ヴィラトール(展示車価格:2297万8300円)|カヤバ
日本では1年を通して各地でキャンピングカーイベントが開かれるが、昨今のショーを見てみるとベース車両に“変化”が生じている。というのも、バンコンバージョン(バンコン)モデルのベース車両の主流となっているトヨタ・ハイエースバンの流通が滞っているからだ。
各ビルダーはハイエースバンベースのモデルの受注を行う一方で、より納期の早い車両を基としたモデルの提案にも積極的だ。いろいろな面で、日本製キャンパーは変革期を迎えていると言っていいだろう。
そんな状況下で、各ビルダーが新しい風として吹き込んでいるのが、フィアット・デュカトベースのモデルである。デュカトは欧州を中心に流通している商用バンだが、日本には2022年より正規輸入が始まった。
もちろんそれ以前も、デュカトベースのキャンパーは並行輸入されており、中でも「アドリア」製などはキャンパー垂涎の的だったのである。しかし、正規輸入によって日本での保証体制が整ったことから、国内ビルダーによるモデルが2023年から一気に開花。今では日本RV協会加入の多くのビルダーが、デュカトベースの車両をリリースしている。
そして、「まさかこのメーカーが?!」と思うような企業が、デュカトキャンパーをつくっているのをご存じだろうか。それは「カヤバ」だ。カヤバと言えばサスペンションで名だたる企業だが、なぜキャンピングカー業界に参入してきたのだろうか。

キャンピングカーはベース車に車中泊装備をインストールする車両だが、重量増に加えてベース車が商用車であることから、必ずしも乗り心地やハンドリングで満足できるとは言えない。こうしたニーズを考えて、カヤバはハイエース用などのサスペンションキットをこれまで発売してきたわけだが、足まわりだけでなく持っているノウハウを活かしてキャンピングカーをつくれないか…と考えたのだという。
その結果、生まれたのがデュカトベースの「VILLATOR(ヴィラトール)」だ。このヴィラトール、キャンピングカー販売の大手「RVランド」とのコラボモデルなのだが、その中にはカヤバの熱いコダワリが詰めすぎなくらい詰まってしまっている。

第一に走りのチューニングだ。同モデルの公式HPの動画を観るとわかるが、なんとトヨタ GRヤリスベースのラリーカーとタメを張るくらい、しっかりとした足が奢られているのである。オフロードもしっかり走れるというコンセプトの下、ストローク量がしっかり確保されたサスペンションで、タイヤはオールテレーン系モデルを履いている。

セッティングはこの巨体をスポーティに、そして快適に操れるものとなっており、この段階で他社モデルとは一線を画しているわけだ。
もちろんキャンピングカーとしての装備も一流である。某高級ホテルのバーラウンジのインテリアを手がけたというデザイナーが内装を担当。中は落ち着いたウッドと内装材、そしてソファートリムでコーディネイトされているのだが、ウッドパネルは木目が揃った1枚ものを使用(驚愕)。まさに高級ヴィラの佇まいを見せているのである。


装備もヨーロッパ製さながらの本格派で、ポータブルトイレ、シンクにキッチン、電子レンジ、冷蔵庫、エアコン、FFヒーターを標準装備。サブバッテリーにいたっては、リチウムを5kWhも積んでいるのだ。
室内レイアウトはヨーロッパ製のように、前後2ルームタイプ。運転席&助手席のカヤバ製バケットシートを回転させ、その後部にあるバタフライシートと組み合わせることで狭めのダイネットになる。

後部はベッド兼用のソファーで、常設ベッドでないため空間が広く感じられるのが美点だ。もちろんこちらは常にベッドにしておき、食事などは前方で行う寝食分離スタイルの生活をおくることもできる。


何かと驚かされるヴィラトールだが、まだまだポイントがある。ボディサイドにはオーニングが標準装備となっているが、そんなものはありきたりと言わんばかりの装備が後部ウッドデッキ。
車両後端に取り付けられたパネルを伸ばすと、ヴィラを彷彿させるオープンデッキが出現。さらにメッシュの日除けも付いており、室内から室外へと続くシームレスな空間が何とも気持ちいいのである。まるで城に築かれた月見櫓のようだ。


ビルダーとは違った視線でつくられたヴィラトールは、まさに“旅先に持ち運ぶ家”なのである。しかし気になる点もある。まずデュカトのサイズだ。RVランドの貸しモータープールを利用するという手があるが、都市部でこれを駐めておける場所が確保できる人は稀であろう。
第二に価格。フル装備とはいえ、2297万8300円(展示車の場合)というプライスは、まさに中古住宅なみ。最高の装備に最高の足まわりという価値は認めるが、やはり買えるのは限られた層であることは否めない。
ヴィラトールはこれとして、今後はカヤバにハイエースなどもう少し手頃なベース車両を使ったバンコンをつくってほしいなぁという期待は膨らむ。軽く1000万円越えでも、このクオリティなら欲しいという人はいるだろう。ハイエースなら、月極駐車場でも駐められるし。
いずれにせよ、「眼福でした」という言葉しか出ないヴィラトール。キャンピングカー業界に新風を吹き込んだことは間違いない。

カヤバ・ヴィラトール
■ベース車両:フィアット・デュカト L3H2 SERIES 8(右ハンドル)
■サイズ:全長5995mm×全幅2050mm×全高2720mm
■乗車・就寝定員:4名・3名
■エンジン:直列4気筒ディーゼル2.2Lターボ(180PS)/9AT/FF
■標準装備:オリジナルフロントシート(KYB×BRIDE)、専用ショックアブソーバー(KYBオリジナル)、Power System(5kWコンプリート)、ルーフエアコン(DOMETIC)、FFヒーター(軽油式)、両開き大型冷蔵庫(DC 90L)、電子レンジ、MAXXFAN、電動ステップ、全面高断熱(ガイナ断熱塗装)、クレサナトイレ(コンポストタイプ)、特別外装(VILLATORオリジナル)ほか
■オプション:オリジナルアルミホイール(LXCP)、オールテレーンタイヤ(BFグッドリッチ)、サイドオーニング(FIAMMA)、オーバーフェンダー、フロアマット(カーペットタイプ)ほか
■展示車価格:2297万8300円
カヤバ(ヴィラトール製品情報ページ) https://www.kyb.co.jp/campingcar/