排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。

2013年にデビューし翌年発売されたMT-09は、ヤマハ3気筒エンジンの搭載では約40年振りの復活劇と共に、斬新でエネルギッシュな外観デザインや税込みで85万円を切る価格設定にも大きなインパクトを放ち、当時のバイクシーンに一石を投じた。それから約10年が経過、2024年4月にマイナーチェンジされた最新モデルではさらに豊かな商品力を魅せている。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田 俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ヤマハ発動機株式会社

ヤマハ・MT-09 ABS…….1,254,000円(消費税10%込み)

ダークブルーイッシュグレーメタリック8(ダークグレー)

カラーバリエーション

ヤマハ・MT-09 ABS…….1,254,000円(消費税10%込み)

ディープパープリッシュブルーメタリックC(ブルー)
マットダークグレーメタリック6(マットダークグレー)

ヤマハ・MT-09 SP ABS…….1,441,000円(消費税10%込み)

ブルーイッシュホワイトメタリック2(シルバー)

ヤマハ・MT-09 Y-AMT…….1,364,000円(消費税10%込み) 

マットダークグレーメタリック6(マットダークグレー)
ディープパープリッシュブルーメタリックC(ブルー)

11 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の11枚めの画像

12 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の12枚めの画像

13 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の13枚めの画像

1 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の1枚めの画像

2 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の2枚めの画像

3 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の3枚めの画像

4 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の4枚めの画像

5 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の5枚めの画像

6 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の6枚めの画像

7 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の7枚めの画像

8 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の8枚めの画像

9 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の9枚めの画像

10 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の10枚めの画像

11 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の11枚めの画像

12 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の12枚めの画像

13 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の13枚めの画像

1 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の1枚めの画像

2 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の2枚めの画像

3 / 13

「排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。」の3枚めの画像
俊敏で自由自在な機動性を表現したと言われるデザインコンセプトは初代から変わっていない。
ブラックアウトされたCP3エンジン。右サイドカムチェーン方式を採用。コンパクトな仕上がりが印象深い。

MT-09が第3世代へとフルモデルチェンジされたのは2021年6月のこと。マッシブな雰囲気に大胆な変貌を遂げた外観デザインが新鮮。3気筒エンジンは3mmのストロークアップでボア・ストロークが78×62mmになり排気量はそれまでの846ccから888ccへとスケールアップ。さらに車体各部の軽量化設計が徹底されての登場だった。
今回の試乗車は、2024年4月にマイナーチェンジされた最新モデルのMT-09 ABSである。余談ながら7月にはMT-09 SP、そして9月にはMT-09 Y-AMTが追加投入されている。
一般論としてマイナーチェンジではカラーリング変更程度に留まるケースも珍しくないが今回のMT-09は、なかなかどうして全体的に大きくリファインされていた。
「The Rodeo Master」を掲げていた開発コンセプトも改められ、“The Knight Horse(騎馬)”とし、街中での俊敏さと峠道での旋回性&安定性の両立をこれまで以上に追及し、よりスポーティな味付けになったそう。

