4ストロークのバイク用「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」の各エンジンオイルを用意し、温度上昇率や温度下降率、粘度などの違いや特性をテスト。用意したのは、某有名メーカーの3種類。果たしてそれぞれの違いを、あぶり出せるか!? PHOTO/REPORT●北秀昭(KITA Hideaki) ※この記事は月刊モト・チャンプ(2012年8月号)に掲載分を再編集したものです。
「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」の違いとは?
前回は、バイクの4ストローク用エンジンオイルの選び方の基本をレポート。
■【エンジンオイルを正しく選ぶ】「●×W-30」の数字とか、「鉱物油」「部分合成油」ってどんな意味?
今回は、「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」の違いを、実験を交えて説明しましょう。 ーーー実験データーーー ・オイルの粘度:すべて10W-30 ・実験室内の温度:22℃ ・実験したオイルのメーカー:某有名メーカー
街乗りに適したリーズナブルな「鉱物油」


≪鉱物油の一般的な特徴≫ 原油を精製し、添加剤を配合したエンジンオイル。低コストなため、販売価格を抑えられるのが大きなメリット。 合成油に比べ、高温(高回転)を持続すると、油膜が切れやすいという特性がある。そのため、街乗り用やツーリング用として用いるのがベスト。 【見た目&匂いは?】 実験に使用した鉱物油の色は、同じ茶色系の「部分合成油」や「100%化学合成油」に比べ、よーく見てみると、やや濃い目。匂いは刺激臭が強く、3種類の中で、一番きつい。
街乗りからスポーツ走行まで幅広く使える「部分化学合成油」


≪部分化学合成油の一般的な特徴≫ 「鉱物油」と「100%化学合成油」をブレンドし、添加剤を配合したエンジンオイル。価格は「100%化学合成油」よりも安く、「鉱物油」よりも高め。 「鉱物油」と「100%化学合成油」の中間レベルの性能を持っているため、街乗りからスポーツ走行まで幅広く用いられている。 【見た目&匂いは?】 写真の「部分化学合成油」の色は、「鉱物油」よりもやや薄めの茶色。ただし、「100%化学合成油」とほぼ同色で、肉眼では見分けがつかない。 匂いは「100%化学合成油」以上、「鉱物油」以下の刺激臭あり。
高回転を多用するレースや峠の走行にもおススメの「100%化学合成油」


≪100%化学合成油の一般的な特徴≫ 原油から精製したオイルを化学分解・化学合成し、添加剤を配合したエンジンオイル。 「エンジンにとって理想的なオイル」を目指して作られているため、3種類の中でも性能はピカイチ。超高性能タイプの“レーシングオイル”もある。 製造コストが高いため、「鉱物油」や「部分合成油」よりも販売価格は高め。 【見た目&匂いは?】 写真の「100%化学合成油」は、見た目は「部分合成油」とほぼ同じで、肉眼ではまったく見分けがつかない。 刺激臭は若干あるものの、他の2種類に比べてかなり低め。
各エンジンオイルを「100℃」まで熱し、粘度をチェック

▲市販のバイク用油温計を使い、エンジンオイルの温度を計測。

▲「鉱物油」の粘度をテスト中。
まずは、オイルに熱を加えない状態で、容器に入った3つのオイルをスプーンですくい、垂らしてみる。また、容器に入った3つのオイルを、指先で触れてみる。 結果は、3種類とも変わりなし。 次に、安全性を考慮して、マグカップにエンジンオイルを注ぎ、湯せんにて過熱。各エンジンオイルを100℃まで加熱し、粘度をチェック。 ヤケドしないよう2秒程度、指先で粘度の違いを感じてみる。 結果は、3種類とも、大きな違いは見受けられない。
「150℃」まで熱すると、各エンジンオイルの“粘度”に違いが発生

▲150℃まで熱した「鉱物油」。見た目も手触りもサラサラ。この状態では、エンジンオイルの重要な役割である「金属の潤滑」という役割を担うには、かなり厳しいことが伺える。

