ホイールベースがちょっと長め、ヤマハ・トリシティ250!? XMAXエンジン搭載で実現した新境地、“LMWアドベンチャー”

トリシティ155(初代2BK)の極上カスタマイズが登場! ルーフキットやパニアケースなどでツアラー用に仕立て上げ、さらに250ビッグスクのエンジンをスワップした珠玉の一台です。

●PHOTO:山田俊輔(モーターファンBIKES)
●REPORT:モルツ
●OWNER:黄星さん
●取材協力:MOTO SERVICE MAC
(http://moto-service-mac.jp/)

前2輪、後1輪は画期的なシステム!

フロント二輪、リヤ一輪という構成のヤマハ・トリシティシリーズ。その斬新は設計から当初は見慣れなかったスクーターだが、初代(125)が発売してから11年が経過した今はこれほど理にかなったコミューターはないと感じている。

初代トリシティ125(EBJ-SE82J)は2014年9月にデビュー! 以降、155㏄や300㏄クラスも登場してシリーズ化。

というのも、ヤマハ独自のLMW機構(リーニング・マルチ・ホイール)によって“普通のバイク”のように車体を倒して旋回できるから違和感なく操作できるうえ、3輪がもたらす安定感によってちょっとした悪路もグイグイ突っ込んで行けるのだ!

その反面、車重の増加や直立気味の乗車姿勢、収納スペースの狭さなどのウィークポイントもあるにはあるけれど、それを補って余りある魅力が詰まっている。そんなトリシティは125のほかにプラットフォームを共通とする155版、そして主に欧州をターゲットにした300クラスの3種類がラインナップしている。今回はトリシティ155(初期型)をベースにした珠玉のカスタムをご紹介しよう。

ルーフキットで全天候型にアレンジ!

外装はMDFのデカールキットでドレスアップ! ホワイトボディにブルーストロボがスポーティな印象だ

トリシティはある意味で完成されており、特殊な車体なのもあってややカスタムパーツが少ない傾向にある(気がする)。だからこそイジった時の存在感は抜群で、今回のオーナー(黄星さん)のようにとことんヤリきることで満足度もひとしおなのだ。

まず目に入るのは大きなスクリーン&屋根だろう。これはTEITO製ルーフキットでワイズギア(標準アクセサリー)での取り扱いもある由緒正しい代物! ポリカーボネイトのハードコートスクリーンには電動ワイパーも備えており、近年ではフードデリバリーなどでも装着されている。

オーナーはこれだけに留まらず、キャリア部分にミニバイク用を追加して延長することで“荷台”を拡大。さらにカワサキ・GTR1000用のサポートステーを取り付けてへプコ&ベッカーのパニアケースをセットしている。

バツグンの積載力+αでキャンプツーリングもお手の物!

今や定番となったアドベンチャースタイルを彷彿とさせる出で立ちだが、それもそのはずオーナーはツーリング好きが高じてSSTRにも毎年参加するほど! キャンプにもよく行くそうで「大型テントやチェアなども持っていけるので快適なキャンプが楽しめます!」とご満悦の様子。クルマと比べて積載力が乏しいバイクの場合、どうしても必要最低限のレジャー装備になってしまうけれど、軽自動車並みの荷物が積めるこの車両なら無問題! 

重い荷物を積んでいてもふらつきにくく、安定した走りが楽しめるのもLMW採用のトリシティならでは! 先のTEITO製ルーフキットによって雨風も凌げるとなれば鬼に金棒だ。さらに夜間も走るため前二輪の間には4基のフォグランプを備えて視界不良を補っており、試行錯誤して取り付けるフォグランプもスマートに設置できるのは同車のアイデンティティだろう。

快適クルーズを実現するポジション!

また、私的にとても気に入ったのがポジションだ。まず台湾ヤマハ純正の“コブ付き”シートを備えており、このバッグレストが腰~お尻をしっかりとホールドしてくれる。

さらにオーナーがネットで購入したフォワードステップが追加されて足を投げ出せるようになっていること。トリシティはフットスペースにあまり余裕がなく、私のように足長オジサンだとヒザが直角になりがちだけどこれによってゆったりとしたクルージングが楽しめるように。

敏腕カスタマーによるエンジンスワップ術

そんな快適装備が満載の車体だけど、ここで一つ問題が!? トリシティ155は最高出力15psを発揮し、高速も走れて便利だけど元々の車重が重いこともあってか、決して速いとは言い難い。目的地までスムーズに辿りつくためにオーナーが取った手段は禁断の「エンジンスワップ」!

