スズキVストローム1050XT試乗|見た目は80年代(しかもカッコいい)なのに、 中身は最新6軸IMU電子制御!

排気量は変わらないものの車体デザインなどを大幅ブラッシュアップし、車名もVストローム1000→1050に。上級仕様である「XT」は6軸IMUやクルーズコントロールを新搭載し、電子制御システムを進化しています。80年代後半のパリ・ダカール・ラリー出場マシン「DR-Z(ジータ)」を彷彿とさせる車体色も設定し、スズキ・アドベンチャーの伝統を継承。乗ってみました!!

REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

※2020年6月15日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。

ディテール解説

スズキV−ストローム1050XT
 結論から言うと、嫌なところが見つかりません。エンジンは味わいのある脈動感と滑らかな伸び切り感を併せ持ち、低中回転域ではトルク感がしっかりとあり、高回転までパワフル。それでいて、スロットルの開けやすさがあるから、円熟期に入ったTL1000S/Rに由来するスズキVストロームのパワーユニットには感服するばかりです。
スズキV−ストローム1050XT
 前後サスは初期領域ではよく動き、乗り心地も良好ですが、ブレーキングから旋回にかけては適度に剛性があり、踏ん張りが効く。ラジアルマウントモノブロックキャリパーと310mmフローティングディスクを組み合わせたフロントブレーキを含め、言うことなしです。
スズキV−ストローム1050XT
「Vストローム1050」では。工具を使って上下3段階で高さ調整ができたウインドシールド。「XT」では、工具不要で11段階、50mm刻みの幅で高さが変えられます。
スズキV−ストローム1050XT
 スクリーンは従来型より幅を狭めていますが、風洞実験によって形状を作り込み、防風性能は同等としています。実際、ハイスピード領域でも優れたウインドプロテクション効果を感じ、高速巡航も得意としています。
スズキV−ストローム1050XT
  多機能インストルメントパネルは「Vストローム1050」では背景が白、「XT」では背景を黒にした液晶ディスプレイを採用。SDMS(スズキドライブモードセレクター)やTCS(トラクションコントロールシステム)、ABSのモードを常に表示します。
スズキV−ストローム1050XT

 SDMSやTCSは、メーターパネルを見ながらハンドル左のスイッチで設定できます。SDMSはA・B・Cの3つの走行モードが選べ、Aモードは最もシャープなスロットルレスポンス、Bモードはスロットルレスポンスがややマイルド、そしてCモードは穏やかな出力特性で、雨天時などに有効です。

 TCSは3モード+OFFから選択可能で、最大限に介入するのが濡れた路面など悪条件での走行に向いているモード3。TCS介入時は、TCインジケーターが点滅で知らせてくれます。

スズキV−ストローム1050XT
 ギヤが4速以上、車速約50km/h以上で設定できるクルーズコントロールシステムも「XT」は搭載。ハンドル右にスイッチを備えます。高速走行時や長距離ライドで乗り手の負担を軽減してくれるのは間違いありません。
スズキV−ストローム1050XT

 6軸の車体姿勢を常に把握する「XT」では、バンク角に応じたABSの介入を可能としています。前輪ブレーキへの入力がバンク角に応じて一定圧に達した場合、リヤブレーキへ自動に増圧させ車体を安定。コーナリング中であれば、ラインのトレースをサポートしてくれるのです。感度レベルの違う2つのモードが選べ、モード1はシステムによるサポートを最小限に抑えています。

 また停止後、ブレーキを放しても約30秒間リヤブレーキを自動的に作動させ、再スタートする際のスムーズな発進をサポートする「ヒルホールドコントロールシステム」や、下り坂を走行時に勾配に応じてABSの作動を最適化し後輪リフトを減らす「スロープディペンデントコントロールシステム」なども搭載。先進的な電子制御装置がライディングをより安全に、より快適なものにしてくれ、大きな安心感をもたらしてくれるのでした。

スズキV−ストローム1050XT
 最後になりますが、アドベンチャーモデルのフラッグシップで1,518,000円(税込み)という価格設定は称賛に値します。スタンダードなら1,430,000円(税込み)ですが、6軸IMU搭載でさまざまな電子制御の恩恵に預かれる「XT」で、この価格に抑えたことは素晴らしいとしか言いようがありません。

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著者プロフィール

青木タカオ 近影

青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。最新バイク情報をビギナーの目線に絶えず立ち返…