Bugatti W16 Mistral
W16時代のフィナーレを飾るミストラル

2026年7月、フランス・モルスハイムのアトリエから、1台の「W16 ミストラル」がラインオフした。これは、ブガッティがW16エンジンに別れを告げる、W16 ミストラルの最終生産車となる。ブガッティ・リヤドを介してオーダーされた最終車両は、「パール」と「スパークル」によるツートーンで仕上げられた。
W16 ミストラルの最終車両は、ブガッティの新たな生産拠点となる「ラ・マニュファクチュール」のオープン数日後に完成。この新施設は、今後トゥールビヨンの生産拠点として稼働する。ヴェイロンからシロン、そしてオープントップモデルのW16 ミストラルへと受け継がれたこの8.0リッターW型16気筒クワッドターボエンジン時代がフィナーレを迎え、間もなく新しい時代の幕が上がる。
市販オープンの世界速度記録を樹立

2022年のモントレー・カーウィークで世界初公開されたW16 ミストラルは、日本、シンガポール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など、世界各地でワールドツアーを実施。多くのファンを魅了しながら、デリバリー開始への期待を高めていった。
2024年11月には、ブガッティ公式テストドライバーのアンディ・ウォレスが特別仕様の「W16 ミストラル ワールドレコードカー」のステアリングを握り、ドイツ・ATPオートモーティブ・テスティング・パーペンブルクで453.91km/h(282mph)の世界速度記録を樹立。2025年初頭の量産開始を前に、W16 ミストラルは世界最速の量産オープントップモデルの称号を手にした。
2026年7月には、「W16 ミストラル “ブラン・エテルネル”」が公開された。芸術性と職人技を極限まで追求したこの特別な1台は、デジタル設計の精密さと手作業による卓越したクラフトマンシップを融合。ベルリン王立磁器製陶所(KPM)の数百年に及ぶ磁器製作技術を取り入れたことで、世界に1台の芸術作品が完成している。
また、シルバーストーンで開催されたF1英国GPにおいて、最高速度記録を樹立した「W16 ミストラル ワールドレコードカー」が正式にオーナーへと引き渡された。デリバリー後、世界中のオーナーたちは、自らのW16 ミストラルのステアリングを握り、「ブガッティ・グランドツアー」をはじめとするブランドイベントに参加し、それぞれの物語を紡ぎ続けている。
ブガッティのカスタマイズ部門を率いるジャシャ・シュトラウブは、W16 ミストラルの生産完了を受けて次のようにコメントした。
「W16 ミストラルは初期スケッチの段階から、私たちが目指してきた全てを1台に凝縮したいと考えていました。それは圧倒的な存在のW16エンジンへの敬意を表現する、究極のオープントップを作り上げることです。そしてブランドの豊かな歴史、とりわけエットーレ・ブガッティへのオマージュを細部に織り込むことを決めました」
随所にオーナーの拘りが込められたインテリア

最終号車のインテリアは、「マグノリア」と「グレーカーボンマット」でコーディネート。「The last of its kind(最後の1台)」のフレーズと、W16 ミストラルのシルエットを刻んだ専用プレートが配置された。唯一無二の存在であることを永遠に刻み込み、そのデザインへの敬意を表現している。
新生ブガッティ誕生当初、フェルディナント・ピエヒは「400km/hを超える性能を持ちながら、その日の夜にはオペラ座へ優雅に乗り付けられるクルマ」という理想を掲げ、それがW型16気筒エンジン開発の出発点となったという。W16 ミストラルは、その相反する2つの個性を最後に受け継ぐ存在として開発された。
最終号車のオーナーにとっては、ブランド創始者エットーレ・ブガッティとのつながりを表現することこそが重要だった。1909年にモルスハイムでブガッティを立ち上げた彼への敬意として、その直筆サインをヘッドレストへ刺繍し、ドアシルのアルミニウムにも刻み込んだ。さらにエンジンカバー内側には通常の「Bugatti」ロゴに代えて彼のサインがあしらわれている。
オーナーは、コクピットにもうひとつの特別な演出を加えている。通常は象の彫刻が配されるシフトレバーに、中東地域で特別な意味を持つ「ハヤブサ」の頭部を入れ込めた。また、ドアパネルにはアンスラサイトカラーの糸でハヤブサのスケッチが精巧に刺繍されている。

