シフトレバーの構造を変更し、よりスムーズなシフト操作を実現
スバル「BRZ」が2026年7月30日に一部改良を受けた。今回の目玉として注目されたのはMT車用「アイサイト」の進化だが、スポーツカー好きならもうひとつ見逃せない変更がある。

6速MT車に採用された、新構造のシフトレバーである。

外観から違いを見つけるのは難しく、最高出力や加速性能が変わるわけでもない。しかし、その開発にはスーパー耐久シリーズへの参戦で得た知見が投入されている。ドライバーが走行中に何度も触れる部分だけに、BRZらしい「操る楽しさ」に直結する改良といえそうだ。
今回の改良型BRZでは、安全性能も大きくアップデートされた。
MT車用アイサイトとして初めて広角単眼カメラを追加するとともに、ステレオカメラの認識範囲も拡大。交差点での衝突回避サポートなど、プリクラッシュブレーキの対応範囲を広げている。
BRZのMT車には2023年からアイサイトが設定されているが、今回さらに認識性能を高めたことで、「MTスポーツカーだから安全装備はシンプルでいい」という時代から完全に脱却した。
一方、その裏側で行われたのがシフトフィールの熟成だ。
スバルは今回、シフトレバーの構造を変更し、よりスムーズなシフト操作を実現したとしている。
具体的にどの部品を変更したのか、従来構造と何が違うのかといった詳細までは公表されていない。しかし重要なのは、この改良にスーパー耐久シリーズで蓄積した知見が使われていることだ。
BRZはスーパー耐久シリーズのST-Qクラスに参戦し、レースという過酷な環境を利用してさまざまな技術開発を続けてきた。
スーパー耐久というと、水素エンジンやカーボンニュートラル燃料など次世代パワートレインの実証実験が注目されやすい。しかし実際には、量産車の走行性能や耐久性を磨くための開発現場という側面も持つ。
その成果のひとつが、今回通常モデルへ投入されたシフトレバー構造というわけだ。
もともとBRZの6速MTは、ショートストロークと節度感のある操作フィールを特徴としている。
今回の変更も、そのキャラクターを大きく変えるものではない。むしろ操作時の抵抗や引っ掛かりを抑え、シフトレバーがより滑らかに動く方向へ熟成したものとみられる。
しかもシフトノブ自体は従来型から変更されていない。そのため、運転席を見ただけでは新旧モデルの違いはほとんど分からない。
実際に手を伸ばしてシフトレバーを動かし、走らせて初めて分かる。スポーツカーとしては、そんな改良の方が興味深いかもしれない。
ここで思い出されるのが、2025年に発表された「BRZ STI Sport TYPE RA」だ。
TYPE RAはスーパー耐久をはじめとしたモータースポーツ活動で培った技術を投入したコンプリートカーで、精密にバランス取りしたエンジンに加え、フラットシフト機能や冷却フィン付きリアデファレンシャルケースなど、サーキット走行を強く意識した装備が盛り込まれていた。
今回の改良型BRZに採用されたシフトレバーが、TYPE RAと同一構造なのかは明らかにされていない。したがって、TYPE RAのパーツをそのまま標準車へ移植したと断定することはできない。
それでも両車には共通点がある。
スーパー耐久でクルマを走らせ、そこで見つけた課題を改善し、その成果を市販車へ戻すという開発手法だ。
TYPE RAのような特別なモデルだけではなく、通常のBRZにもそのノウハウが反映されたことに、今回の改良の意味がある。
海外仕様との違いも興味深い。北米向け2027年モデルでは、アイサイトの進化や「tS」へのリアパーキングセンサー追加などが主な変更点として紹介されている。一方、日本仕様で発表されたシフトレバー構造の変更が海外仕様へどこまで展開されるかは、地域別の仕様を見る必要がありそうだ。
スポーツカーの進化は、最高出力や0-100km/h加速の数字だけで決まるものではない。
とくにMT車では、シフトストローク、節度感、レバーを動かした際の抵抗など、わずかな違いがドライバーとクルマの一体感を左右する。
広角単眼カメラを追加したアイサイトが今回の「見える進化」なら、新しいシフトレバーは「触って分かる進化」といえる。
スーパー耐久で鍛えたノウハウを、日常で乗るBRZへ。その地道なフィードバックこそ、今回の改良でMT好きが注目したいポイントである。














