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林道巡りに頼もしい。フルチェンジCRF250L〈s〉の魅力に迫る!

  • 2021/02/22
  • 大屋雄一
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2012年にデビューし、2013年に前後17インチのCRF250M、2017年にローダウン仕様のタイプLDと、大型スクリーンや大容量タンクを装備したCRF250ラリーを追加するなど、順調にラインナップを拡充。世界中で約13万台も販売されたのがCRF250Lシリーズだ。9シーズン目の2021年、ベーシックモデルのCRF250LとCRF250ラリーがついにフルモデルチェンジを実施した。徹底的な軽量化と出力特性の見直しにより、オンロードでの扱いやすさはそのままにオフロードでの走破性を向上。今回試乗したのはCRF250Lで、前後のサスストロークを伸張した〈s〉タイプだ。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ・CRF250L〈S〉……599,500円

競技用モトクロスマシンCRF450Rのイメージを踏襲したスタイリングに。スチール製ツインチューブフレームは従来型をベースに横剛性を23%ダウンするなど剛性バランスを最適化し、2,150gもの減量に成功。さらにエンジン搭載位置を20mm上げつつドレンボルトの位置を10mm上方に移設するなどして、最低地上高を30mmアップしている。
車体色は写真の〈s〉タイプ、低シート高モデルのSTDともエクストリームレッドのみを設定。

グレードの呼称が変更され、従来のSTDが〈s〉タイプに

 インプレッションに入る前に、まずは少々ややこしい説明をさせてほしい。CRF250Lには、2017年から前後サスを変更してシート高を45mm下げたローダウン仕様の〝タイプLD〟が同価格にて設定されていた。このタイプLDが登場する以前は、純正アクセサリーとして約8万円もするローダウンキットが用意されていたほどなので、CRF250Lの低シート高化はユーザーにとって切実な願いだったのだ。
 当シリーズの販売台数トップは日本市場であり、こうした声をホンダは無視できなかったのだろう。フルモデルチェンジした新型でも、前後サスの仕様違いによってシート高の異なる2種類のモデルを用意した。そして、低い方をSTD(無印)、高い方を〈s〉と呼称を変更したのだ。シート高を含めた相関図は以下のようになる。

・従来型STD:875mm(250/240mm)→新型〈s〉:880mm(260/260mm)
・従来型タイプLD:830mm(200/180mm)→新型STD:830mm(235/230mm)
※( )内は前後のホイールトラベル量

 低シート高モデルの方は従来型からシート高は変わっておらず、付け加えると830mmというデータは足着き性の高さで評判のいいヤマハのセロー250と同値だ。なお、基本設計はシート高の高い〈s〉をベースに行われたということで、今回はその〈s〉を試乗することにした。

エンジンがたくましく、表情が豊かになった

 新型における最大のトピックは、ABSを追加装備しながら従来型よりも軽量になったことだ。具体的には従来型STDが144kgだったのに対し、今回試乗した新型〈s〉は140kgに。ちなみにCRF250ラリーの方には従来からABS仕様がタイプ設定されていて、それによる重量差は2kgだから、軽量化に対する執念は相当なものだ。加えてホイールトラベル量を伸張し、〈s〉は前後とも260mmとなった。これらの改良は全てオフロード性能の強化のためという。
 今から9年前の2012年、デビューしたばかりのCRF250Lに試乗したことがある。まだ併売されていた空冷のXR230より4万3050円も安く登場したので話題となったが、オンロードでの性能を優先したそれはXR230より21kgも重かったため、林道など未舗装路で振り回す気になれなかった。実際に走ってみても、ワインディングロードでは他のデュアルパーパスよりも気持ち良くペースを上げられるが、いざダートに入ると車重の重さもあってかフロントが流れやすく、何となく恐くて積極的に走ろうという気になれなかった。
 そうした良ろしくない記憶を思い出しつつ新型に試乗したところ、ここまでイメージが変わるのかと正直驚かされた。まずはエンジンから。従来型もベースとなったCBR250Rに対して低中回転域を重視したセッティングとされていたが、新型はさらに燃焼一発ごとの蹴り出し感が強まり、高回転域にかけての伸び上がりも向上している。同じ水冷シングルのKTM・250アドベンチャーほど快活なフィーリングではないが、従来型よりも回転数ごとの表情が豊かになったような印象を受けた。

ハンドリングもいい。

 前後サスの動き出しがスムーズなため、スロットルのオンオフで発生する車体のピッチングが自然であり、倒し込みのきっかけを作りやすい。そして、何より実感するのはフレームのしなやかさだ。路面から強い外乱を受けても、ステアリングヘッドを中心としたフロントセクションがそれをうまくいなし、前輪の進行方向を乱すことがない。これはサスペンションの性能だけでは達成しえない領域で、やっとオフロードバイクらしくなったと感じた。
 このフレームのしなやかさは、ワインディングロードでは接地感の向上につながり、記憶の中の比較では明らかに従来型よりも安心感と楽しさが増している。そして、ダートではホイールトラベル量を伸張した前後サスと合わせて路面を捉え続けてくれ、特にフロントはグリップを失いにくくなった。つまり、初期型を試乗したときに感じた恐さは、車重だけでなくフレーム剛性の高さにも起因していたようだ。
 エンジンについて付け加えると、ダートではスロットルを戻す方向での忠実な反応に何度も助けられた。リヤタイヤのスライド量を調整しやすく、これならトラクションコントロールなんて必要ないのでは、などと思えるほどだ。
 ブレーキは、ワインディングロードの下りではもう少しフロントの効力が高くてもいいかなと思えるが、ダート走行を含めたトータルで考えるとバランスはいいと言える。ついに標準装備となったABSは介入が自然で、リヤのみカットできるシステムもオフロードを積極的に走りたい向きにはありがたいだろう。
 従来型から10万1620円もアップした車両価格を見て驚いた人も多いだろうが、刷新されたシャシーやABSの標準装備化、テールランプを除く灯火類のLED化、新排ガス規制対策などを考えると納得もできよう。見た目から受けるイメージと走りがついに合致した新型CRF250L、今年は軽二輪販売台数ランキングのトップ10入りは間違いない。

