていたんじゃないかと。だから現状では、パワーはあえて控え目の14psにしています(同条件で計測したノーマル車は7ps前後)。その気になれば20ps以上は出せるのですが、今回は誰もが普通に乗れることを重視して、各部のセットアップを行いました」

強化ベルト:3190円、スーパーアルミビッグセカンダリキット:1万5950円、軽量CNCクラッチアウター:7128円、強化クラッチ:4290円など、駆動系はすべてKN企画製。ハイスピードプーリーとドライブフェイスも同社のJOG90用。

■FI化はそんなに大変ではない?

 ここからはFIに関する話。実際に2ストとFIを組み合わせるにあたって、何か苦労はあったのだろうか。

「ガソリンタンク内に燃料ポンプを設置したり、メインハーネスを製作したり、ピックアップセンサーを加工したりという作業は必要でしたが、4ストのシグナスX用のインジェクション/点火マップが入ったaRacerのフルコンと大容量インジェクター、KOSOのφ36mmスロットルを装着したら、始動は意外にアッサリでした。なお消費電力の増大を考慮して、発電機もシグナスX用の3層交流、レギュレターレクチファイヤはヤマハ純正のMOSFETを使っています」

シート下左側に設置されたフルコンは、データロガー機能も備えるaRacerのRC1 SUPER2GOLD:8万2500円。ちなみに同社の製品は、2019年からアジアロード選手権AP250クラスの指定ECUになっている。
φ36mmスロットルボディはKOSOのシグナスX系用:9900円。2ストエンジンに使用するにあたって、分離給油用のノズルを追加。なお2ストFI化のトータル費用は20万円+αだったという。

 そう語る佐々木さんではあるものの、これまでのチューニングで培った知識と技術がなければ、アッサリ始動はできなかっただろう。ちなみに、スロットルボディのφ36mmはFIならではの数値で、普段の同店がBW’S100用121ccキット用として推奨しているキャブレターは、純正+12mmのφ28mm。それ以上の口径のキャブレターでは、扱いやすい特性を構築する難易度が高いし、フロート室が存在するボディの大きさを考えると、レイアウト的に収まらないそうだ。

PCほど緻密な設定はできないが、セッティングはスマホでも行える。現状ではエンジン回転数や空燃比、電圧、エンジン温度などを表示しているが、内容は任意で変更することが可能だ。

「とりあえずの始動が出来て、そこからセッティングを進める際に最も大きな悩みの種になったのは、全開からスロットルを戻したときの制御でした。端的に言うとノッキングを解消するために、燃料噴射量を見直す必然性が出て来たのですが、空燃比を見ていると、最終的には既存の常識ではあり得ないほど濃くなった。やっぱり2ストは、4ストとは異なるノウハウが必要なのだなと感じました」

 これまでにキャブレターとFIの両方で、チューニングの可能性を追求して来た佐々木さんは、それぞれの美点をどう考えているのだろうか。

「それはなかなか答えづらい質問ですが……。FIの周辺環境が進化した現在では、キャブレターがFIに勝る要素はありません。FIなら分解作業を一切することなく、スマホやPCで簡単にセッティングが行えるし、O2センサーのフィードバックをベースにした補正もできる。それに加えてエンジン温度が上昇した際に、冷却用として意図的にガソリンを多めに送れることも、BW’Sのような空冷では有利な材料になります。とはいえ、FIをさんざんいじった後にキャブレターに接すると、よくぞここまでシンプルな構成、穴径の大小の変化だけで、エンジンを動かせるものだと改めて感心します。だからチューナーとしては、FIのほうが理想を追求しやすいですが、個人的には、キャブレターにも捨て難い魅力を感じますね」

多種多様な機能を備えるコンパクトな計器は、KOSOのRX2N+LCDマルチメーター:3万5090円。バックライトは8色から選択できる。
空燃比やエンジン温度など、さまざまな情報を表示する追加メーターは、aRacerのスポーツD:1万6390円。

■2ストはやっぱり最高に楽しい‼

 KN-YOKOHAMAのBW’Sを試乗した僕が、最初に驚いたのは、猛烈なパワフルさと速さだった。テストコースで確認した最高速は、STD+30km/h以上となる123km/h。この数値は現代の4スト150ccスクーターと同等と思えるけれど、KN-YOKOHAMAのBW’Sの数字がGPS計測であるのに対して、純正メーターには+10%前後の誤差があるから、実質的には現代の4スト150ccスクーターより10km/hほど速いし、最高速に至るまでの加速は明らかに鋭い。もっともしばらく走行を続けるうちに、僕は速さと同等以上に重要な要素、誰もが気軽に乗れそうな抜群の扱いやすさに、ちょっとした感動を覚えることとなった。

 何と言ったらいいのか、このBW’Sにはカスタムマシン特有の気遣いが不要なのである。始動性はどんな状況でも良好だし、チューンド2ストにありがちなシビアさは皆無で、スロットル操作に対する反応はどんな回転域でも従順。そして冷却方式が空冷なのに、ロードコースでの4回連続の最高速テストを含めてかなりのアケアケで走っても、エンジンや駆動系がタレる気配は皆無。だからこそ、カムシャフトやバルブ+スプリング、カムチェーンなどが存在しない、2ストならではの軽快で爽快なフィーリングが、思いっ切り堪能できるのだ。

ラジアルポンプ式のフロントブレーキマスター:8690円とCNCバックミラー:4950円は、KN企画が輸入代理店を務めるRCBの製品。

 もちろん足まわりの全面刷新も、このマシンの扱いやすさを語るうえでは重要な要素である。中でも僕が感心したのは、前後ブレーキのコントロール性とリアショックの凹凸吸収性だが、いずれにしても足まわりがノーマルのままだったら、増大したパワーを存分に楽しむことは難しかっただろう。

ステムとフロントフォークはシグナスX用。φ245mmディスクはENERGUMEN:2万3419円で、キャリパーは市販の対向式4ピストンを独自に加工。
リアショックはシャークファクトリーK1 HiLo:5万6100円。前後10→13インチに変更されたホイールは、アプリリアSR125/ヤマハ・エアロックス100からの流用だ。

 そんなKN-YOKOHAMAのBW’Sに異論を述べるとすれば、あまりにも扱いやすいため、カスタム感が希薄なこと。その話を佐々木さんにしてみたら、以下の答えが返って来た。

「誰もが気軽に乗れる2020年型BW’S100、という当初のコンセプトは実現できたので、今後は大幅なパワーアップを目指します。具体的には、スロットルボディはφ40mmのダウンドラフト仕様、インジェクターはツイン化を図る予定で、そこまでやるとパワーは30ps以上に到達するはずですから、カスタム感が満喫できるんじゃないでしょうか(笑)。でもFIの場合はきっちりセッティングを詰めると、それなりに扱いやすい特性が構築できるので、チューンド2スト+キャブレターのような、シビアな特性にはならないと思いますよ」

ハンドルまわりは約15mmローダウン。スポーツマフラーG03R:2万4980円はKN企画のオリジナルで、前後タイヤはダンロップTT93GPを選択する。

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