【GSX-S1000GT試乗】単なるお気楽ツアラーではない、節々に感じるスーパースポーツのDNA。懐がとにかく広い!

スズキが提案する新世代のGT(グランドツアラー)は、スーパースポーツゆずりのパワーユニットやアルミフレームに最新の電子制御システムを数多く備えている。ストリートでの試乗を通して、その装備や快適性とスポーティさを両立させている走行フィーリングをお伝えしよう。
REPORT●横田和彦(YOKOTA Kazuhiko)
PHOTO●山田 俊輔(YAMADA Shunsuke)

スズキGSX-S1000GT … 159万5000円(税込)

スズキが新たなカテゴリーへ一歩を踏み出した

GSX-S1000シリーズが誕生したのは2015年。名車と呼ばれているGSX-R1000(K5)のパワーユニットをストリート向けにチューニングし専用設計されたアルミフレームに搭載。小ぶりなライトカウル装備のGSX-S1000と、フレームマウントのハーフカウルを備えたGSX-S1000Fの二本立てだった。スーパースポーツ用をストリート向けにチューニングしたエンジンが想像以上にパワフルで、アグレッシブな走りをすることに驚いた。
そのGSX-S1000は2021年にフルモデルチェンジ。スタイリングをより過激なストリートファイターテイストにし、電子制御スロットルをはじめとした各種電子制御システムを搭載。ところがハーフカウルモデルの発表はなかった。しかしすぐにその理由がわかった。スズキは新型GSX-S1000に対して単純にカウルを装着するのではなく、明確にコンセプトを変更したニューモデルを用意していた。それが低く構えたノーズと伸びやかなボディーラインを持つスポーツツアラー・GSX-S1000GTである。
GTは「グランドツアラー」の意。より旅バイクとしての特性と利便性を高めたモデルとしてリリースされたのだ。

やや大柄な印象を受けるが、またがるとまとまりの良さを感じる。意外だと感じたのは、ハンドルが思ったほど高くないこと。少し幅広だが、上から軽く抑えるような感じになる。単なる「お気楽ツアラー」じゃないぞという意志が伝わってくるようで個人的には好み。ヒザの曲がり具合も適切なもので、ステップへの荷重もしやすい。ライダーが積極的に操ることを意識している構成だと感じた。

ライダー身長:165cm/体重70kg

トルクフル&なめらかなエンジン特性が市街地で威力を発揮

セルボタンを押すと直列4気筒エンジンが目を覚ます。低く図太い排気音は力強さを感じさせるもの。アシスト&スリッパークラッチの効果で軽い操作感のクラッチをつなぐと、スムーズに走り始める。4気筒エンジン特有の低回転域からなめらかなトルクデリバリー感が心地良い。個人的に大好きなエンジン型式ではあるが、アクセル操作に対して過不足なくリニアに反応するあたりに熟成されていることを感じる。
ストリート向けに調教してあるので信号でのストップ&ゴーやクルマの流れに乗るなどの動きは特に意識せずに自然に行える。サスペンションの動きもよく路面の凹凸からのショックを吸収してくれるためストレスフリー。シフトアップ、ダウンの両方に有効なクイックシフトシステムの操作性も良好。リッターバイクならではの安心感に包まれて走る印象だ。

「スズキドライブモードセレクター」と呼ばれるパワーモードは3種類用意されている。Aモードが「アクティブ」で、アクセルに対するレスポンスが一番鋭い。いわゆるスポーツ走行向けだ。「ベーシック」という位置付けのBモードは比較的マイルドな反応を見せる。市街地走行やギクシャクすると後ろのライダーがバランスを崩しやすいタンデム走行時などに有効。そして雨の日など滑りやすい路面のときに使いたいのがCモードの「コンフォート」だ。レスポンスが穏やかでトルクの立ち上がりもマイルド。トラクションコントロールと相まって、不安なく走ることができる。どれも最高出力は変わらず、到達までのフィーリングが異なる。
個人的に好みだったのはAモード。大柄な車体をキビキビと走らせることができ、コントロールから外れることもなかった。余談ではあるが、兄弟モデルのカタナに試乗したときはAモードだとアクセルへのツキが良すぎる感覚で、Bモードのほうが気分良く走れた。メーカーによると両車の電子制御システムのセッティングは同じだという。不思議に思ったが車重やサスセッティング、乗車位置、姿勢などが影響しているのだろう。

ワインディングでも充実感が得られる!

ツアラーだからコーナーリングは得意じゃないのではと思う人もいるかも知れないが、GSX-S1000GTにそれは当てはまらない。なにせエンジンはスーパースポーツ、車体はストリートファイター由来のものだ。フロントブレーキキャリパーはブレンボ、前後サスペンションはフルアジャスタブルと走りに対する装備を怠っていないことからも想像できる。
コーナーの進入ではそこそこのハードブレーキングでも車体は安定。寝かし始めではGSX-S1000Fのときに感じたフロント周りの重さはやや改善された感はあるが、それでも重量車らしい手応えを感じる。バンク中も前後サスペンションのバランスが良く、軽いギャップ程度なら無視できるほど。コーナーの出口ではパワフルかつスムーズな4気筒エンジンの特性を活かして豪快に脱出することもできる。その際、トラクションコントロールが搭載されていることは安心感につながる。もちろん過信し過ぎは禁物だが。
切り返しのときに幅が少し広く感じたハンドルが役立つのに気付いた。重量車なのでそれなりの荷重移動が必要となるのだが、入力がやりやすいのである。
終始ライダーの操作に従順な挙動は安心感と充実感が得られる。GSX-S1000GTならツーリング先で出会った初めての峠道でも気分良く駆け抜けることができるだろう。

