移動も車中泊も快適な軽ハイトワゴンベースの4ナンバーバン




軽スーパーハイトワゴンをベースとする4ナンバーバンに共通する強みは、エンジンが前方にあることで荷室床面を低く抑えられる点と言えるだろう。エンジンが座席下にあるキャブオーバーバンに対して荷室長では劣ってしまうものの、N-VANとスペーシアベースは工夫を凝らした車内ギミックと天井の高さで優れた使い勝手を確保している。
N-VANは荷室から後席、助手席部分までをフラットにできる構造により、2m超もの長大な空間が出現する。しかもN-VANの床面地上高は525mmと、キャブオーバーバンの650mmはおろかスペーシアベースの540mmよりも床面が低く、1370mmの高い荷室高も相まって車中泊時に座って過ごしても頭上まわりの圧迫感は皆無だ。
加えて、N-VANの助手席側はセンターピラーレス構造となっており、助手席側の前後ドアを一体化した広い開口面積も荷物の積み下ろしやアウトドアシーンなどで重宝する。
対するスペーシアベースの荷室高は1115mmとN-VANに比べてやや低いが、多彩な用途を提供するマルチボードの荷室機能性が秀逸だ。
ボードの取付位置は3段階に調整可能となっており、上段に設置すれば格納した後席背もたれを椅子にして作業テーブルとして使える。中段にすればローテーブルとして使ったり荷物の整理に便利だ。下段にして前席を後側へ水平位置まで倒せばベッドキットのように使うことができ、さらにボードを縦に設置すれば荷室の仕切り板としても使える。
スズキ車で広く採用される着脱ボックス付きの助手席は同じく前方へも水平位置まで倒せる構造になっており、室内空間を拡大できるほか、助手席背もたれをテーブル代わりにして使うことも可能だ。
どちらも、簡易的な寝具などを準備すれば車中泊も簡単に行なえるクルマだが、スペーシアベースは機能的なマルチボードにより多彩な用途に対応する。他方、N-VANは、自由に使える広大な荷室空間とピラーレスドアによって拡張性に優れたクルマと言えそうだ。
走行距離10万km前後のN-VANが狙い目! 6速MTなら安心感も高い


現在のN-VANとスペーシアベースの中古車価格には、登場時期の違いと新車価格の違いが大きく反映されている。
スペーシアベースの登場より約4年早い2018年7月に発売されたN-VANは、発売期間の長さと高い人気により流通台数が圧倒的に多い。グレードバリエーションが多いこともあって、N-VANの中古車は10万kmオーバーの過走行車から未使用車まで幅広い個体が揃っている。
走行距離10万km前後の過走行車ならCVTモデルが50万円程度から、6速MTモデルは70万円程度から購入可能だ。走行距離5万km以下に絞ると底値は80万円程度に上がり、6速MTモデルは100万円前後、ターボモデルは110万円前後、4WDモデルは90万円前後が底値となる。
そのほか、人気のN-VANはリフトアップ仕様やキャンパー仕様といった特殊架装が施された未使用車も200万円程度から多数販売されている。
他方、スペーシアベースは全グレードが自然吸気エンジン+CVTであり、中古車価格は走行距離10万km以下なら90万円程度、5万km以下に絞ると110万円前後が底値となる。走行距離5万km以下の4WDモデルは130万円が底値だ。
2022年8月に登場したスペーシアベースはまだ新しいこともあって流通台数自体が少ないうえ、安価な個体もほとんど出回っていない。
また、中古車で販売される車両の多くはアダプティブクルーズコントロールや電動スライドドアなどが備わる上級グレードの“XF”であり、流通台数が少ない廉価グレード“GF”の方がやや高額となる価格の逆転現象が生じている。
加えて流通台数が少ないスペーシアベースは、近隣で見つからなければ遠方から取り寄せることになるため陸送費もかさみやすく、現在はまだ中古車で購入するメリットが小さい。
もし、近所の中古車店で底値となる100万円程度でスペーシアベースが購入できるなら検討する価値はあるが、安く購入できる中古車のメリットを享受したいなら今はN-VANがおすすめだ。
入手性は流通台数の多いN-VANのほうが明らかに高く、グレードやボディカラーへのこだわりがなければ100万円を下回る安価な車両も容易に見つかるはずだ。
買うならN-VANがおすすめ! ただし簡素な助手席には要注意


中古車相場を考慮するとN-VANのほうが明らかに買いやすい。ただし、両車の細部を比べるとN-VAN一択とも言えない理由が見えてくる。
N-VANの助手席は格納のために簡素な造りとなっているうえシートスライド機構も備わらず、2名での長距離移動時は同乗者に苦労を強いる場面も多い。加えて、N-VANのスライドドアは全グレードが手動開閉だ。
一方、スペーシアベースの助手席にはシートスライド機構もしっかり備わっているため、2名以下の乗車なら快適に使えるだろう。ただし、スペーシアベースのエンジンは、非マイルドハイブリッドの自然吸気のみであるため、山道などで動力性能に不満を感じやすい傾向にある。
また、XFグレードに備わるスライドドアの電動開閉機構は4ナンバーバンとしての用途や価格を考慮して運転席側のみとなる点は留意しておきたい。
どちらも車中泊やアウトドアユースに最適な室内構造が備わっているが、総合的な観点ではどちらも一長一短あるクルマだ。
総じて、一人でアクティブに動く人にはN-VANが向く。2人での移動が中心ならスペーシアベースがマッチするだろう。ただし、用途によっては無理に4ナンバーを選ぶのではなく、一般的な乗用軽ハイトワゴンを選んだ方がよいケースも多いはずだ。
こうした両車の特徴を踏まえたうえで、中古車価格と用途に応じて本当に必要なクルマを選び分けたい。
