50代ライダーこそ乗りたい、ヤマハ・XSR900GP。苦手なのはタイトなUターンだけ?

1980年代のグランプリマシン「YZR500」をオマージュしたモデルとして、昨年のジャパンモビリティショー2023で話題沸騰となったヤマハのXSR900GP。スポーツヘリテージのXSR900をベースに、専用外装をまとうだけでなくフレームや足周りにまで手を加えるなど、ヤマハの並々ならぬ意気込みが伝わってくる。レーサーレプリカ世代の筆者が、その世界観をお伝えしよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ディテール解説

888cc水冷DOHC4バルブ並列3気筒“CP3”エンジンは、XSR900やMT-09らと共通。セパハン化に伴いエアクリーナーボックスは新作となっているが、最高出力120psなど諸元はシリーズで統一されている。
加速中のシフトダウンや減速中のシフトアップにも対応する、第3先代の双方向クイックシフターを採用。ステップ位置はXSR900比でわずかに後方かつ高めとし、防振のためラバー付きとされる(XSR900およびMT-09はラバーなし)。
前後ともヤマハ独自のスピンフォージドホイールを採用。標準装備タイヤはブリヂストンのS23だ。フロントキャリパーはアドヴィックス製ラジアルマウント対向式4ピストン、マスターシリンダーはブレンボのラジアルポンプで、ブレーキホースを変更してコントロール性をさらに高めている。
スイングアームはアルミ製で、フレームとともにシルバーの塗色をまとう。リヤキャリパーはニッシン製シングルピストンだ。
XSR900GP専用に開発されたKYB製倒立式フロントフォークを採用。トップキャップにはプリロード(無段階15mm)と伸び側減衰力(26段)のアジャスターあり。
フロントフォークのボトム側には圧側減衰力(高速5.5回転、低速18段)のアジャスターが設けられている。
リヤショックユニットもKYB製で、プリロード(油圧24段)、伸び側減衰力(2.5段)、圧側減衰力(高速5.5回転、低速18段)が調整可能だ。
GP500クラスのイエローゼッケンをモチーフとした塗り分けや、別体式のナックルバイザーなど、1980年代のYZR500が元ネタであることが一目で分かる。LEDヘッドライトは、レンズに刻まれた部品番号から判断するに、2024年型MT-09のものと共通だ。
ウインカーには急ブレーキの際にハザードを点滅させるエマージェンシー機能を採用。
セパレートハンドルはYZF-R7よりも高めに設定。クラッチレバーはアジャスター機能を持つ新作だ。メーターの右下にUSBタイプCソケットが標準装備されているが、3つのクイックファスナーを抜いてコンソールカバーを取り外す必要があり、実際に使用するにはやや面倒だ。燃料タンク自体はXSR900と共通だが、前方のエアクリーバーボックスカバーは専用品に。ステムシャフトはアルミ製とされ、上下のキャップを省略している。
ナビ画面に対応した5インチTFTディスプレイは2024年型MT-09と共通だが、テーマ1~4の4種類から選べる画面表示のうち、テーマ1のアナログ風タコメーターはXSR900GP専用となる。ライディングモード(YRC)はスポーツ/ストリート/レインのほか、カスタマイズ枠を2パターン設ける。加えて、このYRCはスマホの「Y-Connect」アプリを通じてセッティングを操作することも可能だ。
新設計の統合ハンドルスイッチを採用。ウインカースイッチは「軽く押す」と「強く押す」の2種類の使い方があり、軽く押すとウインカーが3回だけ点滅する。強く押すと点滅し続け、手動でキャンセルするには同じ方向にもう一度押す。消し忘れ防止として、点滅開始から15秒以上かつ150m走行すると、自動で消灯する機能を持つ。メーターの基本的な操作はジョイスティックとホームボタンで行う。上段にあるのはクルーズコントロール用のスイッチだ。
シートの形状はXSR900に似ているが、ライディングポジションの変更に伴い新作に。シート高は25mmも上がっている。
ライディングポジションの変更に伴ってシートレールは新作に。パイプの一部の肉厚を変更している。
アッパーカウル上端部とフレームとをつなぐステーには丸パイプを使用。その留め具にはレーサーではおなじみのベータピンが使われており、ヤマハがこれを公道走行用の市販車に採用するのは初となる。

XSR900 GP ABS 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BL-RN96J/N722E
全長/全幅/全高 2,160mm/690mm/1,180mm
シート高 835mm
軸間距離 1,500mm
最低地上高 145mm
車両重量 200kg
燃料消費率 国土交通省届出値
定地燃費値 31.6km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値 21.1km/L(クラス3, サブクラス3-2) 1名乗車時
原動機種類 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ
気筒数配列 直列、3気筒
総排気量 888cm3
内径×行程 78.0mm×62.0mm
圧縮比 11.5:1
最高出力 88kW(120PS)/10,000r/min
最大トルク 93N・m(9.5kgf・m)/7,000r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 3.50L
燃料タンク容量 14L(無鉛プレミアムガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V, 8.6Ah(10HR)/YTZ10S
1次減速比/2次減速比 1.680/2.812 (79/47×45/16)
クラッチ形式 湿式、多板
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
変速比 1速:2.571 2速:1.947 3速:1.619 4速:1.380 5速:1.190 6速:1.037
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター/トレール 25°20′/110mm
タイヤサイズ(前/後) 120/70ZR17M/C (58W)(チューブレス)/ 180/55ZR17M/C (73W)(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式ダブルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
乗車定員 2名

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…