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2021年型ホンダCBR250RR 1000kmガチ試乗|気筒数が少なくても!ZX-25Rよりも優れているところをたくさん発見。 1/3

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正直言って、あまり大きな期待はしていなかった。とはいえ、パワーユニットを中心とする緻密な仕様変更を受け、二代目に進化したCBR250RRは、同時期に登場したカワサキZX-25Rに勝るとも劣らない魅力を備えていたのだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ホンダCBR250RR……82万1700円/85万4700円

日本仕様の2021年型CBR250RRは4種類のボディカラーを設定。試乗車のグランプリレッド(ストライプ)の価格は、ZX-25Rのスタンダードより3万円ほど高い85万4700円。なお純正アクセサリーパーツのクイックシフターは2万5300円。

■性能は圧倒的でも、爆発的なヒットには至らず……

アニメのエヴァンゲリオンを思わせるアグレッシブなフロントマスクは、好き嫌いがハッキリ分かれそう。ライン発光ランプの下に備わるヘッドライトはLED式で、左右それぞれにロー/ハイ切り替え機構が備わる。

 外観から初代との判別はつきづらいものの、2020年9月から発売が始まった二代目CBR250RRは、パワーユニットに関して、かなり緻密な仕様変更を受けている。初代+3psとなる41psの最高出力を獲得した並列2気筒エンジンは、ピストン+リング、バルブスプリング、コンロッド、バランサーなど、数多くの部品を刷新しているし、吸排気系やECUも新規開発。アシスト&スリッパークラッチの導入や、純正アクセサリーとしてクイックシフターを設定したことも、二代目ならではの特徴だ。

 とはいえ、2020年秋以降の日本で最も注目を集めている250ccスポーツモデルは、カワサキが同時期に投入した並列4気筒車のZX-25Rで、業界内でもCBR250RRの進化が話題になる機会はあまり多くはない。何だかデビューと同時に出鼻をくじかれてしまった感がある二代目だが、改めて振り返ると初代だって、街や峠で見かけることこそ多いものの、250ccクラスを制するほどの人気は獲得できなかったのである。

最高出力とその発生回転数が上がったとなれば、低回転域のトルクは細くなりそうなものだけれど、二代目CBR250RRのエンジンにそういった気配はまったくナシ。開け始めから初代を上回るパワーが実感できる。

 もっとも、2017年に初代CBR250RRに初試乗したとき、これはもしかしてNSR250Rの再来じゃないか?と僕は感じたのだ。ライバル勢と同様の構成を採用しながら、ライバル勢を凌駕する運動性能を備えていたことがNSRを思わせるし、戦闘的なライディングポジションや電子制御式スロットル、倒立式フォーク+アルミスイングアームなど、既存の250ccスポーツの常識とは一線を画する機構を導入したこともNSR的。さらにデビュー後のレース、JP250やAP250などで圧倒的なシェアを獲得したことも、NSRとCBR250RRに通じる要素だろう。

 ただし、1980年代後半~1990年代初頭の250ccクラスを席捲したNSRとは異なり、少なくとも日本では、CBR250RRは爆発的なヒットモデルにはならなかった。その最大の原因は、ライバル勢+10~20万円前後の価格と言われていたものの、CBR250RRの82万1700/85万4700円よりわずかに高い、82万5000/91万3000円のZX-25Rが大人気を獲得している事実を考えると、必ずしもそうではないような……。いずれにしても、二代目CBR250RRの船出は順風満帆とは言い難いのだが、このバイクで1000kmを走った今の僕は、ホンダを応援したい、最新4スト並列2気筒スポーツの魅力を多くの人に伝えたい、という気持ちにかられているのだった。

■ほとんどの場面でZX-25Rより速く走れそう

 最初に初代との違いを記しておくと、二代目のエンジンは全域でパワフルになっている。と言っても、ライバルに当たるYZF-R25やニンジャ250などと比較すれば、初代も十分にパワフルだったのだけれど、二代目は最高出力発生回転数が12500→13000rpmに上がっているにも関わらず、低中回転域だけを使っていても相当に速くて刺激的だし、回したら回したぶんだけモリモリと力が湧いてくる。言葉としては適切ではないかもしれないが、二代目のエンジンはイキがよくて、どんな領域でもスロットルを開けることが楽しいのだ。