広報資料によるとライディングポジションが一新されたのを始め、それに伴い車体剛性バランスとサスペンションセッティングが見直された。また吸気音を強調したサウンドチューニングを実施。エアクリーナーボックスカバーには「アコースティック・アンプリファイア・グリル」と呼ばれる開口部が設けられた。吸気系の上部を覆うスチールプレス製燃料タンクも一新されている。その他YRC(ヤマハ・ライド・コントロール)も熟成され、プリセットされた3種(SPORT/STREET/RAIN)と自分好みにカスタマイズできる2種からライディングモードが選べる。
その他クルーズコントロールも装備。クイックシフターも最新のもを搭載。またナビ画面に対応する5インチフルカラーTFT液晶メーターも進化。専用アプリをインストールしたスマホとの連携機能を備え、ハンドルスイッチも新設計されていた。
小径LEDを採用したヘッドランプを始め、外観デザインやバックミラーの変更など細部の熟成も徹底。シート下にセットされたUSB電源にはType-Cソケットを採用。フラッシャー(ウインカー)にも新機能が追加されている。
軽量高剛性のCFアルミダイキャスト製を採用ししているダイヤモンドタイプのフレームに、新しい支持部品で搭載されたパワーユニットは888cc。水冷DOHC直(並)列3気筒のCP3(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)エンジンだ。
これは「慣性トルクが少なく、燃焼室のみで生み出される燃焼トルクだけを効率良く引き出す設計思想」と解説されているもの。シリンダー内で繰り返される爆発燃焼エネルギーを素直に無駄なく発生させることで効率の良い走り(高性能)の発揮に貢献させていると理解すれば良いだろう。
足回りには軽量設計を徹底したキャストホイール(SPINFORGED WHEEL)にブリヂストン製ハイパースポーツS23を装着。φ41mm倒立式フロントフォークのボトムにはモノブロックタイプのADVICS製対向4ピストン油圧キャリパーをラジアルマウント。右手ブレーキレバー部分のマスターシリンダーにはブレンボ製が奢られている。リアサスペンションのスイングアームは、レバー特性が熟成されたボトムリンク式を採用。バネレートが強化されたモノショックを装備。ピンスライド式シングルピストンのブレーキキャリパーはNISSIN製だ。
フロントマスクのを始めとする意匠変更や、細部までの熟成ぶりを披露した今回のMT-09は、まさにビッグマイナーチェンジと呼ぶに相応しい変貌ぶり。果たしてその走行性能は如何なる乗り味を楽しませてくれるのだろうか。

高剛性を極めてきたアルミ鋳造製フレームは、剛性バランスが見直されている。
ホルトオンされたリアフレームはデザインが一新されている。USBの電源ジャックはバッテリーの左脇にある。

細部の熟成と最新ハイテク装備が魅力的。

試乗車を受けとるとバイクを取り回す扱いが少し軽くなった印象。大胆な軽量化を果たした後のリバウンドなのか、今回のマイナーチェンジでは車重が4kg重くなっていたはず。にも関わらずバイクを引き起こしたり、向きを変えるなどの取り扱いはむしろ軽快に感じられたのである。
おそらくこれはハンドル幅が少しワイドになったことが影響している。さらに言うと操舵角が28度から32度へ、より深く切れるようになった事も効いていると思う。
ちなみに最小回転半径が3.4mから3.0mになっているのも見逃せないところ。先代モデルと同じ舵角を取り戻したことにより、タイトターンや狭い道路でのUターンがしやすくなっている。多くのユーザーにとっては、とてもありがたいことなのだ。
ごく一般的なストリートバイクとして判断すると、舵はもっと深く切れた方(小回り性能の高い方)が良いと思えるのも本音だが、レーシングライクなハイポテンシャルを備えているだけにハードなスポーツライディングを楽しむ時、不意の大きな外乱を受けた様な場合でも高い操縦安定性をキープする上で、32度と言う切れ角の小ささは程良い妥協点と言えるのだろう。

さて、マイチェン前まではロングのダブルタイプだったシートがセパレート化されていた。前クッションに腰を下ろし、バイクを立てると足つき性もいくらか改善された雰囲気。直感として親しみやすい。
足つき性に関しては、次の写真にある通り。825mmのシート高に変わりは無い。両足の踵が地面から浮いているが、その高さは少しばかり低くなった。写真判断ながら10mm近くは楽になっているように感じられた。前シートの後部は結構張りのあるワイドなデザインながら、前方部は左右両肩角の面取りを含めてスリムに仕上げられており、足を下ろした時、バイクの近くに着地できる感じ。いずれにせよ着座時の腰高感はそのままに、足付き性が改善されていたのである。
絞り込まれたシート前方部と、ニーグリップする時や内腿が当たるタンクの両脇部分がスリム化されたことが相まって、ライディングポジションをとるとスマートに決まる。前モデルと直接対比したわけではなく、あくまで記憶に残る感覚的な比較だが、筆者にはよりシックリとフィットする感触が好印象だ。
さらに言うと少し後退し高められたステップ位置と低くセットされたハンドル位置の関係で、あえて例えるとスーパーモタード的な雰囲気を直感する。跨がった瞬間からエキサイティングなエッセンスが香るところに、ネイキッドスポーツ車の中でもホットな存在として、侮れないキャラクターとそのポテンシャルの高さが伝わってくる気がする。
表現をかえるとバイクに跨がり、走り始めた瞬間からスポーツとしての“走り”に対してキチンと身構えられる。ライダーのマインドの中に、ごく自然とそんな心構えができ、適度な緊張感を伴う乗り方を楽しめる点が好ましく感じられた。
以前にも記したことがあるが、本音を吐露すると、筆者が個人的に今一番購入意欲をそそられるバイクがこのMT-09である。当初はコストパフォーマンスの高さ(廉価設定)に大きなインパクトを覚えた事に始まるが、サイズも重さも程良いミドルクラスに仕上げられた中に、ひときは元気の良いハイパフォーマンス3気筒エンジンの組み合わせに大きな魅力が感じられるからである。

