2020年、フィアット パンダが生誕40周年を迎えました。3代に渡ってイタリア人の生活を支え、愛され続けてきた、まさに稀代の名車です。そして今、パンダの魅力にどっぷり浸かるにはうってつけの限定車「パンダ コンフォート(販売台数:90台/車両価格:234万円)」が発売されました。今回は、フィアット・パンダの歴史を振り返るとともに、「オシャレなのにとってもマジメ」なパンダの真の姿に迫ります。 REPORT●小泉建治(KOIZUMI Kenji) ※パンダ コンフォートを除き、本記事内の車両写真は欧州仕様のものとなります。
パンダはイタリアそのものである
イタリアは日本人にとって人気の海外旅行先のひとつです。多くの人が憧れ、一度は訪れてみたいと思っているのではないでしょうか。何度も行ったことがあるという熱心なリピーターの方もいらっしゃるでしょう。 ローマやミラノの空港に到着し、バスやタクシーやレンタカーで街の中心地に向かう道中、車窓からはさまざまな「イタリアを感じさせる景色」が見えてきます。歴史が刻まれた美しい町並み、食欲を刺激するトラットリアやバール、そして大げさな身振り手振りを交えて語り合う人々の姿……これらを目にしているうちに「イタリアにやってきたんだ」という実感が高まってくるわけですね。 しかし、もしかしたらとくに意識していない方もいらっしゃるかもしれませんが、もうひとつ我々に強くイタリアを感じさせるものがあります。 それがフィアット・パンダです。

1980年に誕生して以来、パンダはイタリアのベストセラーカーとして君臨し続けています。現行の3代目パンダだけを見ても、2011年のデビューから2019年まで、イタリア国内で常に年間10万台以上を販売しています。これはあらゆるメーカーのあらゆる車種のなかでパンダだけなのです。 ちなみに2019年のイタリア国内における販売台数は13万7035台ですから、2位のランチア・イプシロンの5万8763台、3位のダチア・ダスターの4万3708台、4位のフィアット500Xの4万2558台、5位のジープ・レネゲードの4万1687台に圧倒的な差をつけての堂々たる1位というわけです。 さらにすごいことに、毎年2位以下の車種はコロコロ入れ替わるのに、パンダだけは常にトップを堅守し続けているのです。 パンダはイタリア人には欠かせない生活のパートナーであり、もはやイタリアの風景の一部と言っていいでしょう。
イタリア人に愛されたフィアットのベーシックカーの系譜

1936年に発表され、戦後まで長く作られ続けた初代500。トポリーノ(はつかねずみ)の愛称で親しまれた。

1957年にデビューし、国民車としてイタリアの戦後復興を支えた2代目500。ヌォーヴァ(新型)500と呼ばれた。

2代目500の後継車として1972年にデビューした126。しばらくは500と並行してラインナップされていた。
初代パンダ(1980〜1999年)

2代目500、126の流れを汲みつつも、完全新設計のブランニューモデルとして1980年に登場した初代パンダ。開発を請け負ったのはジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン。1999年まで生産され、2代目500と並ぶイタリアの代表的名車として世界中の人々に記憶されている。四輪駆動モデル「4×4」(右下写真)もラインナップされた。

2003年にデビューし、2011年まで生産された2代目パンダ。初代の3ドアボディに代わって5ドアボディとなり、より高いユーティリティを実現している。四輪駆動モデルの「4×4」(左下写真)や、最高出力100psを誇るスポーツモデル「100HP」(右下写真)、そしてさまざまな限定車などがラインナップされ、幅広い顧客層の要求に応えた。

2003年にデビューし、2011年まで生産された2代目パンダ。初代の3ドアボディに代わって5ドアボディとなり、より高いユーティリティを実現している。四輪駆動モデルの「4×4」(左下写真)や、最高出力100psを誇るスポーツモデル「100HP」(右下写真)、そしてさまざまな限定車などがラインナップされ、幅広い顧客層の要求に応えた。
2代目パンダ(2003〜2011年)

2003年にデビューし、2011年まで生産された2代目パンダ。初代の3ドアボディに代わって5ドアボディとなり、より高いユーティリティを実現している。四輪駆動モデルの「4×4」(左下写真)や、最高出力100psを誇るスポーツモデル「100HP」(右下写真)、そしてさまざまな限定車などがラインナップされ、幅広い顧客層の要求に応えた。

