USオデッセイをベースにタイプRを上回るパワフルさを実現!
車種を選ばないハーネスキットでタイプRのK20Cスワップ
FK2型シビックタイプRから採用された、2.0L直噴ターボのK20C型エンジン。ポート噴射のK20A型や2.4LのK24A型と比べ、制御面のハードルが高く、エンジンスワップは難しいとされてきたユニットだ。高性能なフルコンと専門知識を持つチューナーが扱えば不可能ではないが、コストや時間の面で手軽とは言い難かった。
しかし、そこに風穴を開け、“どんな車両にもK20Cをスワップできる”新たな道筋を示したのが、ホンダ系ECUメーカーであるHONDATA(ホンダータ)の『フラッシュプロ』と、JDi(ジョーダン・ディストリビューター)のコンバージョンハーネスだ。

両社は2025年のSEMAショーで、それぞれK20Cを搭載したデモカーを出展。ホンダータが製作したEKシビックについても追ってレポート予定だが、今回はジョーダン・ディストリビューターが製作したUSオデッセイを紹介しよう。

車両製作を主導したのは、ジョーダン・ディストリビューター代表のトレーシー・ジョーダン。そして、その意向に沿って数々のカスタムワークを手掛けたのが、ビシモト・エンジニアリングのビシ・エゼローハだ。

ビシモトといえば、過去にJ35型V6ターボを搭載し、1000ps超えの強烈なオデッセイを製作したことで知られる存在。だが、今回のオデッセイは車高を落とし、タイプR用の純正オプションホイールを履く程度で、見た目はほぼノーマルと言っていい。その狙いについて、車両オーナーでもあるトレーシーが説明してくれた。
「私はK20C用コンバージョンハーネスを開発する過程で、2年ほどビシとデモカー製作について相談を重ねてきました。私自身がビシのオデッセイを気に入っていたことも大きな理由ですが、あえてミニバンをベースにすることで、“本当にどんな車種にもK20Cを搭載できる”ことをアピールしたかったのです。
そして、もうひとつのチャレンジが、K20Cも6速MTも、まるでメーカーからそういう仕様で出荷されたかのように見せることでした。ショー映えよりも、“いかに普通に見えるか”にこだわりました」。


搭載されるのは、FK8型シビックタイプR由来のK20C型エンジンと6速MT。制御には、ホンダータがK20Cスワップ用に新開発したプラグインECU『フラッシュプロ』と、JDiが開発したコンバージョンハーネスキットを使用している。ただし、いずれも製品版ではなく、ワンオフ配線によって“ファクトリーメイド感”を演出しているのがポイントだ。

エンジンの支持はワンオフブラケットとハスポート製マウントで行なうが、純正ECUの移設やエアコン配管の作り直しなど、作業範囲は広い。さらに、ミツビシ製ターボチャージャーのステージ2アップグレードで純正タービン性能を高め、燃料系にはホンダータの『キャンフレックス』を導入。最高出力は550hpオーバーを想定している。

フロントバンパーのロワグリル越しにかろうじて見えるインタークーラーはPRL製。ビシモトの過去作がインタークーラーを大胆に見せつけるスタイルだったのに対し、今回は対照的に控えめな仕上がりだ。

エクステリアで唯一強く主張するのが、タイプRをオマージュした三連テール。ファンクションワーク製マフラーとワンオフエキゾーストを組み合わせ、後続車に“ただのミニバンではない”ことをさりげなく示している。

ホイールは、アメリカでホンダ純正アクセサリー(ディーラーオプション)として設定されている、タイプR用の鍛造19インチを装着。スポークに刻まれた“TYPE R”ロゴと赤いセンターキャップが、控えめながら確かな存在感を放つ。タイヤはトーヨー・プロクセスR888R。BCレーシング製車高調でローダウンされているが、その変化もあくまで自然な範囲に収められている。



インテリアは、現行モデルとしての快適装備を残しつつマニュアルシフト化を実現。赤いシートベルトもタイプRを連想させる演出だ。シフターはシビックタイプR純正を流用し、シフターケーブルとシフトノブにはアキュイティ製を採用。さらに、ウィルウッド製の吊り下げペダルを使って油圧クラッチを成立させている。
もっとも、もともとMT設定のない車両だけに、この部分がビシモトにとって最も苦労したポイントだったという。室内側ヒューズボックスの移設など、細かな加工の連続だったが、その結果として得られた純正然とした仕上がりは見事のひと言だ。

見た目はごく普通のミニバン。しかし、その中身にはタイプR由来の強心臓とスティックシフトを秘める。意外性が際立つこの1台は、まさに“オデッセイ・タイプR”と呼ぶにふさわしい存在だ。
メーカーが作らないなら、自分たちで作る…。そんなビルダー魂が、またひとつ夢のあるクルマを生み出した。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI
