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ヒョースン・GV250DRA Sport Cruiser……59万9500円
Vツインらしい心地良いトルクの盛り上がりに癒やされる
1978年に韓国で創業したヒョースン。現在は中国のQINGQI(クインキー、現地での発音はチンチー)とのジョイントベンチャー「QINGQI KR」を立ち上げ、生産拠点を中国の済南市に持つ。かつてはフルカウルスポーツやネイキッド、デュアルパーパスなどもラインナップしていたが、近年はクルーザーモデルをメインにグローバル展開している。
そんなヒョースンは、2024年10月に250ccのクルーザー3機種を日本市場に投入する。GV250Sボバー(64万3500円)、GV250S-EVO シュプリーム(68万7500円)、そしてGV250R アヴァンギャルド(73万7000円)の3モデルで、それらと競合するのを避けるためか、昨年4月から販売されているGV250DRAの車両価格が2024年4月に59万9500円へと引き下げられた。
250ccクラスのクルーザーと言えば、日本ではホンダのレブル250/Sエディションが圧倒的に売れている。エンジンは水冷シングルで、価格は61万500円(Sエディションは64万9000円)。一方、GV250DRAはVツインを搭載しながら60万円を切るわけで、競争力はかなり高いと言えるだろう。
まずはエンジンから。2024年10月に投入される250ccクルーザー3機種が新世代の水冷60度Vツインを搭載するのに対し、このGV250DRAには長らくヒョースンのラインナップを支えてきた空油冷75度Vツインが積まれている。なんだ旧世代のエンジンか、などと落胆することなかれ。最新の排ガス規制ユーロ5に適合させたり、ミッションを5段から6段にあらためるなど、メカニズムの熟成が進んでいる分だけ信頼性は高い。加えてスペック的にも、最高出力と最大トルクにおいて若干だが新世代の水冷60度Vツインを上回っているのだ。
実は同日にGV250S-EVO シュプリームを試乗しており、特にエンジンフィールの違いについて確認することができた。ちょうど1年前にGV250DRAに試乗した際は、レッドゾーンの始まる10,000rpmまでスムーズに吹け上がることに感心したが、GV250S系の水冷60度Vツインはさらに微振動が減じられており、それと比べると空油冷の方は5,000rpm付近から増える細かなバイブレーションがやや気になった。
加えて、水冷60度Vツインの方は3,000~5,000rpmにしっかりとした実用トルクがあるため、スロットルを大きく開けない状況においてGV250DRAよりも力強く感じられるのだ。
とはいえ、これは両モデルを同条件で比較した場合の話であって、直接のライバルとなるであろうレブル250の水冷シングルと比べれば、GV250DRAははるかに低振動だ。そして、Vツインらしいフワッとしたトルクの盛り上がりも印象的であり、長時間走り続けていても飽きない理由がここに集約される。
なお、唯一気になったのはシフトフィールだ。長いリンケージを介しているためか、特に1速から2速にシフトアップする際にニュートラルに入ってしまいやすい。つま先をしっかりかき上げることを意識すれば問題なく変速できるので、それができるようにシフトペダルの角度を自分の体格に合わせて微調整するといいだろう。
扱いやすくもクルーザーらしい後輪荷重のハンドリング
クルーザーは、フロントフォークの角度が寝ているほどクールだ。しかし、過ぎたるはナントやらで、度を超えると低速域でハンドルが切れ込んだり、フォークの作動性に悪影響を及ぼしたりする。レブル250はスタイリングとハンドリングを両立させるため、フォークの角度を30度と寝かせながら、キャスター角を28度とする「スランテッドアングル」でこの問題を解決している。
さて、GV250DRAはというと、何とキャスター角は33度だ。スランテッドアングルを採用しているかどうかの記載はないが、走り出してみると微速域でも舵角の付き方に違和感はなく、速度を上げていってもハンドリングは極めて自然だ。
着座位置はリヤアクスルに近く、車体の傾きに対して遠くにあるフロントホイールが穏やかに追従する、そんなイメージのハンドリングだ。操縦次第ではまるでネイキッドのように旋回するGV250S-EVOシュプリームと比べると、こちらの方がクルーザーらしいと言えるだろう。
乗り心地に関しては、どっしりと座るライディングポジションのため、それなりにリヤタイヤからの突き上げ感はあるが、前後のサスペンションは短いストロークの中でうまく衝撃を吸収してくれており、これなら長時間乗っていても疲れにくいだろう。
ブレーキについては、前後とも対向式キャリパーを採用するGV250S-EVOシュプリームに対し、こちらはピンスライド片押し式キャリパーなのでタッチなそれなりだ。とはいえ、シュプリームよりもブレーキディスク径は大きく、それもあってか絶対制動力に関しては特に不満はない。
ホンダのV-ツイン マグナやカワサキのエリミネーター250Vなど、かつては日本メーカーもVツインのモダンなクルーザーを250ccクラスにラインナップしていた。そうした懐かしいモデルを彷彿させるこのGV250DRAは、街中に増えすぎたレブル250への強烈なカウンターパンチと言えるだろう。クルーザーの購入を検討している方、ぜひ候補の1台に加えてほしい。