【試乗記】寒い冬に、冷え込む朝に! BMWのスクーター、「C 400 GT」は、シートヒーター&グリップヒーターが標準装備だから、1年通して快適です。

BMWのラインナップは現在6っつのカテゴリーに分類されている。その中でピュアな移動道具として捉える事ができる“Urban Mobility”の分野には最新EVのCE 04を含む3機種のスクーターがリリースされている。今回はツアラーとしての魅力も侮れないC 400 GTを走らせてみた。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ビー・エム・ダブリュー 株式会社

BMW C 400 GT……1,059,000円〜

ブラック・ストーム・メタリック2…….1,085,000円

アルピン・ホワイト
カリスト・グレー・メタリック…….1,065,000円
BMW Motorrad Concept C (2010-11)BMWブランドのマキシスクーターはこの試作車から始まった。

 BMWが新開発のスクーターを投入し、市場に大きなインパクトを与えたのは2012年の春だった。2010年11月に市場参入を図るコンセプトワークが公表され、既にエンジン車と電動車の二本立てとする戦略が表明されていた。
 初代モデルはC650SとGTの2機種。欧州でヒットモデルとなったヤマハ・TMAXを始め、同市場の拡大を睨み、ラージサイズ・スポーツスクーターのSとBMWらしいツアラー的な高機能を入れ込んだGTをリリース。
 新開発された水冷直打式DOHC2気筒のバランサー付きエンジンは台湾のキムコからOEM供給を受け、当初はベルリン工場での製造計画が表明されていた。
 余談ながら同エンジンは同社EV(4輪)のi3にオプション搭載されたレンジエクステンダー用発電エンジンに活用された事でも知られている。

 その後幾多の変遷をを受けながら、現在は400ccモデルの2機種、C 400 Xと同GTが販売されている。 
 いわゆる“マキシスクーター”と呼ばれるラージサイズモデルだが、リヤサスペンションには一般的なユニットスイング方式が採用され、いわゆるごく普通のスクーターになっている。搭載エンジンも水冷単気筒のショートストロークタイプ。中国で生産されるモデルである。
 排気量は349cc。つまり16歳以上で取得可能な普通二輪免許証で乗れるのがポイント。もちろんAT限定でOK。真っ向ライバルとなるのは、スズキ・バーグマン400と言える。

 いくつかの主要諸元データを比較すると全長は35mm、ホイールベースも15mm短いが、全高とシート高はC 400 GTの方が高い。前輪は同サイズの15インチ。後輪はバーグマン400の13インチに対してC 400 GTは14インチのピレリ製タイヤを装備している。車両重量はほぼ同レベルである。
 外観の印象としては、共になかなか立派なボリューム感を覚えるが、ロー&ロングフォルムのバーグマンに対して、C 400 GTはアイポイントの高い乗り味が特徴的。
 基本的には、参考掲載した当初プロトタイプ(コンセプトC)のデザインセンスが継承されている事がわかるが、現在は単気筒エンジンやユニットスイング式の採用からわかる通り、スクーターとしてごくオーソドックスな手法で仕上げられているのが印象深い。
 車両価格もBMWブランド製品としては比較的リーズナブルな設定で、入門機と言えるG310シリーズに次ぐ親しみやすさがあるのも見逃せない特徴である。

グリップ&シートヒーターの装備が別格の商品力を発揮する。

 シートカウルエンドの両サイドに大きくGTの文字が描かれたTriple Blackの試乗車を受け取ると、いかにも大排気量スクーターらしい立派なボリューム感が印象深い。
 以前リリースされていたC 650 Sportよりは幾分小さめだが、いわゆる本格派の250ccスクーターよりは明確に大きく立派。
 それが400cc(349cc単気筒)エンジン搭載車であることは事前に心得ていたが、例えば500cc、あるいは650ccですと言われたとしても素直に信じてしまえるだけの風格が漂っている。
 ワイドで分厚いクッションのシートに腰を落ち着かせると、適度に腰高な印象。シート高はC 650 Sport程高くはなく足つき性も丁度良い。スズキ・バーグマン400の様に腰を低く落として座り込むイメージではない。
 ハンドル位置も適度な近さで、自然と腰骨が立ち、背筋を伸ばして姿勢の良いライディングポジションが取れた。
 足つき性は写真からもわかる通り、両足の踵は少し地面から浮いてしまうが、スクーターを支える上では特に不安は感じられない。ボードタイプの左右ステップには、ちょうど足を下ろす位置(前ステップと後席用常設ステップの間)が抉られているので、ステップボードの淵に邪魔される事はない。ワイドボディもあまり気にならず、スマートに支えやすかった。

 ミドルサイズスクーターとしての重量感も適度な感触。足代わりの移動手段として使うのが順当だとは思う一方で、そのまま足を伸ばして遠くまでツーリングしてみたい気分にかられてしまうから不思議である。
 考えられる要因はエンジンの出力特性? 前15、後14インチのホイールサイズ? はたまたサスペンションか? 気付かされた明確な違い(優位性)は標準装備されたハンドルグリップヒーターとシートヒーターの存在が見逃せない。
 ごく当たり前の装備として奢られたヒーターの快適性に触れるけで、ライバルを一歩リードする価値と魅力が感じ取れ、そこに優越感すら覚えるのである。    
 ハンドル右手の専用スイッチボタンを押すだけで、いずれも強、中、弱の3段階調節が簡単にできる。メーター内にディスプレイされる等、いかにも標準装備ならではの仕上がりと優れた使い勝手が嬉しい。

 乾いた排気音を響かせる単気筒エンジンはショートストロークタイプの349ccで、特別パワフルと言うわけではないが、ピークトルクは399ccのバーグマン400と同レベル。
スロットルレスポンスは十二分に元気が良い。その小気味よく軽やかな吹き上がりに加えて、回転の伸びの良さも備わっており、そのパフォーマンスは十分に快活である。
 峠道を駆け抜ける様なシーンでも、シャキッと素直な操縦性を発揮。スクーターならではのイージーライディングで、なかなか爽快な走りを楽しませてくれる。
 ASC(オートマチッック・スタビリティ・コントロール)やABSも装備されているので滑りやすい季節のツーリングでも安心感は高い。
 しかも基本性能として直進安定性が高く、市街地レベルの走りから高速クルージングまで落ち着いた気持ちで快適に走れる安心感が備わっている。
 上手くまとめられたウインドプロテクション効果も高く、ライダーの体格やライディングポジションの好みや走り方にも柔軟に対応できる自由度も高いのである。

 次に試乗機会が得られるなら、ある程度の荷物を備えてロングツーリングに使用し、実用燃費率もしっかりと計測してみたいと思えた。GTの名に相応しい快適な乗り心地が魅力的に感じられたからである。

足つき性チェック(身長168cm / 体重52kg)

快適な座り心地のシートもあって、股下の車体はそれなりにワイド。シート高は775mmだが、着座位置によってはご覧の通り両足の踵が少し浮いてしまう。扱いは決して軽快ではないが、車体を支える上で不安は感じられない。ステップボードも足つき性を邪魔しない様、デザインに配慮がある。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…