2011年に登場した現行3代目パンダ。スクワークルと呼ばれる「角張っているのに丸い」という不思議なデザインテイストを用いることで、オシャレで愛嬌のあるアピアランスと高い実用性を両立させている。デザインと機能の共存は初代から脈々と受け継がれているパンダの揺るぎない理念だ。

2011年に登場した現行3代目パンダ。スクワークルと呼ばれる「角張っているのに丸い」という不思議なデザインテイストを用いることで、オシャレで愛嬌のあるアピアランスと高い実用性を両立させている。デザインと機能の共存は初代から脈々と受け継がれているパンダの揺るぎない理念だ。
3代目パンダ(2011年〜)

2011年に登場した現行3代目パンダ。スクワークルと呼ばれる「角張っているのに丸い」という不思議なデザインテイストを用いることで、オシャレで愛嬌のあるアピアランスと高い実用性を両立させている。デザインと機能の共存は初代から脈々と受け継がれているパンダの揺るぎない理念だ。
そして2020年、フィアット・パンダが生誕40周年を迎えました。 国民車として戦後のイタリアを支え続けた500(チンクエチェント)の系譜を継ぐ新世代のコンパクトカーとして、初代パンダは1980年にデビュー。天才ジョルジェット・ジウジアーロが手がけた画期的なデザインとパッケージングはそれまでのベーシックカーの概念を覆すもので、今なお世界中の多くのクルマに影響を与えています。 その特徴をひと言で表すなら「すべての形に理由がある」。 四角く愛嬌のあるエクステリアやポップなインテリアは、その見た目だけでも十分に購入理由になり得るものですが、けっしてデザインのためのデザインではなかったところにパンダの本当の価値があります。 外観上のアクセントになりつつ低コストも実現した平面ガラス、気軽にモノが置けるラック形状のダッシュボードと運転席側から助手席側まで自由に移動させられる灰皿、気持ちの良い座り心地とスペースの有効活用を両立させたハンモックシート……などなど、すべての形には機能的な理由があったのです。 こうしたパンダの理念は、2003年に登場した2代目、そして2011年に登場した現行モデルの3代目にもしっかり受け継がれています。 (次ページに続く)

2020年4月18日に発売されたパンダ コンフォート。コロッセオ グレーの専用ボディカラーをまとう。
今、パンダを味わい尽くすなら「パンダ コンフォート」
そんなたっぷりの魅力を備えたイタリアの名車パンダをとことん味わい尽くすのにピッタリな限定車が登場しました。それが2020年4月18日に誕生した「パンダ コンフォート」です。 早速、実際にクルマを見ていきましょう。

販売台数は全国限定で90台。車両価格はベースモデル比で僅かに10万円高の234万円だ。

2020年4月から12月までにパンダ(限定車も含む)を成約かつ登録した人には、40周年記念ステッカー(2色セット/60mm×60mm)がプレゼントされる。
まず外観ですが、目を惹くのは角が丸められつつも全体的にはスクエアなシルエットです。この「四角いのに角が丸い」デザインテーマを、スクエアとサークルを足して「スクワークル」とフィアットでは呼んでいます。 最近は「エモーショナルなデザイン」とか「クーペ風シルエット」などがもてはやされていますが、限られた寸法内で最大のスペースを稼ぐには、パンダのようなスクエアなデザインが正解でしょう。このクルマがチャーミングなだけでなく、極めて真面目な生活のパートナーであることが伝わってきます。 とくに真横から見るとそれは顕著で、ボディ後端までルーフが伸ばされ、しっかりとラゲッジスペースが確保されているのがわかります。5ドアハッチバックと言うよりも、すごくコンパクトなステーションワゴンと言いたくなります。

こうしたパンダの信念は、インテリアにも反映されています。ステアリングのセンターパッドに始まり、メーターから各種スイッチに至るまで、随所にスクワークルのモチーフが散りばめられているとともに、直感的に操作しやすい! 初代パンダのオマージュと思われるダッシュボード助手席側の収納棚など、デザインと機能の融合が随所に取り入れられています。

