スポット増しからラック流用まで

ハコスカの走りを根本から変える!

ハコスカの正統派チューンといえば、GT-R仕様や全日本グランプリを戦ったワークスマシンのスタイルを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、そうした定番の手法にとらわれず、純粋に走行性能を追求したのが、ガレージグレート代表の松山さんが所有するこのハコスカGT(KGC10改)だ。

「このクルマは、40年来の知人が所有していたものです。当初は定番のR仕様だったのですが、タイムアタックに参戦したいということで、レーシングガレージに製作を依頼。フルストリップ状態からボディを作り上げています。スポット増しはもちろん、鉄板を重ねた追加補強なども全身に施され、レーシングカーのような剛性を手に入れているんです。まず、ボディそのものが走行フィールを大きく変えていますよ」と松山さん。

実は、ボディ製作に続いてエンジンや足まわりのセットアップも完了し、路上復帰を果たしたところで、前オーナーの計画が頓挫。結局、タイムアタックを行うことなく、松山さんのもとへやってくることになったという。

「ボディ剛性はもちろんですが、ワークスフェンダーやフロントリップなど、かなり本格的な作りになっています。特にフロントフェンダーは、見た目だけでなくワイドトレッド化に合わせて設計されたもの。そのため、これだけワイドなフェンダーでも、リムの深いホイールは履けないほどなんです。足まわりのセッティングも、サーキットで勝つことを前提とした仕様になっています」。

その言葉どおり、ボディ下面を覗くと、一般的な旧車チューンとは一線を画す作り込みを確認できる。

特に注目したいのが、フロントサスペンションまわりの構造変更だ。クロスメンバーを加工してS130Z用のステアリングラックを移植し、純正のボール&ナット式からラック&ピニオン式へと変更。ステアリングの応答性を高めると同時に、ストラットの取り付け位置も外側へ移動させている。適切なジオメトリーを維持しながら、ワイドトレッド化を実現しているのだ。

テンションロッドもブラケットの取り付け位置を変更し、作動角度を適正化。単純にトレッドを広げるだけでなく、サスペンションが狙いどおりに機能するよう、各部の取り付け位置から見直されている。

ボディ側にも、ストラットタワー周辺など負荷が集中する部分に補強プレートを溶接。フロントエンドの付け根にも鉄板を追加し、各部にスポット増しを施すことで、コーナリング時の荷重や路面のギャップによるボディの変形を抑えている。

サスペンションには、ビルズ製の別体タンク式ダンパーを採用。リヤは十分なスプリング長を確保するためにロアブラケットを加工し、アームの取り付け位置も変更することで、適切な角度に補正されている。

駆動系にも抜かりはない。デフにはR200のロングタイプを使用し、ドライブシャフトにはR31スカイライン用の等速ジョイント式を流用。ミッションには、希少なワーナータイプの71Bクロスを組み合わせている。

こうした徹底的なシャーシメイクによって、現代のチューニングカーにも引けを取らないコーナリング性能を獲得。松山さん自身、これまで数多くの旧車やチューニングカーを乗り継いできたが、その走行性能には驚かされたという。

一方、エンジンはL28をベースとした3.1Lフルチューン仕様だ。ワイセコ製ピストンやL14改コンロッド、LD28改クランクシャフトを組み合わせて排気量を拡大。燃焼室にも手が加えられ、吸気系にはソレックス50φキャブレターを装着している。最高出力は約300psと、一般的には十分なフルチューンスペック。しかし、多くのL型チューンを手掛けてきた松山さんにとっては、まだパンチが足りないのだとか。

「エンジンは当時流の仕様ですね。今の進化したL型チューンを考えれば、まだまだ伸びしろはあると思います」。

エンジンルームの作り込みにも、レーシングガレージならではの工夫が光る。

例えばオイルクーラーは、ハコスカの定番であるフロントグリル前ではなく、エンジンルーム内に配置。導風板でボックス状の空間を形成し、そこへ冷却風を導くレイアウトを採用している。フロントへの露出を避けることで、空力性能への悪影響も抑えているのだ。

そして、タイムアタックを目的に製作された車両だけに、インテリアも徹底したスパルタン仕様。カーペットをはじめとする不要な装備は取り払われ、タコメーターにはスタック製を採用している。

シートはレカロのSP-Gを組み合わせ、サイドバーを備えたワンオフの9点式ロールケージが室内を取り囲む。ロールケージは乗員保護だけでなく、ボディ剛性の向上にも貢献している。

ステアリングは、松山さんが長年愛用してきた当時物のRSワタナベ製ファルコンレーシング。レーシングカー然とした室内にも、オーナーのこだわりが感じられる。

ちなみに松山さんのもとへやってきた当初、ボディは白黒のツートンカラーで、リヤにはGTウイングが装着されていたそうだ。しかし、ストリートでも楽しめるスタイルを目指し、ボディカラーをホワイトへ変更。GTウイングも4ドアGT-R用のリヤスポイラーに交換し、ホイールも好みに合わせて変更している。

ただし、ワイドトレッド化に合わせてフェンダーが大きく張り出しているため、見た目ほど深いリムのホイールを履けない点は、少々残念なのだとか。

また、フロントリップやワークスフェンダーについても、ストリート仕様としては少々大袈裟すぎると感じているそうで、今後は形状の変更も検討している。

もっとも、現在装着されているフロントリップは空力的な効果が非常に高く、単純に取り外してしまうと走行性能の低下につながりかねない。そのため、性能を維持しながらスタイリングを整える方法を模索しているという。

旧車の場合、歴代オーナーによってさまざまな手が加えられていることは珍しくない。だからこそ、過去の製作で得られた優れた部分を残しながら、新たなオーナーの理想に合わせて進化させていく楽しみがある。

レーシングガレージが作り上げた高剛性ボディと、徹底的に見直されたシャーシは、このハコスカにとって何物にも代えがたい財産だ。

その優れた素性を活かしながら、エンジンやスタイリングをさらに磨き上げていく。松山さんにとって、このハコスカはまだまだ進化の途中にあるのだ。

●取材協力:ガレージグレート 

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