とくにスクーターの場合は他車用や大排気量へのエンジン換装はままあるけれど、トリシティでは珍しい。ビッグスクカスタムで知られる“モトサービスマック”へ持ち込み、オーナー所有の旧XMAXのパワーユニットに入れ替えることになった。

エンジン前方のスペースにファンを2基備え、足元のインテークから効率よく走行風を導く

フレームのリヤ周りを一新してトラス構造とし、ワンオフハンガーを使ってエンジンを載せ替えている。これによって約8馬力のパワーアップを実現! なおオーナーの希望もあって約300㎜ロンホイ化してマウントされている。パニアケースはほぼ固定で装備しているため、横から見た時のバランスが崩れないように仕上げているのだ。

【試乗】想像以上の安定感&俊敏性!

快適な走りに思わず笑顔! 三輪ゆえに砂利道でも滑りにくいのも嬉しい。兄貴分の300や大排気量のナイケンとはまた違った乗り味だ

実際に試乗してみると間延びした感じはさほどなく、ハンドルと荷重移動を駆使してヒラヒラと旋回できる。純正のトリシティはスクーターにしては珍しく50/50の重量配分を叶えていて、このカスタム車はおそらくリヤヘビーになっているのだが急な曲道でも車体が流れるような気配はない。さらに250クラスのエンジンによって出足からストレスなく加速していける。吸排気や駆動系をイジっていないのも奏功しており、高回転域まで滑らかな伸び具合はフィーリングを重視した結果だろう。

ハンドル周りもアクティブそのもの!

このエンジンスワップに伴い、ハーネスなどの電装系もXMAX用に入れ替えられており、初期型のトリシティ155にはないスマートキーを有しているのも見逃せない!

ステムはウイルズウィン製メッキポストでバーハン化している

またメーターもXMAX用を移設しており、モトサービスマックがハンドルバーをワンオフしてブレース部分にダイレクトに設置するという手法が取られている。トリシティ純正は横長の液晶タイプで、これはこれで近未来感のあるデザインなのだが、パネル自体が大きいXMAX用は各情報をとらえやすく、何よりもアナログタコメーターを備えているのがスポーティだ。

ハンドル幅はやや狭く思えるが操作にさほど影響はなく、細路地などを走る際にも活躍。レバーやバーエンドなどのアルマイト(ブルー)も見どころだ

シート下収納も健在です!

またスクーターでエンジン載せ替えをすると往々にしてシート下収納を潰してしまうケースも多い。これはエンジン自体のサイズやレイアウトも影響しており、さらにビッグスロットルボディ(orビッグキャブレター)を採用したり、センターにリヤショックを通すなどチューニングやドレスアップに起因している。

しかし、この車両は純正のインナーカバー(形状)を踏襲しながら上側半分をフラットに残している。ヘルメットなどは入れられないがウエスや工具、雨具、ガジェットなどの小物を入れるのには十分! 元々トリシティ自体、シート下の容量が約23.5ℓと頼りないだけに少しでも残してくれるのはありがたいところだ。

そんなわけで、リヤショックはフレーム構造などの変更もあって1本仕様にチェンジ。これは“見た目”が主な理由だけど、リヤブレーキ側からブラケットを介してZX-14R用サスペンションを使用しているから非常にコシのある足周りとなっている。

ハブマウントのトリシティ300用ホイールを移植!

さて足周りの話が出たところで最後の大詰め! トリシティ125/155オーナーならわかるかもしれないが、フロント側をよく見て欲しい。なんとトリシティ300用のホイールを移植しているのだ!

トリシティ125/155は通常のアクスルマウントだが、300はクルマなどと同じハブマウントを採用している。簡単に入れ替えできるものではなく、これもモトサービスマックがワイドトレッドスペーサーをこしらえて実現! もちろんリム幅もワイドになって剛性感を高めつつ、タイヤも太め(120/70-14)を履けるから安定した走りに貢献してくれるというわけだ。

ルーフの追加や積載力を強化し、“全天候型アドベンチャーLMW”と化したこの『トリシティ250』でのツーリングはさぞや快適なことだろう。「え!? ここまでするなら最初からトリシティ300がいいんじゃない?」という声が聞こえてきそうだが、実はオーナーは300も一度購入済みという。ただ初期のリコールによる販売中止などの事情も重なって手放したそうだが、他にも現行型のトリシティ155(8BK)やアプリリアSR GT200をシーンに応じて使い分けている。さらにMVアグスタのツーリズモヴェローチェ、ドゥカティ748R、NSR250R、YZF125Rなど、ミニ~ミドルクラスのフルカウルスポーツやアドベンチャーも所有しており、誰もが羨むバイクライフを満喫しているそう!

そんな大のバイク好きなオーナーだけに、自分用にカスタマイズされた世界に一台(?)だけのトリシティ250を作ることに疑問を抱くはずもなく、それを叶えてくれたモトサービスマックもかなりの手練れ! こういう車両に出会えるから、バイクのカスタムって面白いんですよね~!!

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佐藤恭央