パンダ コンフォート専用のシートは、ブラックを基調としつつショルダー部と座面サイドサポート部をレッドとした鮮やかなデザインです。これまた専用の外装色であるコロッセオグレーとのコーディネートも見事で、カジュアルにもシックにも乗りこなせそうです。老若男女どなたにもピッタリ似合う雰囲気も魅力ですね。 注目していただきたいのは、シートバックのレッドとブラックの境目の高さが、見事にサイドウインドウ下端のラインと一致しているということです。リクライニングしてしまえば多少はズレますが、こうしたところもしっかり意識してデザインしているのは評価すべきでしょう。 「さすがデザインの国イタリア」とひと言で片付けられるほど自動車の開発は単純なものではありません。シートのデザイナーと車体設計者がしっかりと連携して仕事をしているからこそ、こういったプロダクトは実現するのです。 さらにこのパンダ コンフォートの前席には、シートヒーターが装備されています。このクラスではかなりの贅沢品と言っていいでしょう。これから暑くなっていくので、しばらくは恩恵を感じる機会はなさそうですが、真冬になれば重宝するのは言うまでもありません。一方、フルオートエアコンは年間を通して大活躍してくれるでしょう。


ラゲッジスペース容量は225Lで、6:4の分割可倒式リアシートを倒せば870Lにまで広がります。いずれもクラストップレベルですが、リアゲート開口部の広さや、荷室の天地方向の高さがもたらす実質的な使いやすさも特筆ものです。 (次ページに続く)

シートベルトの高さ調整機構が付くのはAセグメントでは極めて珍しい。小柄なドライバーでも理想的なポジションを得られる。
オシャレだけれど、とことん真面目なクルマでもある

シートベルトの高さ調整機構が付くのはAセグメントでは極めて珍しい。小柄なドライバーでも理想的なポジションを得られる。
ひととおりクルマをチェックしたところで、今度は実際に走ってみましょう。 シートに座ってまず感じるのは、車両の見切りの良さです。ボディの四隅、そしてタイヤの位置が手に取るようにわかるのです。ここでもスクワークルなシルエットが効いています。 パンダはイタリアを始め、スペイン、フランス、クロアチア、ギリシャといった地中海沿岸の国々で絶大な人気を誇っていますが、これらの地域によく見られるのが、険しい山々や入り組んだ海岸などにへばりつくように点在する小さな集落や旧市街です。 もうとにかく道が狭いのです。両脇には昔ながらの石壁が迫り、壁がなくなったかと思えばガードレールもなく崖になっていた……なんていうのは日常茶飯事です。急坂を登り切ったと思ったら道が鋭角に曲がっていて、内側のよく見えない角に大きな縁石が張り出していたりすれば、そりゃあ運転に多少の自信がある人でも涙目になりますよ。 そんなときこそパンダです。なぜ地中海沿岸にパンダが溢れているのか? その理由は、パンダで走ってみればすぐに理解できるでしょう。 細かい話ですが、シートベルトに高さ調整機構が付いていることにも感心させられます。これがないと小柄な人はベルトが首に掛かってしまいます。コンパクトカーでは省かれていることが多く、シートの高さ調整などでなんとかやりくりするしかありません。パンダと同じクラス(Aセグメント)のライバルであるVW up! やルノー・トゥインゴにも付いていません。このことからも、いかにパンダが真面目に設計されたクルマであるかが伺えます。

パンダ コンフォートに搭載されている直列2気筒0.9Lターボ“TwinAir”エンジン。最高出力85psと最大トルク145Nmを発生。360度クランクが生み出すパタパタとした素朴な鼓動感が微笑ましい。
走り出してみると、パタパタとしたエンジンの鼓動がとても心地良いです。パンダにはツインエアと名付けられた、今どきのクルマには珍しい2気筒エンジンが採用されています。最近では軽自動車やコンパクトカーには3気筒、一部の高級車や高性能モデルには6気筒から12気筒、一般的な普通乗用車には4気筒が搭載されていることが多いのです。 こう聞くと、2気筒エンジンはチープなの、と思ってしまうかもしれませんが、まったくもってそんなことはありません。 たとえばバイクの世界にも4気筒や6気筒は存在しますが、ドゥカティやハーレーダビッドソンといった高級メーカーはこぞって2気筒エンジンを採用しています。それは、2気筒ならではの鼓動感とトルク感が好まれているからです。 2気筒と言ってもバンク角やクランク角によって特性は異なってくるのですが、ここでは冗長になるので省きましょう。おおざっぱに言えば、シリンダーの数が多くなればエンジンの回転はスムーズになり、少なくなれば鼓動感が際立ってくるのです。 そしてマルチシリンダー(多気筒エンジン)と比べると、2気筒エンジンはアクセルの踏みはじめの押し出し感が強くなる傾向があります。一方のマルチシリンダーはエンジン回転の伸びやかな上昇と、高回転域でのピークパワーにアドバンテージがあります。 これらを踏まえると、狭い道をきびきびと走るには必ずしもシリンダーがたくさんある必要はなく、むしろ2気筒エンジンの魅力の方が光ってくるとも言えます。 なにより、低い速度でもエンジンを回している実感が得やすく楽しいのです。