ライディングポジション&足着き性(175cm/64kg)

ステップ位置がわずかに後退したことで、収まりのいい位置に座るとシートベルトの存在が気になるようになった。とはいえ、デュアルパーパスとしてのまとまりは優秀で、左右45度ずつの大きなハンドル切れ角も林道巡りで頼もしい。
シート高はSTDの830mmに対して50mm高い880mmに設定。乗車1Gでの沈み込みが大きいため、足着き性は身長だけでなく体重や積載量によっても大きく左右される。

ディテール解説

2011年に登場したCBR250Rに端を発する249ccの水冷DOHC4バルブ単気筒。二輪車世界初となるローラーロッカーアームやオフセットシリンダーなどを採用する。新型は最高出力、最大トルクをそのままに、インテーク側のカムシャフトを変更。合わせて吸排気系や点火時期の最適化により、市街地やオフロード走行で多用する低中回転域を重視した出力特性に。
新たにアシストスリッパークラッチを採用。6段ミッションは1~5速ギヤをローレシオ化し、クルージングで多用する6速ギヤをハイレシオ化。さらにシフトインジケーター用のピックアップを追加している。
〈s〉タイプは従来のSTDに対してホイールトラベル量をフロントで10mm、リヤで20mm伸張し、前後とも260mmとなった。倒立式フロントフォークは従来と同じショーワ製のセパレートファンクションタイプ。フロントディスクは初代から不変のφ256mmウェーブタイプで、これにニッシン製のピンスライド片押し式2ピストンキャリパーを組み合わせる。
アルミ製のスイングアームは形状および肉厚の見直しにより横剛性を23%、ねじり剛性を17%ダウン。重量は550g軽くなっている。リヤサスはレシオ最適化のためリンクとコンロッドを変更。ホイールリムはブラックアルマイト+ポリッシュ仕上げ。リヤブレーキはマスターシリンダーがカップ一体型となり、標準装備となったABSはリヤの介入をカットできるモード切り替え機能付きだ。
燃料タンクのスリム化によって軽快な操縦性を実現。ハンドルバーは絞り角が増やされている。ハザードスイッチは左から右へ。ボトムブラケットは従来のスチール製からアルミ鍛造製となり、730gも軽くなっている。
タコメーター、燃料残量計をバーグラフ式としたモノクロLCDメーター。新型ではギヤポジションインジケーターと平均燃費計が追加され、速度計の文字が17mmから23mmと大型化。メーター自体も70g軽くなっている。
薄型LEDヘッドライトを採用し、従来比で110gの軽量化を達成。前後ウインカーもLEDとなり、さらにステー部をフレキシブルラバーマウント構造としている。
灯火類はテール&ブレーキランプのみフィラメント球を継続。急制動時にウインカーが左右同時に高速で点滅するエマージェンシーストップシグナルを採用する。
シートレールからの全面的な変更と座面前方のスリム化により、最低地上高を確保しながら足着き性を高めている。
シートは前方のフックボルト2本を緩めて取り外す仕組みだ。

CRF250L〈s〉 主要諸元

車名・型式 ホンダ・2BK-MD47
全長(mm) 2,210〔2,230〕
全幅(mm) 820
全高(mm) 1,160〔1,200〕
軸距(mm) 1,440〔1,455〕
最低地上高(mm) 245〔285〕
シート高(mm) 830〔880〕
車両重量(kg) 140
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L)
 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 46.0(60)〈2名乗車時〉
 WMTCモード値(クラス) 34.8(クラス 2-2)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 2.3
エンジン型式 MD47E
エンジン種類 水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
総排気量(cm3) 249
内径×行程(mm) 76.0×55.0
圧縮比 10.7:1
最高出力(kW[PS]/rpm) 18[24]/9,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 23[2.3]/6,500
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 7.8
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比
 1速 3.538
 2速 2.250
 3速 1.650
 4速 1.346
 5速 1.115
 6速 0.925
減速比(1次/2次) 2.807/2.857
キャスター角(度) 27° 30′
トレール量(mm) 109
タイヤ
 前 80/100-21M/C 51P
 後 120/80-18M/C 62P
ブレーキ形式
 前 油圧式ディスク(ABS)
 後 油圧式ディスク(ABS リアキャンセル機能付き)
懸架方式
 前 テレスコピック式(倒立サス)
 後 スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式 セミダブルクレードル

製造国 タイ
※〔 〕内は〈s〉

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