ツーリングからスポーツライディングまで幅広く対応

GSX-S1000Fのキャラクターを残しつつ、よりツアラー指向へと振ったGSX-S100GT。スポーツ走行性能を大きく損なうことなく長時間乗っていても疲れないフィーリングや積載性の増加などを実現している。メインはツーリングに使いたいけれど、スポーツライディングに対する想いも残っている、なんて人にとってはベストな選択になるだろう。
ちなみにスズキの中の人から聞いた話では「今までスズキ車に乗っていなかった人にも高評価で購入していただいている」という。スズキというとクセがある印象を持つ人もいるようだが、とても真摯に製品開発をしているブランドである。その良さが多くの人に受け入れられているというのは嬉しいことだと感じた。

純正パニア・スタイルのまとまり感が最高にイイ!

個人的に良いと感じたオプションパーツが純正パニアケース(製品名:樹脂サイドケースセット)だ。
専用ブラケット(別売)を介して取り付けるのだが、ツアラー感あるスタイリングがビシッと決まる。実際にツーリングでの使い勝手も良いので、ぜひセットで購入してもらいたい逸品だ。どうせなら標準装備にしてもイイんじゃないっすか、スズキさん!

一体感はバッチリ。リヤまわりにボリューム感が出て、これぞ高速ツアラーというフォルムに。

ディテール解説

LEDデイライトの下にセットされたLEDヘッドライトの照射範囲は広く明るい。個性的なフェイスデザインなのでひと目でGSX-S1000GTだと判別できる。
メーターには6.5インチフルカラー TFT液晶マルチインフォメーションディスプレイを採用。専用アプリ(SUZUKI mySPIN)をインストールしたスマートフォンと連携すると、ハンドル左のスイッチ操作で電話の発信や地図の表示、音楽の再生などが可能となる。
高剛性のKYB製インナーチューブ外径43mmの倒立フロントフォークは、伸側/圧側ダンピング、スプリングプリロードの調整が可能なフルアジャスタブルタイプ。
スーパースポーツと同等の性能を持つブレンボ製ラジアルマウントキャリパーを装備。タッチ感やコントロール性は高く、状況にあわせて的確な車速に調整することができる。
GSX-R1000(K5)から受け継がれてきた直列4気筒エンジンをストリート向けにセッティング。アシスト&スリッパークラッチに加え、新たにクルーズコントロールなどの電子制御システムを備えた。
ショートマフラーからは重量車らしい低く太いエキゾーストノートが響く。「直4の排気音がたまらない」というユーザーも多い。
マフラー下の膨張室を避け、アルミ製のスイングアームは大きく湾曲。軽量なアルミホイールのデザインも個性的だ。
トラス形状のシートレールはタンデムや積載を考慮し剛性を高めた専用設計。スイングアームとはリンクを介して接続されるモノショックもフルアジャスタブル仕様。
テールランプやウインカーなど灯火類はすべてLED。純正パニアケース装着時には一体化となるデザインを採用している。
セパレートタイプのシートは座り心地がよく、長時間のライディングでも疲れにくい。タンデムシートもクッション性が高い。
タンデムシート下にETC2.0を標準装備。小物入れとして使えるスペースは残念ながらほぼ無い。
タンデムシート裏側に荷掛けフックになるナイロンベルトが折り込まれている。外に出すと荷物の積載が楽になるお役立ち装備だ。付属のヘルメットワイヤーを使うとヘルメットを掛けておくこともできる。
液晶メーターの操作やドライブモードの変更、クルーズコントロール時の速度調整などは左ハンドルにあるスイッチボックスで操作することができる。
アクセルにはワイヤーを使用しないライドバイワイヤを採用。右のスイッチボックスにはセル/キルスイッチの下にハザード、クルーズコントロールスイッチが配される。ワンプッシュで始動可能なスズキイージースタートシステムを搭載。

SPECIFICATION

車名:GSX-S1000GT
型式:8BL-EK1AA
全長×全幅×全高:2,140mm×825mm ×1,215mm
軸間距離:1,460mm
最低地上高:140mm
シート高:810mm
装備重量:226kg
最小回転半径:3.1m
エンジン型式:水冷・4サイクル・直列4気筒・DOHC・4バルブ
総排気量:998cm3
内径×行程:73.4mm × 59.0mm
圧縮比:12.2
最高出力:110kW〈150PS〉/ 11,000rpm
最大トルク:105N・m〈10.7kgf・m〉/ 9,250rpm
燃料タンク容量:19L
フレーム形式:ダイヤモンド
キャスター/トレール:25°/100mm
ブレーキ形式(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS)
タイヤサイズ(前/後):120/70ZR17M/C(58W)/190/50ZR17M/C(73W)
舵取り角左右:31°
乗車定員2名

著者プロフィール

横田 和彦 近影

横田 和彦

学生時代が80年代のバイクブーム全盛期だったことから16歳で原付免許を取得。そこからバイク人生が始まり…