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959 Panigale Corse
Lツインエンジン搭載のパニガーレは、6軸IMU搭載の「Panigale V2」へとバトンを渡したので、これがラストチャンスであったでしょう「959 Panigale」の上級バージョン「959 Panigale Corse」に乗ることができました。
「コルサ」はレースや競争をイタリア語で意味し、昔からドゥカティのスポーツバージョンに用いられてきました。モノコックフレームに積む心臓部は「スーパークアドロ・エンジン」と呼ばれる水冷4ストロークL型2気筒DOHC4バルブで、ボア・ストロークは100×60.8mm。先代の「899 Panigale」からストロークを伸ばして(57.2→60.8mm)、排気量を899→955ccにしています。
まず目を惹くのが、MotoGPマシン「デスモセディチGP17」によく似たカラーグラフィック。ロレンソやドヴィツィオーゾが乗った2017年シーズンのマシンです。登場したのは2017年11月。レース好きにはたまりません。
車体のサイズ感はスーパースポーツ600クラスに匹敵するほどのコンパクトな印象で、見るからに実力主義者。前後サスペンションはオーリンズ製で、倒立フォークはショーワ製のスタンダードに対しコチラはNIX30、リアショックもフルアジャスタブル式のTTX36。ブレンボ製のラジアルマウントキャリパーやホイール、スイングアームはスタンダードと共通としています。
シート高は830mmで、身長175cm、体重64kgの筆者が乗って地面へ両足をおろすと、ツマ先立ちに。ただし、実際の走行では片足立ちなのでカカトまで届き、車両重量(乾燥)175.5kgと軽いので取り回しも苦にならない。
ペースを上げるほどにしっくりくる
スーパースポーツでいつもサーキットをガンガン走っているわけではない筆者からすると、乗る前はかなり手強いだろうなぁと若干怯みます。高回転重視の味付けで、クラッチを繋いで走り出すのもギクシャクして扱いづらい。なんてことはないだろうかと、想像して身構えてしまうのでした。
しかし、そんなことはありません。そういえば「899 Panigale」の頃から低速トルクがしっかりあり、神経質なんてことはないのです。959では低回転からの常用域でさらに力強く、街乗りも苦にしません。
とはいえ、公道をチンタラ走るのは、エンジンも足まわりも想定している速度域とは違うことが容易にわかります。軽快な車体は、ペースを上げるほどに言うことを聞いてくれ、しっくりくる印象です。エンジンは高回転まで淀みなく吹け上がり、極太トルクを伴って加速は強烈そのもの。
ただし、狂暴すぎて手に負えないというのではなく、気持ちよく引っ張り上げられる快活なエンジンになっています。ピックアップは鋭いのですが、コーナーの立ち上がりで不用意に開けられない、なんていう気難しさはないところにスーパークアドロLツインの熟成度の高さを感じずにはいられません。
クイックで鋭く、素直なハンドリング
ハンドリングはクイックでシャープ。コンパクトな腰高のライディングポジションで、荷重をかけるとスッと向きを変えていく素直さは感心するほどです。
サスペンションは低いスピードレンジでも仕事をしてくれ、サーキットでないと本来の働きをしてくれないという意地の悪さはありません。ゆっくり走っていても上質な乗り心地で、ブレーキも制動力はもちろんコントロール性が秀逸。繊細な操作にも着実に応えてくれるから、コーナーの進入だけでも夢中になれる面白みを味わえるのでした。
モードによってトラクションコントロールやABSの介入度が変化するライディングモードは「レース」「スポーツ」「レイン」の3種で、ドライで乗る公道では「スポーツ」から切り替えようとは思いません。これほどのマシンですから電子制御は大きな安心材料。雨が降れば、迷うことなく「レイン」に頼ることになるでしょう。
もしオーナーになれば、街乗り→高速道路→ワインディングというショートツーリングが、間違いなく休日の楽しみになりそうです。そして時々サーキット走行会も交えて、スポーツライディングに夢中となるバイクライフが「959 Panigale Corse」とならイメージできます。
我々はあと何年バイクに乗れるのでしょう。走りの腕を磨くために、パニガーレのようなモデルととことん向き合う、そんな期間が数年あってもいいような気がします。試すなら早いうちがベターでしょう。