乗り心地が変わった新型CX-5に、走りの楽しさは残っているのか

マツダ・新型CX-5「G」

試乗を終えた後、CX-5開発主査の山口浩一郎氏にひとつの質問をぶつけた。

「まるでマツダ車じゃないみたいですね。しかし、ワイディングなどでの走りの楽しさはどうなんでしょう?」

それは、新型CX-5を横浜の街中で走らせたあとの、率直な疑問だった。ステアリングは軽くなっていた。後席は広くなっていた。乗り心地は明らかにソフトになっていた。特に後席の乗り心地は素晴らしいと感じた。しかし、自動車の世界に長年ある「常識」。乗り心地を柔らかくすれば走りのシャープさが失われ、ステアリングを軽くすれば手応えが薄くなる。結果的に走りを楽しめないパターンが多いという常識だ。

新型CX-5の開発責任者、山口浩一郎氏

山口氏はやはりそうきたかと軽くニコリとしながら即答した。

「新型CX-5でも、もちろん走りの楽しさはちゃんと生かされていますよ」

その言葉の確信に満ちた響きが、ずっと頭に残っている。もしそれが事実なら、新型CX-5は単なる「乗り心地の改善版」ではなく、従来の二律背反を乗り越え、自動車の新たな常識を作った一台になるかもしれない。

なぜそのような疑問を投げかけたのか、記していこう。

新型CX-5:全長4690mm×全幅1860mm×全高1695mm、ホイールベース2815mm

従来のマツダ車とは違う、軽やかな第一印象

新型CX-5の運転席に収まり、スターターボタンを押す。マイルドハイブリッドと組み合わせたエンジンは静かに目覚めた。

シフトパターンが変わったことにもすぐ気付く。賛否両論あった逆L字型が見送られ、シンプルなPRNDストレートになった。直感的にDレンジへ操作できる。これは多くの人にとって合理的な判断だろう。

シフトパターンは、シンプルなPRNDストレートに変更された。

駐車場から動き始めた最初の数秒で、明確な「これまでのマツダ車との違い」を覚えた。

ステアリングが、軽いのだ。

批判ではない。驚きだ。最小のマツダ2から国内最大のCX-80まで、これまでマツダ車に乗るたびに共通して感じてきた「ステアリングの重さ」が、まったく感じられない。「これ、本当にマツダか?」と思った。

軽いけれど、手応えがないわけではない。そのギリギリを狙っているのも感じられる。走り続けると、その「軽さ」がネガティブではないことがわかってきた。アクセルに対するレスポンスも、ステアリング操作に対するクルマの向きを変える動きもCX-5の大きさから受ける印象よりも大いに軽やかで、ステアリングの軽さにちょうどバランスしている。また、これまでのマツダ車同様、高速道路のインターチェンジのような連続したカーブでも、切った舵角をキープすれば自然とラインをトレースしてくれる安心感はある。この良さがしっかり生かされているのにも安心した。

「思った通り切っただけ曲がってくれる」という実に自然な動きは、美味しい水や空気のように、気付きにくいけれどありがたいものなのだ。

細かく観察すると、連続コーナーをリズミカルに走る際にステアリングが戻ろうとする力がやや強めに感じられた。エンジニアに確認すると、パワーステアリングの制御で戻し側アシストを強めに設定しているとのことだった。運転に不慣れな人にも楽に安心してもらう狙いというが、個人的にはもう少し自分の力で戻したい、とは感じた。

マツダ・新型CX-5「G」
マツダ・新型CX-5「G」
マツダ・新型CX-5「G」

後席でこそ実感した、CX-5の大きな進化

マツダ・新型CX-5「L」

さらに驚きだったのは後席での体験だ。

まず乗り込む動作が大幅に楽になった。後席ドアの開口部広くなっただけではない。リアタイヤが後方へ移動したことで、これまでお尻を車内に滑り込ませる際、邪魔になっていたタイヤハウスのドア開口部への張り出しが小さくなっているのだ。チャイルドシートの着脱などにも大いに嬉しい進化だろう。

座ってみると、足下の広さが明らかだ。ニークリアランスが旧型比でおよそ倍にも広がっているのは数字で知っていたが、体で感じるとその違いは明確だ。後席ヘッドルームも増えて余裕を十分に感じられる。

全長は2代目比115mm増の4690mm、ホイールベースも同じく115mm伸びて2815mmとなった。

この数字は「全体的な大型化」ではない。開発陣が明言しているように、拡大分は丸ごと後席スペースと荷室に充当されたから実現したのだ。

ホイールベースは延長され、後席の乗降性や居住性向上した。新型CX-5の大きな進化ポイントだ。

その結果として、後席ニークリアランスは67mm→131mmへ64mm拡大。後席ヘッドルームは991mm→1020mmへ29mm増加。荷室長(後席使用時)は949mm→994mmへ45mm増加。ベビーカーを寝かせて縦向きにも積み込めるようになった。

単に数値を競合より大きくしようとしたのではなく、「どこが何センチ広がれば、どういう使い方が変わるか」という具体的な生活場面の変化を想定しながら設計された。それが、実質につながる細かな気遣いだ。

マツダ・新型CX-5「L」

柔らかいのに、だらしなくない乗り心地

そして走り出すと、その後席の乗り心地の変わりようがさらに大きな違いだと気付く。

路面のつなぎ目を踏んでも、「ガツン」と突き上げてこない。確実にカドが取れたしなやかさだ。しかもその収まりも早く、フワンフワンとした柔らかさではなく、素早く落ち着く。これはドライバー席で感じた、マツダ車らしからぬ柔らかさは、後席でこそ、より顕著に感じられた。

ステアリングは軽く、乗り心地は明らかにソフトになっている。

試乗直前に乗ってきたCX-60が「スポーツカー的なドシッとした硬さ」に対し、新型CX-5は「上質なセダンのしなやかさ」とでも言うべきベクトルの違いが見えてきた。

この乗り心地を実現させるために、スプリングを柔らかくし、ダンパー外径をφ51からφ55へ拡大。内部のガス圧やバルブ構造を徹底的に最適化。その結果として「初期の動きから減衰力を発生させる」ダンパーにより、スプリングが柔らかくても、減衰が即座に立ち上がる。「ハンドリングのためのスプリングの硬さ」に頼らない足のおかげで、乗り心地の良さを手に入れた。これに合わせ、シートも見直され、ソフトな乗り心地にあった柔らかいけどしっかりした座り心地が得られている。

これはステアリングの軽さにも関係するという。硬い乗り心地ではドライバーが自身の身体を支えるためにある程度のハンドルの重さが必要だが、フラットな乗り心地のおかげで軽いハンドルでも不安無くコーナーを抜けることを実現できたのだという。

減速時の動きも、電動ブースターの採用とその制御の最適化により、より自然な減速度を発生させやすくなっている。気付きにくいけれど、確実な進化を感じる部分だ。

マツダコネクトからGoogleへ。操作系も大きく変わった

上級グレードの「L」のインテリア。15.6インチのセンターディスプレイが備わる。

試乗中にもうひとつ印象的だったのが、インフォテインメントシステムの変化だ。

長年のマツダコネクト(マツコネ)に代わり、新型CX-5ではGoogleの車載システムを全面採用した。ナビゲーションにGoogleマップ、音声操作にGoogleアシスタント、アプリ配信にGoogle Play。ディスプレイは15.6インチ(または12.9インチ)の大画面が与えられ、操作系はこれまでのダイアルから音声操作と大画面タッチ+統合ステアリングスイッチへ移行した。

マツコネに対するユーザーの評価は、愛着を持つ熟練オーナーには支持される一方で、スマートフォンに慣れた世代には、なかなか親しんでもらうハードルが高かった。Googleシステムへの移行はその解消を明確に狙ったものだ。

新型CX-5はGoogleの車載システムを搭載する。

「OK Google」と話しかければ音声操作が起動し、ナビも空調も声で操作できる。ただし、Googleアシスタントが果たす役割は「音声スイッチ」に近い。登録されていない操作には対応せず、生成AI的な自由な対話は現時点では想定外だ。音声認識が優れているゆえに、言葉はわかっても意味を理解してくれないもどかしさを感じるシーンにいくつか出くわした。将来的にはGeminiへのアップデートも技術的に可能とのことで、進化の余地は残されている。なお、Google機能に必要な通信費は購入後1年間は無料とのことだ(2年目以降は現時点で未定)。

走行中でも頻繁に操作が必要なものは統合ステアリングスイッチに集約されている。音量調整、ドライブモード切り替え、カメラ起動などが手元で行える設計は、視線を前方から外さないという意味での安全哲学の表れでもある。

日本仕様はシンプルに整理。迷わず選べるCX-5へ

技術面以外で、もうひとつ注目したい変化がある。日本仕様のラインアップ構成だ。

新型CX-5の日本仕様は、パワーユニット1種類(2.5L+マイルドハイブリッド)、駆動方式2種類(2WD/4WD)、グレード3種類(L、G、S)。中間のGには快適・安全装備を束ねた「EXパッケージ」が設定され、実質4パターンから選べる構成だ。

中間グレードの「G」は、352万円〜。

CX-60がグレード・エンジン・パッケージの組み合わせで複雑な選択肢を抱えていたのとは対照的に、「迷わせない」ことを明確に意図した設計だ。外観のカスタマイズはスポーティ、エクスクルーシブ、アクティブの3テーマからディーラーオプションで選べる仕組みにし、標準仕様をシンプルに保っている。

上級グレードの「L」は、407万円〜。

価格帯はおよそ330万円(S/2WD)から431万円(L/4WD)。100万円の幅に全グレードが収まる。2代目(281万〜413万円)からベース価格は上がっているが、装備の充実や基本性能の進化、自動車製造を取り巻く様々な値上がりを考慮した致し方ない部分も含め、実質的な価値は向上していると感じる。

燃費はWLTCモードで2WDが15.2km/L、4WDが14.2km/L。2代目比で約10%の改善だ。将来的には2027年にSKYACTIV-Zエンジンを組み合わせたハイブリッドモデルの追加も予定されており、さらなる広がりも見込まれる。

新型CX-5のパワートレーンは「SKYACTIV-G2.5+マイルドハイブリッド」の仕様に一本化されている。 エンジンは最高出力:178ps(131kW)/6000-6200rpm 最大トルク237Nm/3800-4000rpm モーターは6.5ps/60.5Nm

次はワインディングで、走りの本質を確かめたい

改めて、山口主査の「走りの楽しさは、ちゃんと生かされている」という言葉を思い出し、峠のワインディング、長距離の高速巡航などのシーンでますます「走らせたい」と新型CX-5について思うようになった。「乗り心地とハンドリングの両立」が本物かどうか、是非試したい。

そう強く感じたのは、マツダがアピールする新型CX-5の魅力の数々が、見事に実車に落とし込まれ仕上がっていたのを試乗して確認できたからにほかならない。