市街地から郊外と高速。そして山岳地のワインディングロードを行くと、MT-09の走りはともかく元気が良い。いつでも、どんな場面でも右手を開けると生き生きと走る。レスポンス良くグイグイと加速して行けるトルクフィールの太さと、それに続く吹き上がり感は実に豪快。
スロットルを開けた時の押し出し感は、上級(オーバー1Lクラス)の超高性能車に匹敵する。しかもそのパンチの効いた加速パワー、つまりMT-09の真骨頂と言える3気筒エンジンならではの美味しい出力特性は、一般ストリートでも遺憾なく発揮され、実に気持ちが良いのである。
もちろん絶対的により高性能な上級車は存在しているが日本のストリート走行ではもはや過ぎたる凄さでどこか宝の持ち腐れ的。“凄さ”をかいま見られる機会こそあれど、もはや本来持っているポテンシャルを活かしきれないストレスを感じることも多いのだ。
その点MT-09は880ccという排気量で構築された3気筒エンジンの特性が絶妙。ヤマハが言う“クロスプレーンコンセプト”から得られるライダーの恩恵がとても豊かに感じられるのである。
筆者が購入意欲をそそられる最も大きな要因はそんな迫力と共に“余裕”を感じさせてくれるエンジン特性によるところが大きい。
小気味よいクイックシフター、柔軟でレスポンスの良い出力特性が生きて走りは軽快。加減速の扱いはスムーズでクルージング時もバランスの良い回転フィーリング。トコトコと市街地を行く場面からロングツーリング、そしてスポーツ走行まで快適に楽しめるのだ。

一方、この出力特性とマッチさせた操縦性もまた気持ちが良い。コーナー手前で減速しながら旋回態勢への移行がとても素早く軽快。操舵レスポンスや切り返す時の車体挙動も俊敏。コーナー立ち上がりも加速が鋭いエンジン特性と相まって思いのままに扱える。
峠道をハイペースで行く場面でシート上の着座位置を変えて行く積極的な重心移動をするような時も、下半身と車体の接点の何処かをきちんと保つことができリズミカルにかつ安定して操縦できる。
タイトコーナーから高速コーナー、あるいはサーキットを攻め込む様なスポーツライディングまで対応できるポテンシャルの高さは一級。前後共に鋭い効きを発揮できるブレーキ性能の高さもうれしいポイントだ。意のままに急制動が可能だし、コーナリング中の繊細なタッチで速度調節できる扱いやすさも一級であった。
久々に本気で欲しいと思わせてくれたバイクだけに、自分がオーナーになった時を妄想すると、購入時にオプションのコンフォートシートを備えるだろう。また自分にとってベストなライディングポジションと乗り味を求めて少しだけ狭いハンドルに換えたいと考えるのではないかな~などと想像が膨らんだ。
いずれにせよMT-09の総合的なパフォーマンスは秀逸。今回のマイチェンで商品力はますます豊かになっていた。
俊敏さを備えながら、普段は穏やかにかつ快適に走ることもできる。そんな柔軟で扱いやすいキャラクターが心地よい。そこにミドルスポーツとしての価値と魅力が感じられるのである。


足つき性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)

シート高は従来モデルから変わらず825mm。ご覧の通り両足の踵は少し地面から浮いてしまうが、バイクを支える上で不安感は少ない。シート前方及び車体も細く抉られ、足つき性が邪魔されないよう、デザインが配慮されている。

キーワードで検索する

著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…