▲150℃まで熱した状態の「100%化学合成油」。ヤケドに注意しながら、2秒程度指で触れてみると、「鉱物油」よりも高い粘度が感じられた。
100℃から、さらに過熱してみる。油音は完全にオーバーヒートゾーンである、「150℃」まで到達。 ヤケドしないよう、2秒程度、指先で粘度をチェック。すると、3つのエンジンオイルに、明らかな違いを感じた。詳細は下記の通り。 ・「鉱物油」は、サラサラ・シャバシャバの状態。常温や100℃の時に感じたヌメリ感は、ほぼ失われている。 ・「部分合成油」は、常温や100℃の時に感じたヌメリ感が、若干失われているが、「鉱物油」ほどのサラサラ・シャバシャバ感はない。 ・「100%化学合成油」は、「部分合成油」のヌメリを、ややしつこくしたような、さらに上をゆく粘り気が感じられた。
「100%化学合成油」は温度が上がりにくい!?各エンジンオイルの「温度上昇率」を検証!

どのタイプも、急激な温度上昇はない。 ただし、エンジンオイルの温まり始めから、適温である50℃から100℃において、「100%化学合成油」は、他のエンジンオイルよりも、温度の上昇率が低い。 つまり、「温度が上がりにくくなっている」のが確認できる。
「100%化学合成油」は放熱性が良い!?各エンジンオイルの「温度下降率」を比較

「鉱物油」と「部分化学合成油」の温度下降率は、ほぼ同じ。 一方、「100%化学合成油」は、110℃あたりから、他のエンジンオイルよりも、短時間で温度が下降。 このデータを見る限り、「100%化学合成油」は、放熱性に優れたエンジンオイルであるといえる。 別の言い方をすれば、「高温になったエンジンの熱を、吸収しやすいエンジンオイルである」ことが分かる。
今回のテスト結果&独自の評価

▲150℃まで熱した「鉱物油」には、わずかながら、正体不明の“カス”が発生。
バイクをどんな風に使うのか?よーく考えてからエンジンオイルを選ぼう!

▲150℃まで熱した「鉱物油」には、わずかながら、正体不明の“カス”が発生。
上記のテスト結果を見て、「やっぱりエンジンオイルは、高性能な100%化学合成油しかない!」と思った人もいるはず。 しかし、仮に街乗りユースが中心ならば、高額な「100%化学合成油」を使わなくても、「部分合成油」や「鉱物油」で十分性能を発揮してくれるはず。 ただ、レースや峠走行など、高回転を長時間多用するのであれば、高性能なレーシングスペックの「100%化学合成油」を使用したい。 なぜなら、「鉱物油」や「部分合成油」では、高温になったエンジンオイルの油膜が保てず、エンジンの焼き付き等のトラブルを招く可能性があるからだ。
総括
上記のテストは、かなり強引な条件を作り出して実施したテストであり、あくまでも机上の理論。参考程度に捉えていただきたい。 エンジンオイルの特性は、各オイルメーカーや種類によって、微妙に異なるからだ。 自分に合ったエンジンオイルを見つける近道は、バイクの用途に合致するエンジンオイルを、実際に乗ってみて、試してみること。 いろんな種類のエンジンオイルを試しているうちに、それぞれのオイルの特徴、長所、短所などが分かってくる。 これもエンジンオイル選びの醍醐味といえよう。
■まめ知識/エンジンオイルの交換時期■ オイルメーカーの「WAKOS(和光ケミカル)」によると、バイクのエンジンオイルの交換は、走行距離2000km~3000kmが妥当としている。ただし長期間放置したバイクは、エンジンオイルが酸化してしまうため、たとえ交換後の走行距離が短くても要交換となる。 エンジンオイルをマメに交換するすことで、「エンジンが持つ性能をフルに引き出せる」「エンジンの寿命が延びる」等のメリットが生まれる。
