限界ギリギリで走るレースは危険なのか?

クルマ好きではない人が「モータースポーツは危険」だとよくいいますが、果たして本当にそうでしょうか? たしかにハイスピードかつ限界ギリギリの走行ですのでクラッシュのリスクはありますし、高いスピードからクラッシュしたときの被害は大きいでしょう。
しかし、クルマを意のままにコントロールし、緊急回避ができるスキルを身につけてこそのモータースポーツであり、それこそ安全につながります。今回は緊急回避について説明していきます。
危ないと思ったら
全力でフルブレーキ!!

いまのクルマはABS装着が義務付けられています。しかし、スピン状態などクルマにとって予想外の向きでの制動や挙動の際には、ABSが介入してしまい、ブレーキを強く踏んでも案外止まりません。
とはいえ、ABSが介入しようとも「強い踏力でのブレーキ」は軽くABSを作動する程度の「弱い踏力ブレーキ」よりも制動力は増します。「危ないと思ったら全力での強いフルブレーキ」を意識するとよいです。火事場の馬鹿力ブレーキです。
弱い踏力のブレーキは
挙動を乱す原因にもなる
スポーツ走行に慣れていないビギナーや、操作に迷ったときに踏む「何となく弱いブレーキ」は、スポーツドライビングでいう「曲げるブレーキ」の操作に近く、前荷重状態となり挙動を乱す原因になります。
逆に強いブレーキだと前荷重が増えますが、それ以上に曲げる力を消し(タイヤのグリップを制動力の縦方向に使いきってしまうため)、挙動を直進方向に安定させます。
また強いブレーキによりABSやVSCなどの電子制御が働き、さらに姿勢を安定方向に向かわせます。以上のことからも「完全に危険な状況だと思ったら、全力での強い踏力でのブレーキ」を心掛けてください。
クルマが完全に止まるまで
ブレーキを踏み続けること

よくあるパターンとして、コースアウトやスピンから回復した直後に、スルスルと低速でクラッシュしてしまうシーンがあります。
ある程度スピードが落ちたのち、気が抜けてブレーキを緩めてしまい、その後にクラッシュしてしまうパターンです。
サーキット走行しているとスピード感覚が麻痺してきて、スピードが落ちると「低速」だと勘違いしてしまうことがあります。確実に止まりきる(スピードが0㎞/hの静止状態)を確認するまで強いブレーキを踏むべきです。
カウンターの「おつり」に気をつける

テールスライドをカウンターステアで収める対処ができず、そのまま反作用で逆方向にテールを振り出す、通称「おつり」をもらってのスピン。
これは、カウンターを当てられないことによる初期段階でのスピンよりも、挙動に勢いがつくため危険です。
とくに危険なのが、おつりのおつりのおつり……、と何度も右に左に振られてのスピンです。この状態に陥った時は立て直すことをあきらめて、ハンドルを離してフルブレーキをすることがクラッシュ回避につながるケースが多いです。
前方のアクシデントに早めに対処すること
前方の車両がスピンしたり、トラブル発生に気がついた場合は、できるだけ早めに減速し、回避行動に出ましょう。それと同時に後方の車両にアクシデントの発生を知らせるべきです。ハザードを点灯させるなどがよいでしょう。また、黄旗が出ているときはとくに注意が必要です。
前の周と路面が違ったらとくに気をつける

オイルや砂利などコースが汚れているというのは、よくある話です。
この場合、汚れているラインがレコードラインであったとしても、避けて通ることを勧めます。どうしても通過しなければならない場合は、できるだけ横Gが掛からないよう真っ直ぐに、またぐようにするとリスクを減らせます。
雨の走行の場合、レコードラインこそ溜まった水量が多く極端に滑りやすいことも多いです。路面が光って見える場合、水量が多く水たまり状態の可能性があるため、できるだけ光沢のない水量が少ないラインを選んで走ること。
少しでもグリップ力を得られる路面を選んで走ることが、安全かつ速いのです。これは街乗りでも轍路面にもいえます。
スピン・コースアウトしてしまったら
コースに戻れる場合
後続のクルマをよく確認して、速やかにコースに戻りましょう。戻るときはレコードラインを外して走ると安全です。
コースに戻れない場合
速やかにクルマから降りて安全地帯に逃げましょう。サーキットでは後続からハイスピードで他の車両が走ってきます。コースの外側や内側のセーフティーゾーンに早急に移動して、2次被害のないように心掛けましょう。
スピンをしてしまった反省や車両の損傷具合の確認は、安全地帯に移動してから行えばよいです。(編集部注 コースによってルールは異なる場合があります)
スピンに慣れる練習方法
スピンに慣れておくことも、スキルアップや危険回避の能力向上につながります。そのためには、セーフティマージンを多く取った広場での練習が最適です。
大切なのはスピンだけでなく、リカバリーの経験。繰り返し経験すれば、本番のサーキット走行でも対処ができるようになるでしょう。
結果的に自信をもって攻められるようになり、タイム短縮にもつながります。かくいう私自身も数々のスピンや、ときにはクラッシュを経験しています。
多くの痛い経験をしているからこそ、緊急事態のリカバリー方法の引き出しが増えているのです。ほんのちょっとした操作の違いで立て直せるか? スピンで済むか? クラッシュしてしまうか……。の運命が分かれます。
練習やスポーツ走行でのスピンは笑いごとで済みますが、クラッシュやレース中のスピンは後悔してもしきれません。スピンなどのミスをしてしまったら、その経験を糧にして、同じ過ちを起こさないように引き出しを増やしましょう。
ミスをした経験は、他人が決して得ることのできない財産です。これは街乗りのヒヤリハットや事故、交通違反でも同様です。

講師
梅田 剛
受講者のドラテクの改善点を添削している梅田講師の本業は医師。スピンなど危険な状態に陥った場合でも、どうしたらいいか知っておくことで身体の反応が違ってくるという。
■REVSPEED
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