 では僕を含めた多くのライダーが気になる、ZX-25Rと比べての印象はどうかと言うと、まず親しみやすさは五分五分といったところ。サイドスタンドを払っての引き起こしやハンドリングの軽さは、車重が15/16kg軽くてエンジン幅が狭いCBR250RRが優位だが、ライディングポジションは上半身の前傾がユルめのZX-25Rのほうが気軽。まあでも、このあたりの感じ方は乗り手によって異なるもので、ミドル以上の並列4気筒車のオーナーがZX-25Rを体験したら、あらゆる挙動を軽く感じるだろうし、サーキットを前提としたCBR600RR/1000RR-Rと比べれば、CBR250RRのライディングポジションはフレンドリーな部類に入ると思う。

 続いては2台の運動性能の話だが、これはなかなか表現が難しい。先にお断りしておくと、僕はZX-25Rの乗り味を否定するつもりは微塵もないのである。それどころか、最新の技術でよくぞクォーターマルチを復活させてくれたと思っているし、近年の250ccスポーツの定番と言うべき並列2気筒とはまったく異なる、懐かしくて新しいエンジンフィーリングには大いに心を動かされた。でもCBR250RRでさまざまな場面を走ってみると、あら、ZX-25Rってあんまり速くなかったのかも……という気がして来るのだ。

 逆に言うなら、CBR250RRは速い!と感じることが多かったのである。具体的には、ZX-25Rでは助走区間に過ぎない8000rpm以下を使っていても、CBR250RRは濃厚なトラクションと共に車体がグングン前へ進んで行くし、車重の軽さとエンジン幅の狭さに加えて、ジャイロ効果の少なさや前輪荷重の高さが功を奏しているようで、コーナリングは明らかにZX-25Rよりシャープ。そういった特性だからか、峠道をムキになって走っている最中にふとスピードメーターを見ると、ZX-25Rは意外に遅い……と感じることがあったのだが、CBR250RRはその逆というケースが少なくなかった。

 もちろん、超高回転域が存分に使える場面なら、2台に対する印象は変わって来るだろう。とはいえ、一般公道にそんな場面はめったに存在しないし、あったとしてもCBR250RRが完敗するとは思えない。なおパワーウェイトレシオを算出すると、初代CBR250RRは4.394kg/ps、二代目は4.097kg/ps、ZX-25Rは4.088kg/psだから、CBR250RRが仕様変更を受けていなかったら、僕の中でのZX-25Rの評価はもっと高くなったのかもしれない。

■史上最高の4スト250cc並列2気筒車

 さて、速さの話が長くなったけれど、初代やZX-25Rとの性能差は抜きにしても、僕は二代目CBR250RRにかなりの魅力を感じている。ライディングポジションが程よく戦闘的で、エンジンが弾けるような感触で回り、車体が乗り手の意思に忠実に反応し、それでいてパワーが暴力的ではないこのバイクに乗っていると、どんな状況でも気分が自然に高揚して来るのだから。言ってみれば二代目CBR250RRは、ワクワク感が堪能しやすいライトウェイトスポーツなのだが、おそらく開発陣に心地いいフィーリングの演出という意識はほとんどなく、4スト250cc並列2気筒車という枠の中で、ただひたすらに運動性能を追求したのだと思う。

 そして4スト250cc並列2気筒車という枠の中で考えるなら、CBR250RRは初代も二代目も、市販車で史上最高の運動性能を獲得しているのだ。サクッと書いてしまったが、これってスゴいことではないだろうか。と言っても一昔前の4スト250cc並列2気筒車は、実用的なキャラクターが多かったし、往年のホンダ製250ccスポーツモデルを振り返ると、CB72やCB250、ホークシリーズなどは、いずれも300~400ccの兄貴分と基本設計を共有していた。でもCBR250RRは、実用性にはあまり執着していないし、すべての部品を専用開発している。冒頭で述べたように、市場での人気はZX-25Rに押されがちでも、このマシンにかけるホンダの意気込み、そして二代目で行われた真摯な熟成を理解すると、個人的にはどうしても肩入れしたくなってしまうのである。

 ただし、運動性能を徹底追及したバイクは、ツーリングでは何らかのマイナス要素を感じることが通例で、二代目CBR250RRも長距離走行がすこぶる快適というわけではなかった。その詳細は第二回目で報告したい。

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