フロントGTウイングの効果は実証済み!?
異形のアルトで筑波に挑む男のガレージ!
若い頃から峠やサーキットに通い詰めていたというMr.ZOOさん。しかし、走り続けるには経済的な負担も大きく、少しでも費用を抑えようとDIYチューンに目覚めていったそうだ。

「軽量化にこだわったファイバーワークは2008年ごろから始めました。最初はバンパーやフェンダーを製作して、徐々に幅が広がっていったんです。仕事が鈑金塗装だったので、作業場は会社や月極駐車場でしたが、自由が利かなかったですね」。

そんな経験から欲しくなったのが、自分専用の作業ガレージだった。そこで目を付けたのが、広い土地があり、近隣の住宅と隣接していない中古住宅。住まいを手に入れると同時に、敷地内の空きスペースを利用したセルフビルドでのガレージ建築に挑戦した。
「大工仕事は経験がなかったので、まず試しにコンパクトなガレージを作ってみたんです。そしたら、意外と思った通りにでき上がって。このスペースがあればDIY作業もはかどるじゃないですか。どんどん自作パーツを作るようになっていきました」。


最初のガレージはホームセンターで材料を調達し、設計図もなしで完成させたというから驚きだ。しかも、それだけでは飽き足らず、普通車2台を収容できる大型ガレージも建築。電気工事士の資格やユニックの免許まで取得し、4年もの歳月をかけて作り上げた。コンクリートミキサーすらドラム缶を利用して自作したというのだから、そのDIY精神は徹底している。現在はこのガレージで、新たなタイムアタックマシンの製作も進めているそうだ。
ちょうどガレージを手に入れた頃、夏場でも気軽にサーキットを走れるクルマが欲しいと考え、HA23アルトを入手。しかし、あまりの遅さにターボエンジンへ換装したところ、一気にアルトチューンの面白さに目覚めてしまった。その結果、それまで乗っていたシルビアを手放し、アルトがファーストカーになってしまったという。
「元の性能が低い分、いじった効果がハッキリと体感できるんですよね。軽量化だったり空力パーツだったり、手を加えた分だけ効果を楽しめるんです。アルトで走るようになったことで、パーツを作れる環境がさらに楽しい空間になっていったわけです」。

こうして進化を重ねてきたアルトは、今やサーキット専用の本格的なタイムアタックマシンへと変貌。フェンダーやドアはFRPで製作し、ボンネット、ルーフパネル、リヤゲート、クォーターパネルなどはウェットカーボン化。さらにリヤウインドウをポリカーボネート製に変更するなど、徹底した軽量化によって車重は560kgまで絞り込まれている。

なかでもルーフパネルは、軽さを極限まで追求した2プライの極薄仕上げ。重量はわずか1.8kgというから、そのこだわりぶりが分かる。

エンジンルーム内にも、DIYならではの工夫が満載だ。当初から装着していたインタークーラーに加え、JB23ジムニー純正インタークーラーを追加してツイン化。パイピングを新たに製作するのが面倒だったという意外な理由から生まれた仕様だが、吸気温度の安定にも効果があったそうだ。

さらに、インマニやミッションケースにはミーリング加工による肉抜きまで実施。両方合わせて数百グラムの軽量化を実現したものの、あまりの手間に本人も「二度とやりたくない作業」と振り返る。

排気系も当然ながら自作品だ。フロント側の50.8φから60.5φへと拡大するパイピングに、バイク用のチタンサイレンサーを組み合わせる。グラスウールの詰め替えが可能で、コストパフォーマンスにも優れるという。

足まわりも、既製品を組み込むだけでは終わらない。本来はキャンバー調整ができないリヤに、オリジナルのアクスル加工によってネガティブキャンバー4度を設定。さらに、直巻きスプリングを装着できるよう、マウント部分にも加工を施している。

そして、このアルトの最大の特徴と言えるのが、フロントにまでGTウイングを装着した異形のエアロフォルムだ。
当初はアンダーパネルの採用も考えたが、使いこなすのが難しいうえ、ナンバー付き車両では路面と干渉する可能性もあることから断念。そこで、海外のR35チューニングカーやヒルクライムマシンをヒントに、フロントウイングを取り入れた。

「サーキットでフロントのGTウイングの効果を尋ねられることが多いんですが、ハッキリ言って効きますよ。このウイングは、マウントとウイング形状の組み合わせで6つのパターンを用意していますが、それぞれ違った効果を体感できました」。

GTウイングの翼断面や構造、強度についても独自に研究し、数多くの仕様を製作してきたMr.ZOOさん。最新のDIYアイテムとして取り組んでいるのが、グループCカーなどの装備をヒントにしたエアロホイールカバーだ。バネ下重量の増加を抑えるため、新たにインフュージョンカーボン技術にも挑戦している。

ちなみに、かつてナンバー付きだった頃は、乗車定員を1名に変更し、助手席側のスペースに装備を積載してサーキットまで自走していた。室内にはフロントGTウイング用のホルダーまで設置され、タイヤを2セット積んで往復できたというから、実用面でも独創的な工夫が凝らされている。

そんなDIYチューンの集大成とも言えるアルトは、筑波サーキットで1分03秒011をマーク。取材時点ではKカーランキング8位につけており、さらなる上位進出を目指して進化を続けている。

なお、HA23アルトが冬場のタイムアタックシーズン専用となったため、普段の遊び用としてHA25アルトも増車。こちらは手を入れすぎず、軽量化とサスペンションを中心に楽しむ予定だという。

「若い頃にこんな環境があったら、もっと楽しめたと思います。だから若い人には、借金してでもガレージを手に入れることをオススメしたいですね!!」。
自分の手でクルマを作り、その性能をサーキットで確かめ、さらに改良を重ねていく。しかも、その舞台となるガレージまで自分で作ってしまうのだから恐れ入る。走る楽しさと作る喜びを両立する理想の環境を手に入れたMr.ZOOさんのチューニングライフは、これからもますます広がっていきそうだ。
PHOTO&REPORT:渡辺大輔(Daisuke WATANABE)

