連載

【CarGoodsMagazine】

自分のクルマがセミアクティブサスになる!

カヤバが投入した新しいセミアクティブサスペンションシステム『ActRide(アクトライド)』は、まさにその価値観の転換を感じさせる。そのシリーズの第一弾がハイエース用である。今回はその試乗を通し、アクトライドの解説をしていきたい。

まず驚かされるのは、しなやかさだ。入力に対して優しく、角を丸めるように受け止めながら、車体の不要な揺れはすっきりと抑えている。一般的に、減衰を柔らかくすれば乗り心地はよくなるが、揺れの収まりは悪くなる。逆に硬くすれば安定感は増すが、突き上げや不快感が増える。アクトライドはそこに真正面から向き合っているように感じる。一般的な固定減衰のショックでは難しかった領域を、リアルタイムに減衰を変化させるセミアクティブ制御によって成立させている。

システムはシンプル。ショックアブソーバー、コントローラー、そしてスマートフォン。コントローラーには6軸IMUセンサー(3軸加速度+3軸角速度)を内蔵、車両の動きを常時検知。

OEMの電子制御サスペンションでは、ブレーキ信号やアクセル開度、操舵角など車両側のCAN情報を使えるが、アクトライドでは車両ネットワークには接続せず、独立したシステムとして成立させている。こうすることで、クルマ本体の基本性能や安全性、そしてセキュリティを担保し続ける考え方だ。

特に印象的だったのは、ハイエースがまるで欧州車、もっと言ってしまうならばフランス車のような乗り味になっていたことだ。しっとりとしたストローク感。路面に吸い付くような接地感。ハンドルを切ったときの、ねっとりとした旋回フィール。独特の“湿度感のある乗り味”が、オートモード時のベーシックな性能として感じ取れる。もちろん、単に柔らかいだけではない。オートモードでは、路面入力、操舵、加減速に応じて減衰を自動制御する、いわゆるスカイフック制御を実現している。

試乗車は、ActRide装着車と標準の非装着車で実施。スポーティな設定では、少しゴツゴツするが、走って楽しめるサスペンションにも変わる。

スマホでサスペンション特性を簡単に設定

さらにもうひとつのハイライトとなるのが、それをユーザー自身がスマホで調整できることだ。
コンフォート、ノーマル、スポーツというプリセットに加え、自分好みの設定を6つまで保存可能。調整項目は「ベース減衰」「Ride(乗り心地)」「Handling(操縦性)」「Speed Adapt(車速連携)」の4つ。たとえば一人で走るときは、しっとりと快適なコンフォート寄りに。旅行などで家族と荷物が増えるときは、よりフラットで安定感重視に。高速道路ではSpeed Adaptを上げて、120km/h巡航時の安心感を高めるなどの使い分けが可能だ。

技術担当者は「音楽を選ぶような感覚」と表現していたが、まさにそうだと思う。
特にハイエースのように、仕事にも趣味にも、家族でも使うクルマでは、この価値は大きい。積載量も、同乗者も、シチュエーションも毎回違う。それに“一番ちょうどいい足”だけでなく、“好み”というその先のチョイスにも対応できる懐の深さがある。

価格は税込み26万9500円。だが、“乗り味を手に入れる”という意味では価値は高い。しかもカヤバは、国内&海外メーカー用に新車装着用ショックアブソーバーを開発・生産するメーカーでもあり、ベースとなるダンパー自体の性能が高い。その上に、ソレノイド式ならではの10msという高応答性や安全性。そこまで含めた完成度は高く、社外品なのに純正思想がしっかり根付いた製品なのだ。

操作はスマホの専用アプリからという簡単さ。気分によって音楽を変えるように、手軽にサスペンション特性を変えられる。
オートモードでも特性を変えられる。Rideを上げればフラットさを高める。Handlingを上げれば軽快でキビキビした動きに。家族で長距離走行なら、NormalのままRideの設定で好みの乗り心地に。高速道路では、RideやSpeed Adpt.で安定感を高める。

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