位置付け的には”凄いカブ”な「スーパーカブC125」。排気量1ccダウン、圧縮0.7アップが素晴らしかった!

バイク史に輝く傑作モデルであるホンダのスーパーカブ(C100)は1958年にデビュー。誕生後60周年を迎えた2018年6月にC125は発表された。同年9月からシリーズ最高峰モデルとして新発売され、高い人気を得ているが早くもパワーユニットを一新する新型が投入され、2021年9月27日に新発売された。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 ホンダモーターサイクルジャパン

ホンダ・スーパーカブC125…….440,000円

ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125

パールニルタバブルー

ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125

パールネビュラレッド

 今回の新型登場は、ズバリ搭載エンジンの換装にある。外観上はごく細部の使用パーツを除いてほとんど共通。つまりパッと見で新旧を区別することは難しい。
 ひとつだけわかりやすい点を報告すると、リヤのスイングアームに取り付けられているピリオンステップのステーがダイキャスト製に変更されている。
            
 広報資料によると、今回一新されたエンジンは、環境性能を向上させているのが主な特徴。その手法としてよりロングストローク化したことと圧縮比が高められている。もちろん空冷4ストロークOHCの前傾単気筒エンジンである事に変わりはない。変更前のエンジンと見比べると、キャタライザーを含めるエキゾーストパイプとシリンダーや同ヘッドの冷却フィンデザインが異なっている。
 またクランクまわりも一新されており、右側カバー部にあったエンジンオイル量の点検窓が廃止されていた。新エンジンはオイル給油口キャップに付くレベルゲージで点検する方法に回帰している。
 
 従来もロングストロークタイプだったが、今回はさらにロングストローク化を徹底。ボア・ストロークは52.4×57.9mmから50×63.1mmになっている。余談ながらこの50mmのボア径はスーパーカブ110のボアと共通だ。C125の行程÷内径を算出すると、従来は1.10。新型は1.26。GB350の1.29に迫るかなり大胆なロングストローク化が印象深い。
 圧縮比も9.3対1から10.0対1になり、スペックデータの最高出力も若干向上。ピークトルクの発生回転数は5,000から6,250rpmになっている。この差は高回転域までトルクの落ち込みが少ない事を示していると思われる。
 また1次減速比と2次減速比が若干変更された。2次側はドリブンスプロケットが36丁から35丁に変更。総減速比で比較すると、ローギヤで21.62から21.43、4速トップで7.98から7.91へ僅差ながら高めのレシオに変更。
 結果的に燃費性能が向上。定地燃費は69から70km/Lに。実用値により近いモード燃費率では、なんと66.1から68.8km/Lに向上しているのが驚きである。
 その他こまかな違いにも言及すると、標準使用プラグがNGK呼称で6番手から7番手へホット(高熱化)タイプに変更。
 取り扱い説明書に表記されている各ギヤの守備範囲もローが0-30km/hから0-35km/hへ、セカンドが15-55km/hから15-60km/hへとワイドになっている。

アンダーボーンフレームに大きな変更は無い。今回の一新は搭載エンジンの刷新にある。

各速守備範囲の広い柔軟な乗り味が快適。

 試乗車を目前にするとスーパーカブとしては別格の上質な仕上げに改めて驚かされる。筆者にとってスーパーカブは、あくまでビジネス用途の代表格だった古き原点の印象が色濃く残っているだけに、C125のエレガントな雰囲気には、良い意味での違和感を覚えてしまう程である。
 上質な塗装仕上げを始めメッキパーツの多用、前後にチューブレスタイヤを履くキャストホイールを採用。ブレーキも油圧ディスク、おまけにスマートキーが採用され、シートもスイッチをワンプッシュするだけでOK。まるで4輪車のトランクリッドオープナーを操作する感覚だ。
 お値段も44万円と高価だが、同シリーズの中にあって、別格の存在感と魅力を漂わせている事は間違いないのである。
 
 跨がると110よりはいくらか大柄で取り回す手応えも少しばかり重めだが、決して大き過ぎず、重過ぎずで原二バイクとして、それなりに立派で程良いサイズ感が好印象。

 シートに跨がって両足を地面に着くと、丁度ステップの直後に脛が触れる感じ。車体がスマートで、足は車両に近い位置に接地できるので、足付きも楽でバイクを支えやすい。足が簡単に付き、車体も重くはないので、超小回りUターンを決める時に少し車体から離れた前方位置に一瞬足を着くワンステップターンも楽に決められるから狭い路地等、何処へでも気軽に入って行ける安心感がある。
 そして何より細めの17インチタイヤは、落ち着きのある安定した走行性能を発揮、作動性の良いリヤサスペンションも好印象。クッションの厚みもたっぷりなシートも相まって乗り心地はとても良い。基本的には気分的にも肉体的にもリラックスして安楽に乗れるが、ステップとシート及びハンドルとの位置関係がバランス良く、ニーグリップこそ無いが、バイクの様に積極的な操縦にも応えてくれる点が見逃せない。
 前後ブレーキも十分に満足できる効きと扱いやすさがあり、どんなシーンでも安心感のある快適な乗り味が魅力的。改めて全体的にバランスの取れた仕上がりの優秀性と完成度の高さに感心させられたのである。
 
 さらにエンジンの進化も侮れない。それはハイパワーを追求した物ではなく、常用域でその恩恵を享受できる仕上がりが印象的。柔軟性に富む出力特性が与えられていた。
 ロー、セカンドと早め早めのシフトアップにも耐える十分に太いトルクフィーリングもさることながら、少し高回転まで引っ張ってシフトタイミングを遅らせても、ゆったりと着実に吹き上がって行く、回転の伸び感が気持ち良い。各ギヤにおける守備範囲の広い柔軟な出力特性は、もともとある、ワイドレシオな4速ギヤとの相性がさらに良くなった印象を覚えた。
 パフォーマンスとして新旧モデルに大きな差があるわけではないが、どこか大人びた落ち着きのある乗り味と吹け上がる時の感覚的な「伸び」の良さが快適な乗り味をさらに強調してくれる感じである。
 実用燃費率の向上ぶりも期待値は大きい。ちなみに外付けの回転計を装着すると、アイドリング回転数は1,400rpm。ローギヤでエンジンを5,000rpm回した時の速度はメーター読みで26km/h。4速トップギヤで50km/hクルージング時のエンジン回転数は3,500rpmだった。

足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)

ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125
ホンダ・スーパーカブC125

ご覧の通り膝に余裕を持って両足はベッタリと地面を捉えることができる。車体はスマートで110kgの車重も扱いは重くない。支えるのも取り回しも楽。シート高は780mm。老若男女、まさに多くの人にとって扱いやすい。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…