ベースモデルよりも1インチ落とされた175/65R14サイズのタイヤ&ホイールを装着。快適な乗り心地を生み出す。

オーバーハングが短く、4つのタイヤが踏ん張っているような安定感のあるディメンション。車両感覚が掴みやすい。
トランスミッションはデュアロジックと呼ばれるロボタイズドMTです。クラッチ操作を自動でやってくれるのでクラッチペダルはなく、ATモードも備えます。もちろんAT限定免許でも運転できます。一般的なオートマティック車と同じようにとっても楽ちんに運転できる一方、マニュアル車のようにダイレクト感に溢れるのでドライビングそのものも楽しめます。 そしてパンダ コンフォートならではの乗り心地についても触れないわけにはいきません。 ただでさえサスペンションがしなやかに動いて気持ちの良い乗り味を味わわせてくれるパンダですが、なんとコンフォートには、ベースモデルの15インチよりも1インチ“小さい”14インチのホイールが装着されているのです。 そのおかげで、荒れた路面のザラザラ感や都市高速の目地段差の突き上げなどが綺麗に濾過され、さらに気持ちの良い乗り心地を実現するのです。これも、この限定車がコンフォートを名乗る理由のひとつと言えるでしょう。

開発中のデザインレンダリング。人間の顔のような親しみやすいフロントマスクを意識した一方、荷物がたっぷり積める逞しさ、頼もしさも追求されたようだ。

利便性や実用性を表現したスケッチが多いのもパンダの特徴。開発の初期段階から、オーナーに寄り添った生活パートナーであることが優先されていたことが伺える。
いかがでしょうか? パンダ コンフォートには、オシャレな内外装、楽しく快適な走り、そして高い実用性という、イタリア車の魅力がてんこ盛りです。あとはみなさん自身が確かめるだけです。 しかも、これだけの装備が付いて車両価格は234万円とリーズナブル! しかし、販売台数が全国限定で90台しかないのが少々気になります。興味を持たれた方は、早めにお近くのフィアット正規ディーラーに問い合わせてみたほうがいいかもしれませんね。
【パンダ コンフォート特別装備】 ●専用ボディカラー「コロッセオ グレー(メタリックグレー) ●専用インテリアカラー「ブラック&レッド」 ●フルオートエアコン ●前席シートヒーター ●リアパーキングセンサー ●14インチアルミホイール ベースモデル:パンダ イージー

■フィアット パンダ コンフォート 全長×全幅×全高:3655×1645×1550mm ホイールベース:2300mm 車両重量:1070kg エンジン形式:直列2気筒DOHC 8バルブ マルチエア インタークーラー付ターボ 総排気量:875cc ボア×ストローク:80.5×86.0mm 圧縮比:10.0 最高出力:63kW(85ps)/5500rpm ※ECOスイッチON時:57kW(77ps)/5500rpm 最大トルク:145Nm(14.8kgm)/1900rpm ※ECOスイッチON時:100Nm(10.2kgm)/2000rpm トランスミッション:ATモード付き5速シーケンシャル「デュアロジック」(5速RMT) 駆動方式(エンジン・駆動輪):FF ハンドル位置:右 乗車定員:5名 燃料タンク容量:37L サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡトーションビーム ブレーキ:Ⓕベンチレーテッドディスク Ⓡドラム タイヤ:ⒻⓇ175/65R14 JC08モード燃費:18.4km/L 車両価格:234万円

パンダ40周年の詳しい歴史の話はこちら! clicccar.com(クリッカー) フィアット パンダが40年間 750万台も愛され続けたワケとは? 初代〜三代目 最新パンダ コンフォートまでの歴史を深掘りする
フィアット パンダ コンフォートの詳細情報(フィアット公式)
フィアット パンダ40周年 特別サイト(フィアット公式)
